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核戦争は真の脅威であるのに、なぜ核不拡散の取り組みは停滞しているのか

専門家は、核戦争のリスクはかつてなく高まっていると考えており、世界の諸都市にキノコ雲が立ち昇る時期を予想する悪名高き終末時計は、午前零時まであと100秒とされている。(AFP)
専門家は、核戦争のリスクはかつてなく高まっていると考えており、世界の諸都市にキノコ雲が立ち昇る時期を予想する悪名高き終末時計は、午前零時まであと100秒とされている。(AFP)
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11 Jan 2022 03:01:36 GMT9
11 Jan 2022 03:01:36 GMT9
  • 核兵器不拡散条約の下で核保有国は核廃絶を目標として、核兵器の削減を約束した。
  • 1月3日、P5諸国は共同声明を発表して、「核戦争に勝者は存在せず、絶対に核戦争を起こしてはならない」ことを確認した。

アラブニュース

ニューヨーク:世界が新型コロナウイルス・パンデミック、気候変動、地域紛争などで頭がいっぱいなのは無理もないが、核戦争の脅威が去ったと考えるのは間違っている。実際には、核による全滅の可能性は今でも危険なほどに高い。

今年初め、パンデミックによってさらなる犠牲者が出た。1月4日から開催予定だった、核兵器不拡散条約の締約国による第10回再検討会議だ。

会議が8月まで延期されたことは、当時ほとんど報じられなかった。ここ数十年の間に、核兵器の脅威は緊急性のある問題であるという認識が失われてしまったためだと思われる。

だが、今回の延期はウクライナを巡る欧米諸国とロシアの間の緊張や、台湾を巡る米中間の緊張が高まるなかでのものだった。

核不拡散体制の基盤である核不拡散条約(NPT)は1968年に調印が始まり、1970年に発効した。191の締約国がさらなる核拡散を防止し、世界を完全な軍縮に導く義務を負う、唯一かつ再重要の証文である。

NPTの基礎になっている取引はきわめて単純だ。核保有国はこの条約に基づいて、核廃絶を究極的な目標として、核兵器の削減を約束し、非核保有国はこの条約が掲げる、核兵器を手に入れないという約束を遵守する。

すべての国がこの原則を遵守しているわけではない。インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮は調印していない。イランはNPT締約国であるにもかかわらず、ウラン濃縮を行っており、核開発問題で欧米諸国とバトルを繰り広げている。

パンデミックのために第10回再検討会議の日程が変更されたのは2度目のことだ。NPT50周年に合わせて開催される予定だった2020年の会議も延期され、核不拡散体制を再び軌道に乗せ、軍備管理と軍縮プロセスに新たな息吹を吹き込もうとする期待は打ち砕かれた。

イランはNPT締約国であるにもかかわらず、ウラン濃縮を行っており、核開発問題で欧米諸国とバトルを繰り広げている。(AFP/資料写真)

NPTの3本の柱である、核不拡散、核軍縮、原子力の平和的利用のそれぞれは、成功を収めた度合いが異なっている。

非核保有国は2、3の例外を除いて、取引の約束を果たし、条約を遵守したが、核保有国はそれほど忠実ではなかった。核保有国は、世界から核兵器をなくすという、NPT第6条に定める義務を遵守していない。これが緊張を招き、核不拡散体制全体に重荷を負わせている。

非核保有国は代替案を求めて、国連総会での手続きを推し進めて、2017年7月7日に核兵器禁止条約を採択した。同条約は2021年1月22日に発効している。

だが、軍備管理体制のほころびに対する懸念が高まるなか、今回の会議の延期は最悪のタイミングで起こったといえる。

専門家は、核戦争のリスクはかつてなく高まっていると考えている。原子力科学者会報は終末時計を午前零時まであと100秒に設定した。70年以上の終末時計の歴史において、破滅の象徴まで最も近づいている。

