
ダウド・クティターブ
アマン:パレスチナ人側とエルサレムのアルメニア教会の間で土地を巡る論争が激化し、パレスチナの教会関連問題高等大統領委員会がアルメニア側の宗教・政治指導者たちに平和的解決を訴えるに至った。
アルメニア人側とイスラエルのエルサレム自治体は、エルサレム旧市街の政治情勢的に慎重さを要する土地の一画に駐車場を建設するとの合意に達し、これは本年1月1日に発効した。以後、ユダヤ系住民たちがこの駐車場を独占的に利用していることに、パレスチナ人指導者たちや小規模なアルメニア人コミュニティのメンバーたちが懸念を抱いている。
アルメニア側の管轄区の幹部たちは、イスラエルのエルサレム自治体、そして、ユダヤ系住民を中心とした事業を行っているエルサレム開発局との契約は、土地の売却や賃貸といった要素を含まず、まったくの財務上の業務であると主張している。
パレスチナの教会関連問題高等大統領委員会はアルメニア人コミュニティのヌアハーン・マヌージアン大司教に、書面で、アルメニア人地区は国連安保理決議2334を含む国連決議が適用されるパレスチナ占領地の一部であることの再認識を促した。
また、パレスチナの高官複数も全アルメニア管轄区のカトリコスであるカレキン2世に書面を送り、エルサレム旧市街は国際決議で定められた「パレスチナ占領地の不可欠な一部」であるため、同地のアルメニア人地区の土地の売買は国際法違反に該当すると告げた。
アルメニアの外相による「介入も要請される」と、高等大統領委員会の声明は述べている。
この紛争は、エルサレムのアルメニア管轄区とイスラエル当局と連携して行ったエルサレム旧市街の土地に関連した取引の不透明性に端を発している。
パレスチナの教会関連問題高等大統領委員会議長のラムジー・ホウリー氏は、アラブニュースに、アルメニア側の指導者に書面を送ったことの目的は、エルサレムのアルメニア正教会の透明性の向上を促しパレスチナ側との協調を確立することにあると述べ、「私たちの主たる目標は隠されている事を明らかにすることです」と語った。
書面は2回送られたが、返信は無かった。
空き地に駐車場を建設し10年間イスラエルの自治体にリースする案件にのみホウリー氏の関心は向けられていた。その一方で、アルメニア人とユダヤ人の居住区に挟まれた、この政治情勢的に慎重さを要する土地を、ユダヤ系オーストリア人の投資家に99年間リースし大規模なホテルを建設するという一層深刻な案件への同氏の言及はなかった。
アルメニア管轄区の情報筋によれば、3年以上開催されていないアルメニア聖ジェームス教会会議メンバーの大多数がこのホテル建設計画に反対している。
エルサレムのアルメニア人高位指導者は、駐車場よりもずっと大きな取引があるのではと常に疑念を持っていたと、匿名を条件にアラブニュースに語った。「総主教と不動産部長が動き始めた時から胡散臭い感じがしていました」と、彼は言った。
エルサレムのアルメニア総主教であるセヴァン・ガリビアン大司教と不動産部の責任者バレット・イェレシアン師は、教会会議と占領下のエルサレムに居住する1,000人近くのアルメニア正教徒の意向に反したとして非難を浴びている。
アルメニア総主教教会会議の議長は9月22日付の声明で、アルメニア正教会が駐車場用地に関する契約を批准したことを発表し、また、このリースが「管轄区にとって有用な年間数十万ドルに及ぶ安定した収入」をもたらすと付記した。
サミュエル・アガジアン司祭の署名入りのこの声明は、この土地の完全で独占的な所有権に対して一切のリスク無く、この土地の長期リースが行われ、「豪華なホテル施設」が建設されることを認めた。
アルメニアのウェブサイト「ケガルト」は、エルサレムで進行中のこの件をスキャンダルと看做している。8月31日付の論説で、同サイトは、アルメニア管轄区内のアルメニア人地区や他の「管轄区所有」の不動産は、アルメニア正教会や聖ジェームス協会の所有するものですらないと指摘した。
「こうした不動産はアルメニア国民の所有物である。聖地におけるアルメニアの不動産は、全て、アルメニアの巡礼者や貴人、王、慈善団体が1,000年以上にわたって行ってきた寄付を基に購入されたものである。ここ数世紀の間に2回、エルサレムの管轄区が破産し、その不動産を全て失いかけたことがあった。そうした危機を救ったのは、アルメニア人の商人たちであり、市井のアルメニア人愛国者たちだったのだ」。
ウェブサイト「ケガルト」の論説は、「聖地エルサレムはすべて厳格な現地法と国際法の下にあり、その存在を取引のために異なる部分に分割する権利は誰にも無い」と結論付け、パレスチナの法と国際法を支持している。