




モスル: ダーイシュ組織がイラク北部のこの街を制圧してから7年を経た今月18日、モスルの教会で鐘の除幕式が行われ、イラクのキリスト教徒たちの歓声が上がった。
数十名の信者たちが見守るなか、シリア系キリスト教のマルトゥマ教会に新たに設置された鐘をピオス・アファス神父が最初に鳴らし、AFP通信の特派員がその様子を伝えた。
鐘が鳴ると、携帯電話で撮影していた信者たちから拍手と歓声が沸き起こり、その後に祈りが捧げられた。
「7年間の沈黙を経た後、モスルの街の右岸にマルトゥマ教会の鐘をついに鳴らすことができました」とアファス神父は信者たちに語った。
ダーイシュは2014年、モスルに侵入してこの街を自らの「首都」であると宣言した。この襲来で、ニネベ州北部の何十万人ものキリスト教徒が避難し、一部はイラク近隣のクルディスタン地域へと逃れた。
イラク軍はその3年後、市街地での数ヵ月にわたる激戦の末、ジハード主義組織のダーイシュを排斥した。
モスルの教会の鐘の復活は、「希望の日々の到来を告げ、神の思し召しとして、キリスト教徒たちが自分たちの街へ帰還する道を開くものです」とアファス神父は語った。
「今日は大いなる喜びの日であり、この喜びは、モスルのすべての教会やモスクのみならず、家々や史跡を含む街全体が再建されたときに、さらに大きなものになるのだと思います」と同神父はAFP通信に語った。
重量285キロ(約630ポンド)のこの鐘は、宗教マイノリティーを支援するフランスの非政府組織「イラク友愛会」の寄付によってレバノンで鋳造され、飛行機とトラックを使ってベイルートからモスルまで運ばれてきた。
19世紀に建てられたこのマルトゥマ教会は、ジハード主義組織ダーイシュにより、刑務所や裁判所として使われた。
現在、修復作業が行われており、大理石の床は取り壊して全面改装される。
除幕式に参列した信者のひとりであるニダア・アブデル・アハドさんは、教会が 「生き返る 」のを目にするために、エルビルから故郷の街に戻ってきたのだという。
「この喜びは言い尽くせません」と40代の教師であるアハドさんは語った。「キリスト教の心臓が再び鼓動し始めたかのような気持ちです」
「イラク友愛会」の創設者兼会長であるファラジ・ベノワ・カムラ氏は、大理石の祭壇も含め、「十字架を始めとするキリスト教を象徴するものはすべて破壊されました」と語った。
「我々は、この鐘がモスルの再生のある種の象徴となることを願っています」とAFP通信の電話取材に答えて同氏は語った。
イラクのキリスト教コミュニティーは、米主導連合軍が侵攻してくる前の2003年には150万人以上であったが、この国を繰り返し襲う暴力からその多くが逃れ、今では約40万人にまで縮小している。
カムラ氏によると、モスルに再定住したキリスト教信者は約50世帯で、その他の人々は、他の場所に居住しながらここへ働きに来ているのだという。
「キリスト教徒たちは、永遠にモスルを捨て去ることもできたでしょうが」、彼らはそうはせずに、この街で頑張って活動しているのだとカムラ氏は語った。
AFP