核兵器の権威であるサム・ナン元米国上院議員は、2020年のNPT50周年に際して演説を行い、その危険性について赤裸々に語っている。

「北朝鮮問題の進展の停滞、イラン核合意やイランの核開発計画の不透明な未来、包括的核実験禁止条約の発効のたび重なる失敗、核軍縮ペースの遅さに対する非核保有国の了解可能な欲求不満」のために、「人類は核の高リスクの時代へと移行しつつある」

今日、パンデミックが猛威を振るうなかでも、核保有国は核戦力の近代化や高性能化を続けている。核兵器廃絶国際キャンペーンによると、核保有9カ国は、2020年に核戦力の近代化に726億ドルを投じており、2019年比で14億ドル増加している。このために、それらの国の多くがNPTに違反している。

ストックホルム国際平和研究所の推定では、2021年1月現在、核保有国全体で約13,080発の核兵器を保有している。2020年の推定値である13,400発よりはわずかに減少している。

だが、作戦部隊に配備されている核兵器数が2020年の3,720発から2021年に3,825発に増えたことで、この減少は相殺されている。同研究所の2021年の報告書によると、うち約2,000発は「高度警戒態勢に置かれ」ている。

これらすべてが、ウクライナを巡る米ロ間の緊張と、台湾・香港・インド太平洋を巡る米中間の緊張が高まりつつあるために、信頼度の高い軍備管理プロセスが存在しない状況で起こっている。

会議の延期に失望を感じた非核保有国だが、1月3日にP5と呼ばれる米国、ロシア、中国、フランス、英国の大国クラブが、「核保有国間の戦争の回避と、戦略的リスクの低減が我々の最重要の責務であると考える」という共同声明を出したことには勇気づけられた。

「核戦争に勝者は存在せず、絶対に核戦争を起こしてはならないことを確認する。核兵器の使用は広範囲に影響を及ぼすため、核兵器が存在し続けるかぎり、核兵器は防衛目的、攻撃抑止、戦争防止にのみ使用されるべきであることも確認する。このような兵器のさらなる拡散を防がなければならないと固く信じている」

2003年1月11日、100万人を超える人々が平壌の金日成広場に集まって、核不拡散条約(NPT)からの脱退という北朝鮮の劇的な決定を政治指導者が称賛する様子に耳を傾けた。(AFP/資料写真)

P5は、「核兵器の未承認の使用や意図しない使用を防止する国内措置を維持し、さらに強化する」ことも約束した。

おそらくもっとも重要なのは、「核軍備競争の早期の停止と核軍縮に関する効果的な措置と、厳重かつ効果的な国際管理の下での包括的かつ完全な軍縮条約について、誠実に交渉するという第6条の義務を含む、核不拡散条約上の義務」へのコミットを再確認したことだろう。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、核保有国が「核戦争を防止する措置を追求する」と約束したことに「勇気づけられた」と述べた上で、「核のリスクを完全になくす唯一の方法は、核兵器の全廃だ」と注意を促した。

核不拡散団体や専門家も今回の共同声明を称賛してはいるものの、核保有国には具体的な、本当の意味での行動をとってほしいと願っている。

2010年にニューヨークの国連本部で開催された、核兵器不拡散条約の締約国による国連2010ハイレベル再検討会議で演説するヒラリー・クリントン米国務長官。(AFP/資料写真)

アラブ諸国の立場からは、共同声明には重要な要素が欠けていた。米国、英国、ロシアが提出し、中東地域における大量破壊兵器がいっさいない地帯の原則への支持が合意された、1995年NPT決議への言及がなかった。

第10回再検討会議は、この問題の進展を確認する機会になると期待されていた。2019年にニューヨークの国連本部で、ヨルダンが議長国を務めて、中東地域における核兵器などの大量破壊兵器のない地帯の創設を目指す第1回会議が開催され、2021年にはクウェートが議長を務めた。

中東で核兵器を保有していると考えられている唯一の国であるイスラエルも、1995年決議の後ろ盾として中核的な役割を果たした米国も、どの会議にも出席しなかった。

したがって、軍備管理を支持する人たちには選択の余地はほとんどなく、8月まで待って、P5が言葉を行動で裏付けて、NPTの完全性を維持する「有意義な成果」を実現させるかどうかを確認するしかない。

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