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退任間近のモサド長官、イラン核施設攻撃におけるイスラエルの関与を示唆

昨年中に、上の写真に写るイランのナタンズ核施設では爆発が2回起きた。(イラン原子力機構 (aeoinews) via AFP)
昨年中に、上の写真に写るイランのナタンズ核施設では爆発が2回起きた。(イラン原子力機構 (aeoinews) via AFP)
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12 Jun 2021 01:06:02 GMT9
12 Jun 2021 01:06:02 GMT9
  • ヨシ・コーヘン長官へのインタビュー番組で、普段は秘密裏に活動する組織のトップが特別に情報を明かす
  • 2020年7月に、原因不明の爆発事故が起きイランのナタンズにある高性能遠心分離機の組み立て工場が壊滅的な被害を受けた。イランは後にイスラエルの仕業だと非難した

ドバイ:退任を控えたイスラエル諜報機関「モサド」の長官が、これまでで最も詳しく情報を明かした。イランの核開発計画や科学者を狙った攻撃を仕掛けたのはイスラエルだった。

イスラエルの民放チャンネル12の調査報道番組「ウブダ」が10日夜に放映した回で、モサドのヨシ・コーヘン長官がインタビューに応じた。ベンジャミン・ネタニヤフ首相の退任が間近に迫るとみられるなか、普段は秘密裏に活動する諜報機関のトップが特別に情報を明かした。

イランの核開発計画に携わる他の科学者たちにも、暗殺の標的となる可能性があると明確に警告を発した。現在ウィーンではイラン外交官が世界の大国と協議し、核合意復帰に向けた協議を進めているにもかかわらずだ。

「科学者たちが核開発計画から手を引き、今後はイスラエルに危害を加えないとの意思表示をすれば、もちろん時には見逃すこともあります」とコーヘン長官は語った。

イランを狙った主な攻撃の中でも、昨年ナタンズの核施設で起きた2回の爆破事件は群を抜いて激しいものだった。ナタンズの核施設では、空爆に耐えられるよう設計された地下施設にて遠心分離機を使ったウラン濃縮作業が行われている。

2020年7月に、原因不明の爆発が起きイランのナタンズにある高性能遠心分離機の組み立て工場が壊滅的な被害を受けた。イランは後にイスラエルの仕業だと非難した。さらに今年の4月には、再び爆発が起き地下ウラン濃縮施設がさらに1カ所破壊された。

話題がナタンズの核施設に及び、インタビュアーがコーヘン長官に、番組としてナタンズに行くことが可能だとしたらどこに行くかと尋ねると「遠心分離機が稼働していた地下室に」と回答した。
「見る影もない状態ですよ」と付け加えた。

コーヘン長官はモサドが攻撃したと断言はしなかったが、踏み込んで具体的な話をしたことから、イスラエルの攻撃に対する関与についてこれまでで最も詳細に情報を明かしたことになる。インタビュアーを務めたジャーナリストのイラン・ダヤン氏も、イスラエルがナタンズの地下施設に爆発物を忍び込ませた方法について、ナレーションの形で詳細を明かしたようだ。

「明らかになったのは、爆破実行の責任者がイラン側に遠心分離機を設置する大理石の床を提供していたことです」とダヤン氏は語った。「イラン側がナタンズの施設内にこの床を設置した際、すでに大量の爆発物が仕掛けられていることなど思いもよりませんでした」

二人はさらに、数十年前にイラン政府の核兵器開発計画を開始したイランの科学者モーセン・ファクリザデ氏が、昨年11月に暗殺されたことについても語った。アメリカの諜報機関と国際原子力機関(IAEA)は、イランが2003年に核兵器開発の国家的な取り組みを放棄したと確信している。イランは長らく、自国の核開発計画は平和利用が目的だと主張している。

番組でコーヘン長官は科学者を暗殺したのがモサドだと断言はしていないが、ダヤン氏は番組内でコーヘン長官が「作戦全体に対し個人的にゴーサインを出した」と解説した。ダヤン氏はさらに、ピックアップトラックに設置された機関銃を遠隔操作してファクリザデ氏を殺害し、後に自爆させた経緯について説明した。

コーヘン長官はイラン人科学者に核開発計画から手を引くよう説得するイスラエル側の工作について説明した。イスラエルから間接的にでも警告を受けると、核開発への関与をやめた科学者が数名いるという。インタビュアーから、手を引かない場合どうなるか科学者たちが理解しているかと聞かれると、コーヘン長官は「仲間の様子を見ていますから」と答えた。

二人はさらに、イランの核兵器開発計画に関する保管文書を入手するイスラエルの作戦について語った。コーヘン長官によると、イスラエル国籍を持たない工作員20人が32カ所の金庫から資料を入手し、文書をスキャンしてデータを送信した後、持ち出しに成功したという。

「世界に知らせることが我々の狙いでしたが、イランの指導者層にもメッセージが届いているはずです。彼らに『親愛なる友よ、1. 君たちは侵入された。2. 君たちは監視を受けている。3. 嘘が通用する時代は終わった』と伝えるわけです」とコーヘン長官は語った。

イスラエルのメディアは、数十年前に規定された指針に従って活動している。ジャーナリストは軍の検閲を受け、安全保障にかかわる情報は報道しないよう義務付けられているのだ。コーヘン長官による今回の発言は明らかに軍の検閲をクリアしたものだ。ウィーンで核を巡る交渉が行われる最中、イスラエルがイランに対し新たに警告する目的があったことがうかがえる。

イランはイスラエルの攻撃に対し非難を繰り返している。イランのカゼム・ガリバディIAEA大使はつい10日まで、事件について「断固として対応するのみならず、これまでの透明性確保と協力的な姿勢を見直さざるを得ない」と警告していた。

イランの国連大使はコーヘン長官の発言に関するコメントを求められたが即答は避けた。コーヘン長官の後任には元諜報員のデイビッド・バルネア氏が内定している。コーヘン長官はインタビューで、いつの日か自身がイスラエル首相を目指す可能性があることを認めた。

AP通信

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