ナジャ・フーサリ
ベイルート:16ヶ月前にベイルートを襲った爆発事件の後、ベイルート港に保管されていた何トンもの小麦、トウモロコシ、大麦は消費に適さないことが判明し、処分されることになった。
気温の変化に伴いカビやゾウムシなどが発生し、保護具なしでは敷地内の貯蔵庫の中身に到達できない状態だという。世界保健機関(WHO)によると、カビは「様々な健康への悪影響を引き起こす可能性があり、急性中毒から免疫不全や癌などの長期的影響に至るまで、人間と家畜の両方に深刻な健康上の脅威をもたらす」物質であるマイコトキシンを発生させる。
爆発前、港の穀物貯蔵庫には約45トンの小麦、大麦、トウモロコシが入っていたが、そのほとんどが爆発で失われた。ナセル・ヤシン環境大臣によると、現場に残っているのは6〜7トンだという。
経済・農業・環境省、ベイルート・アメリカン大学、セント・ジョセフ大学、そして専門家を派遣したフランス大使館の協力を得て小麦のサンプルを検査した結果、同穀物は「人間や動物の利用には適していない」ことが判明した。
爆発事故から1年後の8月には、猛暑による火災のリスクを軽減するため、残った穀物をサイロから取り出して屋外に保管したが、結果的には作物が消費に適さない状態になるのを早めてしまった。
ハッサン・ディアブ元首相の下で結成された委員会も解決策を見つけることができなかった。
ヤシン環境大臣はアラブニュースに「この穀物は発酵させて堆肥にし、農家に無料で配布したり、工業用の薪にしてレバノン軍の高山での暖房用に提供したり、寒冷地に住む貧しい家族に寄付する。堆肥にすることで、重金属の発生が避けれられる。このプロセスは、フランスから爆発により生じた有機的廃棄物を処理するための資金援助を受けて、5月にレバノン政府と契約を交わしたMANグループの協力を得て開始した」と話した。
この穀物は、廃棄物を処理して堆肥や薪に変えられる埋立地のあるザーレ市に移送される予定だ。
ヤシン大臣は「3,000トンの堆肥と3,000トンの産業用薪の生産を目指している。これまでに、有機肥料に使える500トンの堆肥を生産し農家に無料で配布しているほか、特殊なプレス機で1,000トンの工業用の薪を生産した。確かにこのタイプの薪は長くは燃えないが、冬に暖房用のディーゼル燃料を買えない人たちの寒さを和らげ、ディーゼルの代わりに家庭用の薪のために木を伐採する行為が減ることを期待する」と話した。
港の穀物貯蔵庫は、1,750トンの硝酸アンモニウムと押収された爆薬を一緒に保管したために起きた爆風の約20%を受けていた。220人以上の死者と6,500人以上の負傷者が出て、海岸エリアが破壊された。
直後に現場を調査した専門家は、被害の大きかった小麦貯蔵庫が倒壊寸前であったため、解体する必要があると強調した。
ラウル・ネメ元経済大臣は、2020年11月に「政府は公共の安全性を考慮してサイロを取り壊す」と話していた。
しかし、レバノン当局はまだ行動を起こしていない。
同穀物貯蔵庫は1968年から1970年にかけて建設された48メートルの巨大なコンクリート構造物で、10万トン以上という膨大な量を貯蔵可能だ。
かつてはレバノンの食糧安全保障の重要な要素と見られていた穀物貯蔵庫は、今日では大災害の象徴となっている。