ベイルート:国連児童基金(ユニセフ)は、レバノンの弱い立場にある子供たちとその家族に対し、レバノンの銀行での不利な為替レートによる援助額の大幅な減少の問題を解決すべく、米ドルでの現金の配布をスタートさせた。
「ハッディ」(アラビア語で「私のそばに」)と名付けられたこの新しいイニシアチブは、レバノンの深刻な経済危機の中で、児童労働、早婚、または学校教育からの排除されるリスクがある70,000人のレバノン、シリア、パレスチナの子供たちに現金による援助を提供するものだ。
「ユニセフは、米ドルによる支払いへの切り替えに付随するリスクと実現可能性の側面を調査することにしました…(中略)…
切り替えによるメリットは大きいと私たちは判断し、米ドルで支払うことを決定しました」とユニセフは、トムソン・ロイター財団への電子メールの中で述べている。
援助を必要とする人々に十分な援助を提供するため、ユニセフのハッディプログラムは、支払いに際して民間銀行の仲介を省き、代わりに送金サービスを介して米ドルでの援助を被支援者へ届ける新たな現金支払いのメカニズムを採用している。
子供が1人いる家族は一月に40ドル、子供が2人いる家族は月60ドル、3人以上いる家族は月80ドルの支援を受けられる。援助金をどのように使うかは、「現在の状況の中で皆さんが尊厳を保てるように」被支援者の選択に任されている。
英国を拠点とする慈善団体セーブ・ザ・チルドレンは13日、同団体の記録では今年レバノンで児童労働が「劇的に増加」しており、2020年通年の346件と比較してすでにこれまで306件を特定している、と明らかにした。
まだ5歳の子供たちが路上で燃料を売ったり、金属くずやプラスチックを集めたりしており、レバノン人、難民あわせて100万人以上の未成年者が今支援を必要としている、とセーブ・ザ・チルドレンは述べている。
援助に関する話し合いに関わったレバノンの副首相(退任予定)は、連絡がつかず今回の新しいユニセフの戦略についてコメントを得ることはできなかった。財務相および社会問題相の両暫定大臣についても同様である。
ユニセフは現在、LOUISE(ルイーズ)と呼ばれる援助プログラムを事実上放棄している。このプログラムには国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)および世界食糧計画(WFP)も携わっており、リバノ・フランセーズ銀行(Banque Libano-Francaise、BLF)を経由して援助を行うものである。
6月にトムソン・ロイター財団が行った調査で、リバノ・フランセーズ銀行が使用した不利な為替換算レートが、2019年以降プログラムを通じて約2億5000万ドルに及ぶ援助額の損失をもたらしたことが判明した。使用した為替レートについて同銀行はコメントを拒否している。
この為替差損は、2019年後半にレバノン経済が崩壊し始めて以来、物価を高騰させ、多くのレバノン人たちを貧困に追いやってきた、レバノン・ポンドの急落に起因したものだった。
2020年および2021年の最初の4か月の間に、銀行は市場レートよりも平均40%低いレートで国連機関に代わってドルを両替し、それによって被支援者たちに届く金額を減少させてしまった。
それ以来、LOUISEに関係する機関に適用される為替レートは次第に改善してはいるが、それでも市場の平均レートよりも不利なままである。
一方、一部の国連機関、援助国およびレバノン当局者は、レバノンの主要な被援助者である難民にドルを支給することで、難民たちと彼らを受け入れているコミュニティの人々との間に緊張が高まるのではないかという懸念を表明していた。
しかし、レバノン人の子供たちもハッディプログラムの対象とし、独自の送金手段を用いることで、そうしたリスクは軽減できるはずだとユニセフは述べている。
「ATMを介して現金を提供することは、しばしば混雑につながり、コミュニティの緊張を高めてしまいがちです。これを回避するため、ハッディではATMを使用せず、代わりにはるかに大規模な送金窓口の全国的ネットワークを活用しています」とユニセフは説明する。
最初に援助金を受け取った人たちを対象とした小規模な調査では、安全性や為替レートは大きな問題とはされていない、とユニセフは明らかにした。
「これまでの反応にはひとまず安堵しています」とのことである。
ロイター