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経済危機悪化で衰弱したレバノンがさらなる混乱に突入

極度の貧困と人権に関する国連特別報告者のオリビエ・デ・シュッター氏。木曜日、ベイルートでロイターの取材に応じた。(ロイター)
極度の貧困と人権に関する国連特別報告者のオリビエ・デ・シュッター氏。木曜日、ベイルートでロイターの取材に応じた。(ロイター)
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13 Nov 2021 05:11:38 GMT9
13 Nov 2021 05:11:38 GMT9
  • 「レバノン・ポンドの崩壊で生活は荒廃し、何百万人もの人々が貧困に陥った」と国連の貧困問題報告者は述べた
  • 経済学者たちはアラブニュースに対し、レバノンは、湾岸の政治的混乱と経済的崩壊に同時にさいなまれる中で「窒息」する可能性があると語った

ナジャ・フーサリ

ベイルート:金曜日、レバノンは経済的混乱に急落した。医療・燃料・食糧の危機も悪化している。厳しい状況の克服を目指す政治的イニシアチブは何も進められていない。

レバノン・ポンドの価値は記録的な安値まで下落し、闇市場では1ドル23,000レバノン・ポンドで取引された。

この崩壊の少なくとも一因になったのは木曜日の夜にヒズボラのハッサン・ナスラッラー書記長が行った演説だった。その中で書記長はサウジアラビアに敵対する立場を改めて確認し、レバノン人に「忍耐」を求め、市民の中で増加している問題の解決策を一切提示しなかった。

燃料価格は金曜日に急騰した。20リットルのガソリンキャニスターの価格は310,800から319,600レバノン・ポンドの間で変動し、ディーゼルキャニスターの価格は311,000ポンドに達し、ガスボンベは266,000ポンドで販売された。

現在、燃料の平均価格は最低賃金の半分に相当する額になっている。

ガソリンスタンドの経営者たちは、約50%の「燃料売上の減少」を伝えた。

一方、木曜日にアミン・サラーム経済大臣は、パンに関して過去最高額に達している現在の価格を変えずに重量を減らすことに決めた。

現在、1,050グラムのパン1包が9,500レバノン・ポンドで販売されている。

経済大臣によると、それは「小麦粉、ディーゼル、その他の材料の価格高騰」が原因だという。

極度の貧困と人権に関する国連特別報告者のオリビエ・デ・シュッター氏はレバノンの貧困に関する12日間の調査任務を経て声明を発表した。アラブニュースはベイルートの国連事務所からその報告書を入手した。

彼はその中で「レバノン当局による通貨の破壊、政治的膠着状態、長年にわたる不平等の強化により、レバノンは深刻な貧困に陥っている」と述べている。

そして「レバノンはまだ破綻国家ではないが、政府がその市民を見捨てた破綻しつつある国家だ」と付け加えた。

「レバノン・ポンドの崩壊で生活は荒廃し、何百万人もの人々が貧困に陥った」

デ・シュッター氏は、レバノン国内の危機は「人災」だと述べた。

そして次のように説明した。「国民が日々を生き抜くのに必死になっているとき、政府は説明責任を回避し、難民をスケープゴートにして、快適なオフィスで貴重な時間を何もせずに費やしている」

「この理不尽な不平等が深刻化しているのは、銀行セクターに報い、脱税を促し、少数の人々の手に富を集中させる税制が原因だ。一方で国民は最貧困層を直撃する逆進税にさらされる」

「これは、長い時間をかけてつくり出された人為的災害だ」

デ・シュッター氏は懸念を示した。「政治指導部は税制改革と貧困緩和の関連性を認めようとしない。そして特に危機の際には経済再建に社会的保護システムが有効である点を過小評価している」

「残念ながら、政府から、国際的な援助者や非政府組織に依存しない確実性のある貧困緩和計画は聞かれなかった。国際援助への依存は持続可能ではなく、事実、それは国家機関を弱体化させることになる」

デ・シュッター氏は付け加えた。「問題は、政治家たちが何にリソースを費やしたかということだ」

「何十年もレバノンは、強力な福祉プログラムや公共サービスインフラなどの社会政策のニーズを無視してきた。その代わりに銀行などの非生産的なセクターに力を入れ、公的債務を拡大し続け、それらのリソースを債務返済に充てている」

そして「レバノンはその経済モデルを再考したほうがいい。レント収入依存、不平等、宗派主義に基づいて失敗したモデルにインセンティブを与え続ければ、人々をさらに貧困に陥れるだけだ」と述べた。

また、国際社会はレバノンの改革を「経済を変革し、不平等に対処し、税の正義を確保し、今以上の政治的膠着状態を防ぐ施策について確かな計画が出されるまでは」真に受けないだろうと警告し、援助コミュニティはレバノン政府の姿勢にもう耐えられなくなっていると付け加えた。

「為替レートを恣意的に不利にした詐欺行為で2億4,000万ドルを失った後では、政府が透明性と説明責任に真剣に取り組んでいることを知らせる必要がある。権利に基づくアプローチなら、政府がこのプロセスを進める上で指針になるだろう」

デ・シュッター氏はロイターに語った。「レバノンの高官は幻想の世界に住んでいる。それは国にとって暗い先行きを示す」

9月に組閣されたナジーブ・ミカティ首相の政権は政治紛争が続く中でまだ召集されていない。

他方、中央銀行が準備している現金は、慢性疾患の薬の補助が不可能になるほどに縮小している。この経済的能力の低下は、中央銀行が通常の医薬品の補助を撤廃したことに続いて起きた。

現在、経済危機の影響を受けているのは、重度の慢性疾患に苦しむ患者、とりわけ特効薬を手に入れられないがん患者だ。

経済学者のルイス・ホベイカ博士はアラブニュースに語った。「国の歳入は消滅した。関税ドルが未だに公式の為替レートに従って価格設定されているのは、もはや合理的ではない。中央銀行の公式プラットフォームの為替レートにすぐに引き上げるのではなく、少しずつ引き上げる必要がある」

博士は付け加えた。「政治家は、3年前にそのような危機に瀕していることを知っていたが、何もせず国外から解決策がもたらされるのを待つばかりだった。そのとおりにはならなかった」

また、「中央銀行は、準備金が枯渇して130億ドルしかないと言っているが、それより少ない可能性がある」と言った。

ホベイカ博士は、経済大臣が燃料の価格を発令してからわずか2日後に2,000レバノン・ポンドの増加などの新しい価格を出したことが危機の深刻さを示していると語った。

金曜日、ナビーフ・ビッリー議会議長との会議後、ジョージ・クルダヒ情報大臣は「保証なしに」政府を辞任するつもりはないと繰り返した。その立場は「湾岸との政治危機の後、レバノンの経済危機を悪化させる」とホベイカ博士は考えている

さらに博士は付け加えた。「レバノンの経済ボイコットの結果はまだ出ていない。湾岸で働くレバノン人の命運を我々は危惧している。もし危機が大学や慈善団体、市民社会組織への移行に影響を及ぼしたらどうなるか。ガルフ・エアが飛ばなくなったらどうなるか。レバノンは窒息するのではないか。そうなったら忍耐は何の役にも立たない」

抑圧が強まっているにもかかわらず、レバノン人が新たにデモを行って抗議する可能性は低そうだ。人々が怒りを表そうとしないのは「落胆どころではない、生きがいを失ったからだ」とホベイカ博士は言った。

「国民は地獄のような悪循環にはまり込んでいる」

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