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米国の方針転換がエルサレムに及ぼす影響

エルサレムにある米国大使館で、駐イスラエル米大使が、エルサレムで生まれた米国市民Menachem Zivotofskyさんに、イスラエルが出生地として記載されているパスポートを贈呈する。(資料写真/ロイター)
エルサレムにある米国大使館で、駐イスラエル米大使が、エルサレムで生まれた米国市民Menachem Zivotofskyさんに、イスラエルが出生地として記載されているパスポートを贈呈する。(資料写真/ロイター)
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02 Nov 2020 08:11:57 GMT9
02 Nov 2020 08:11:57 GMT9

私が1955年に生まれたとき、東エルサレムはヨルダン・ハシミテ王国の一部だった。1967年6月、イスラエル軍は私たちの街になだれ込み、占領した。同月、イスラエルは、占領地を含むエルサレム全域に対する主権を宣言する法律を一方的に通過させたが、米国を含め、世界にはこの一方的な行為を認めている国はない。

米国務省は、単にエルサレム出身者の出生地をエルサレムと記載することで、彼らの出生地をめぐる論争を避けてきたが、米国のマイク・ポンペオ国務長官は、その国務省の長年の方針を変更すると発表した。エルサレムで生まれた米国人は、自分の出生地を「イスラエル」か「エルサレム」のいずれかにすることができる。数少ない親イスラエルの米国人の票を獲得しようと、米政府は米国の党派を超えた方針を捨て、その過程で、私のようなエルサレムで生まれた、ユダヤ人ではない人間を犠牲にしている。この思慮に欠けた新しい方針によって、国、特にイスラエルは、ユダヤ系アメリカ人とアラブ系アメリカ人を、生まれた場所だけで差別するようになるだろう。

パスポートの出生地の欄に記載する事項を複数設けるというアイデアは、誰がユダヤ人で誰がアラブ系のエルサレム出身者なのかを容易に知らせることになり、特にイスラエルで入国審査を受ける米国人が差別されるだろう。これは、米国憲法によってそのような行為から守られている善良な米国市民に対する差別を増加させるだろう。米国市民に対する差別に関して言えば、国務省は激しく闘わず、差別を実際にできるようにしている。

この問題は私にとって個人的なものだ。1969年、私と私の兄弟が大学で良い教育を受けられる見込みがあまりなかったため、両親は米国に移住することを決めた。私が帰化できる年齢になり、帰化した後、米国のパスポートを使って旅行することができた。新たに手に入れた米国の旅行用書類の出生地の欄にはエルサレムと記載されていた。

ヨルダンやイスラエル、パレスチナではなく、エルサレムを出生地として記載するというアイデアは、難しい政治判断を避けるための賢明な外交的手段だった。19世紀以来、世界中の国々がエルサレムを独特な都市として扱ってきた。法的には「corpus separatum」(分離体に相当するラテン語) とされている。それ以来、米国、英国、フランス、スペイン、イタリア、トルコ、ベルギー、ノルウェー、スウェーデンの在外公館がエルサレムに作られた。彼らは、テルアビブやアンマン、さらにはラマラにある在外公館を通さず、自国の首都に直接報告する。

米国は、イスラエル人とパレスチナ人が激しく論争している、エルサレムの未来像を速断する意図はないと宣言しながらも、西エルサレム(米国大使館の大部分はまだテルアビブにある)に大使館を移転するという象徴的な措置を講じることで、この取り扱いの難しい都市に干渉してきた。

そのような措置を講じる前に、党派を超えた支援、国際協力、そして対立する当事者の同意が必要だ。

ダウド・クータブ

エルサレムで生まれたユダヤ系アメリカ人の中には、出生地をイスラエルにしたいと思っている人もいる。しかし、米連邦最高裁判所は2015年、大統領には外国を承認する(もしくはしない)独自の権限があるとする判決を下した。しかし、今、この問題に手を加えるという考えが再び出てきた。イスラエルがエルサレムに来る前に生まれた、私のような人々を含め、エルサレムで生まれた全ての人々は、イスラエルで生まれたと宣言したいと思っている、と高官らは宣言した。

エルサレムは3つの一神教の発祥地だ。その系統をアブラハムへと遡るユダヤ人は、エルサレムは、アブラハムが山上で息子イサクをもう少しでいけにえにするところだった場所だと言っており、そこは第一神殿と第二神殿があったと彼らが信じている場所だ。キリスト教徒は、イエス・キリストは十字架に張り付けにされ、エルサレムから天に昇ったと信じており、アル・ハラム・アル・シャリフのアル・アクサはイスラム教で3番目に神聖なモスクだと考えている。ユネスコは、エルサレム旧市街全体が世界遺産であり、修正・変更しないと宣言している。

米国の法律と連邦最高裁判所は、行政機関に国家を承認する権限を与えているため、エルサレムかイスラエルのいずれかを記載することを法的に認めているのかもしれない。しかし、そのような変化は、世界で最も複雑な紛争において、決して賢明ではなく、平和と安寧につながるものでもない。そのような措置を講じる前に、党派を超えた支援、国際協力、そして対立する当事者の同意が必要だ。

世界中の人々に影響を与える決定を、選挙運動の道具にしてはならない。ワシントンで起きた、エルサレムに関連する動きは、どんなものでも中東に直接影響を与える可能性があり、容易に各国が、成熟した米国市民を差別できるようにする可能性がある。

現政権は4年間イスラエル寄りの行動を繰り返してきたが、その一方で、これらの動きは、最終的にイスラエル人とパレスチナ人の間に平和をもたらすことを目的としていると主張している。

しかし、これらの行動は、平和のために必要な基本方針を変えるために、ほとんど何もしていない。

パレスチナ人は平和を望んでおり、彼らは、この目標を達成する最善の方法は、東エルサレムを含む、イスラエルが1967年に占領した地域でパレスチナ国家が樹立されることだと理解している。

これが実現すれば、イスラエルは国民が望む安全と治安を手にし、数十年にわたって占領され、植民地支配の下で暮らしてきたパレスチナ人は、独立した民主的な国家で自由を手にすることを保証されるだろう。

これら平和のための条件を米国が達成できないのであれば、少なくとも米国市民に対する差別を可能にすることは避けるべきだ。

  • ダウド・クータブは、受賞歴のあるパレスチナ人ジャーナリストで、プリンストン大学のフェリス・セミナーでジャーナリズムを教えていた元教授。Twitter: @daoudkuttab
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