
アラブニュース
ロンドン:米国は、エチオピアがダムへの貯水を開始した翌日の6日、「大エチオピア・ルネサンスダム」に関連する争いのすべての当事者に対し、緊張を高めるような一方的行動を控えるよう求めた。
米国国務省のネッド・プライス報道官は、エチオピアによるダムへの貯水開始の発表は緊張を高める可能性があると指摘した。
「言うまでもなく、米国は当事者3か国すべてにとってのナイル川とその水資源の重要性を理解しており、対話の再開を引き続き奨励していくとともに、その対話が生産的、実質的、建設的なものになるよう期待しています」と報道官は述べ、また米国は長期的な合意への到達を目指した当事国間の協力的かつ建設的な努力への支援を続けていく、と付け加えた。
プライス報道官はまた、米国はアフリカ連合主導によるプロセスも支持していると述べた。同プロセスは、緊張を緩和し、生産的な交渉を促進することにより地域協力を強化することを目的としたものだ。
「私たちはすべての当事国に対し、地域の緊張を高め、またこの問題の平和的で建設的な解決への道のりを遠くしてしまうような一方的行動を取らないよう求めます。また、すべての当事国に受け入れられる解決策を交渉により実現するため、各国が真剣に努力するよう促しています」と報道官は語っている。
一方国連も6日、エチオピア、スーダン、エジプト各国に巨大な水力発電ダムの運用についての協議を再開するよう求め、また一方的な行動を避けるよう呼びかけている。
国連安全保障理事会は、アラブ諸国が15か国で構成する同理事会にこの問題に対処するよう要請したことを受け、今週「大エチオピア・ルネサンスダム」について話し合う予定となっている。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は当事国間の仲介にアフリカ連合が役割を果たすことに賛成している、と事務総長のステファン・ドゥジャリク報道官はニューヨークで記者団に語った。
「もうひとつ大切な点は、解決への道筋を損なうような一方的な行動を取らないということです。ですから、関係する人々が現実のプロセスに誠実に取り組むことを再び約束することが肝要になります」とドゥジャリク報道官は6日に述べている。
エチオピアは、青ナイル川に建設した巨大ダムは国の経済発展と国民への電力供給のために重要なものだとしている。
エジプトは、巨大ダムを同国がほぼ完全に依存しているナイル川からの水供給に対する重大な脅威と見なしている。もうひとつの下流国であるスーダンは、巨大ダムの安全性と自国のダムと給水所への影響について懸念を表明しています。
「この問題に対する解決策は、実例に拠りながら検討されるべきです。同じように水源と川を共有していた他の人々が見出した解決策を先例として、公平で合理的な利用の原則および重大な損害を発生させない義務に基づいて取り組まなければなりません 」とドゥジャリク報道官は述べている。
エジプトの灌漑相は5日、エチオピアから巨大ダム背後の貯水池への貯水を開始したという、2年連続となる公式の通知を受け取ったと明らかにした。エジプト政府は、貯水措置は地域の安定に対する脅威であり受け入れられないとしている。
一方、チュニジアが、エチオピアに貯水池への貯水を中止するよう求める決議案を国連安全保障理事会に提出した、と外交筋が6日に語っている。
エチオピアの巨大ダムは、完成時にはアフリカ最大の水力発電プロジェクトになる見込み。
チュニジアが提出した決議案は、「エジプト、エチオピア、スーダンが、アフリカ連合議長と国連事務総長共同の要請にしたがって交渉を再開し、6か月以内にGERDの貯水と運用に関する拘束力のある合意文書を完成させる」よう求めている。GERDは大エチオピア・ルネサンスダム(the Grand Ethiopian Renaissance Dam)の頭字語である。
決議案には、合意は「下流国の水安全保障に重大な危害を加えることを防ぎながら、エチオピアのGERDから水力エネルギーを生み出す能力を確保する」べきだとする内容も含まれている。
決議案はまた、「3か国が交渉のプロセスを危険にさらす可能性のある発言や行動を控えること、またエチオピアがGERDの貯水池への貯水を一方的に継続しないこと」を求めている。
決議案の採決がいつ行われるかは決まっていないが、外交筋によると、8日の会合で早速採決が実施される可能性は低いとのことだ。
ロイター