
テルアビブ:アビラン・ヤエルさんは、テルアビブの繁華街にある薬局で抗原検査キットを受け取ると、バイクの後ろに括りつけた水色のバッグに入れ、配達へと向かった。
ヤエルさんは10日月曜日から、Wolt(ウォルト)の宅配配達員の仕事を始めた。フィンランドを本拠とするWoltがイスラエルで事業を開始してから3年、配達員の数も増加し、その姿は国内のいたるところで見られるようになっている。
先週、イスラエル政府が検査センターの負担を軽減するため自宅での検査を許可したことで、Woltの水色の宅配ボックスの中身に変化が起きている。
新型コロナの変異株、オミクロン株が感染者数の記録を更新するや否や、抗原検査キットはWoltにとって最も需要の高い商品となった ― 関係者によると、同社の中心事業である食品の宅配をも上回る勢いだという。
Woltは10日、テルアビブのやはり青色のビル内に近代的なオフィスを開設した。一方、同じ10日には3秒に1件の割合で抗原検査キットが注文されていた。この需要の高さは、政府の絶えず変化する新型コロナ政策に対する国民の不安と混乱の広がりを反映している。
「検査キットの注文への対応で、本当にパニック状態になっています」とヤエルさんは言う。
イスラエルは比較的豊かで、また国の規模も小さい部類に属するが、それでも政府と国民は、全世界を脅かしているオミクロン株の急速な広がりへの対処に悩まされており、すでに緊張を抱えているこの地に暮らす人々の不安を一層高めることとなっている。11月に南アフリカでオミクロン株が特定されて以来、イスラエル政府は空港を閉鎖しやがて再開し、検査方針を変更し、検疫の条件を厳しくしたり緩めたりと対策に一貫性を欠き、子供たちの学校への登校を認めるか、また認めるとしたらどのように登校させるかについても国民を混乱させてきた。
最新の動きとしては、ヤイール・ラピード外相が10日遅くにコロナウイルスの陽性反応を示したと発表され、新型コロナに感染したイスラエルの要人の中でも最も地位の高い例となった。
「私は新型コロナに感染していると確定しました」とラピード外相はツイッターで明らかにした。外相は「気分は大変に良いです。予防接種を受けていますから。皆さん、予防接種を受け、マスクを着用し、一緒にこの試練を乗り切りましょう」と訴えている。
内閣への支持率が低迷する中、ナフタリ・ベネット首相は今週、イスラエルの人口940万人のうち200万人から400万人がオミクロン株に感染するものと予想される、と警告した。
イスラエルにおける新型コロナの新規感染者数は10日には21,514人を記録し、再び過去最高を更新した。重症例は222件で、過去の新型コロナ流行時の最高値を大きく下回っている。ベネット首相は、重症化と入院を防ぐことが最大の関心事であると述べている。
検査件数は全国的に急増しており、これもオミクロン株への感染拡大に対する懸念の表れと見られている。
新型コロナウイルスの検査件数は、9日日曜日には342,141件超のPCRと抗原検査が実施され、現在の感染の波における最多を記録した。
この数字は、イスラエルがブースター(追加)接種を実施していた昨年8月下旬に急増して414,000件を超えた時に次いで、1日の検査件数で2番目に多いものだ。
「これまでのコロナウイルスの4倍の速さで広がる変異株を抑え込むのは至難の業です」と、保健省高官のシャロン・アルロイ・プレイス氏はチャンネル13 の番組に出演した際、対策の困難さを認めている。
AP