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シリアへの越境人道援助の再延長は自動的には承認されない ロシア国連特使語る

トルコとの国境を越えてシリアに人道援助物資を輸送する枠組みの延長案が全会一致で採択されたのは、ロシアが米国との妥協案に土壇場で合意したことによるものだった。(AFP)
トルコとの国境を越えてシリアに人道援助物資を輸送する枠組みの延長案が全会一致で採択されたのは、ロシアが米国との妥協案に土壇場で合意したことによるものだった。(AFP)
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30 Jul 2021 09:07:18 GMT9
30 Jul 2021 09:07:18 GMT9
  • 援助活動が再延長されるかどうかは「延長の前提として、安全保障理事会や国際社会が行うべきこと」がどう扱われるかにかかっている
  • 他の国々による支援努力は歓迎されるが、それはあくまで彼らが「シリアの領土保全と主権の尊重を基本としてものごとを進めていく」場合に限られる

ニューヨーク:国連安全保障理事会が今月初めにシリアに対する国境を越えた人道支援の延長に合意した際、決議の文言に曖昧さがあると一部で指摘されており、懸念はすでに生じていた。

国連決議第2585号は、シリア・トルコ国境のバブ・アルハワ検問所の権限が来年1月10日まで6か月間延長されること、および「2022年7月10日までのさらなる6か月間の延長は、事務総長の実際的な報告書が作成されることを条件とする」ことを述べている。

米国のリンダ・トーマス・グリーンフィールド国連大使は、米国による以下のような決議の理解を強調していた。「(事務総長の)報告書作成の後に(現在の人道支援体制は)自動的に更新されます。投票の必要はなく、安全保障理事会は事務総長室と協力して、事務総長の報告書が、すぐにすべての理事会メンバーに確実に受け入れられるものになるよう努力していくことになります。」

しかし、ロシア連邦のドミトリー・ポリアンスキー国連代理大使は、決議採択後初となる報道陣とのやり取りの中で、米国の解釈とそれを採用したメディアの報道内容を即座に否定した。

「そういうことではありません」とポリアンスキー代理大使は言う。「大使がおっしゃったような、現在のやり方がさらに半年延長されるかどうかは事務総長の報告書がどれほど透明性のあるものになるかにかかっている、という解釈は間違っていると思います。決議文には多くの条件が含まれており、次に半年間延長される前提として、安全保障理事会や国際社会が行うべきことが盛り込まれています」

「ですから、このことについて自動的な進行などは存在しないのです。」

トルコとの国境を越えてシリアに人道援助物資を輸送する枠組みの延長案が全会一致で採択されたのは、ロシアが米国との妥協案に土壇場で合意したことによるものだった。

合意以前には、ロシア側は何ヶ月にもわたり強硬姿勢を崩さず、すべての援助はダマスカスのシリア現政権を通じて行われるべきだと主張していた。ロシアはまた、戦争で荒廃したシリアの人道的危機は、アサド政権に課された国際的な制裁によるものだと非難してきた。

ポリアンスキー代理大使はロシアのこの立場を繰り返し、ロシア政府は「“クロスライン”援助物資輸送の劇的な増加と、シリアの再建を支援する努力の大きな拡がり」の実現を望んでいると述べた。

クロスライン援助とは、ダマスカスからシリア内の反政府勢力が支配する地域への援助物資の国内輸送を指し、対してクロスボーダー(越境)援助とは、他の国々によってそれらの地域に直接輸送されるものだ。

「私たちは、クロスボーダー援助の仕組みはすでに過去のものだと思っています」とポリアンスキー代理大使は語っている。「それはシリア政府がまだ国土を十分に支配していない時に採用されたシステムであり、まず受け入れ国の同意を得るという人道支援の原則にも反しています。シリアは最初からクロスボーダー支援を拒否していました」

「私たちの国際的なパートナーである各国は、クロスラインの枠組みでも支援を行うという私たちへの約束が真剣なものだったとこれから証明して見せるべきです。最初の期間、(クロスライン援助が)クロスボーダー援助を補完し、一つのパッケージとして機能することを我々は望んでいます。なぜなら、そこに住む人々を純粋に助けるためであれば、クロスボーダーであれクロスラインであれ、人道的支援をどのように届けるかは問題ではないからです。しかし、もしそこに政治的な理由があるならば、それは非常に重要な問題になってきます。ですから私たちは、シリアに関する私たちの決定は政治的な考え方を(考慮に入れて)すべきではないと考えているのです。」

ポリアンスキー代理大使は、シリアの経済的苦境は西側の一方的な制裁と「強圧的な措置」の結果であるというロシアの主張を繰り返した。

「一方でシリア人への援助を増やし、他方で一方的な制裁と強圧的な措置を続けるのは、非常に偽善的だと思います」と代理大使は述べた。

ロシアは安全保障理事会でアサド政権への擁護を続け、戦争で荒廃したシリアの復興への努力に参加するよう各国に呼びかけた。対して、西側の安全保障理事会メンバーやその他の国々は、決議第2254号で求められている政治改革の達成に向けた進展がない限り、現政権に利益となる復興援助を支持しないことを改めて表明している。

今週モスクワで開催された会合で、ゲイル・ペダーセン国連シリア担当特使は、人道的決議の採択の際に見られた共通の理解が「政治的プロセスにおけるいっそうの一致へと」発展することへの期待を表明した。

そうした一致が実現するためには、「一緒に話し合いのテーブルに着いて、それぞれがどんな貢献ができるかを競技していく必要があります」とペダーセン特使は述べている。

これに対してロシアのポリアンスキー代理大使は、次のように語っている。「ペダーセン特使が関連する懸念に対処するどんな魔法の解決策を持っているのか、また特使がシリア政府を含むすべての当事者をどうやって交渉のテーブルに着かせようというのか、私には分かりません」

「どうなるか見てみましょう。ペダーセン特使は非常に才能があり経験豊富な外交官であり、私たちは彼をとても尊敬しています。しかし、これまでのところ、機能している唯一の枠組みはジュネーブで開催されているシリア憲法委員会であると私たちは考えています。次の会合が開かれることを私たちは望んでおり、シリアの問題解決にできる限りの支援を行い、憲法委員会に遅れをとらないように努めています。」

ポリアンスキー代理大使は他の国々による支援努力を歓迎したが、それはあくまで彼らが「シリアの領土保全と主権の尊重を基本としてものごとを進めていく」場合に限られるという。「しかし、悪魔は細部に潜んでいるものですから、まずどんなものが現れてくるのか見てみたいと思います。」

代理大使はまた、次のように付け加えた。「私たちはシリアにおいて一種の交渉のチャンネルのようなものを独占したいわけではありません。私たちは当初から、解決策を見つけるための対話の重要性を訴えていました。しかし、全世界から正当性を認められているシリアの現政権と、いまだに関わりたくないと考えている一部の国々があるのも事実なのです。」

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