
カリーン・マレック
UAEで開催された今年のアブダビ・サステナビリティ週間では、世界のエネルギー転換が主なテーマであったため、中東と世界全体の両方のエネルギー安全保障に関する懸念が議題の中心になった。
それをふまえて、サウジアラビアとUAEの両国が先進的なグリーン・イニシアチブを主導し、経済的損害を引き起こさずに今よりも持続可能なエネルギー源を採用しようとしている他の諸国に指針を示した。
「エネルギー安全保障は気になるテーマです」。サウジアラビアのエネルギー大臣でOPECプラスの議長であるアブドルアジーズ・ビン・サルマン王子は、「GCCにおけるエネルギー転換—ネット・ゼロは近く実現する?」と題したサミットディスカッションで述べた。
「OPECプラスとして、私たちは安定をもたらすために多くのことを行ってきました。エネルギー安全保障において、安定した市場を備えることほど高度で重要なことはありません。OPECプラス諸国を模範にしようとしない国は、私たちの真似をする必要があります」
エネルギー安全保障の鍵はさまざまなエネルギー源を取り入れることだと王子は述べ、特定のエネルギー源を「タブー視」したり、精選しようとしたりすると、国家経済に損害が及ぶだろう、と指摘した。
近年、サウジアラビアとUAEは、より持続可能なエネルギーモデルの構築に力を入れる一方、今後も世界にとって頼れる石油・ガス供給国であり続けようと努めている。
エネルギー・インフラ大臣のスハイル・ムハンマド・アル・マズルーイ氏はサミットの参加者に向けて「2017年に私たちは、2050年までに50%グリーン化し、排出量の70%を削減するための戦略を打ち出しました」と語った。
「しかし、同じく重要なのは、(50%グリーン化することで)3,530億ドルの予算のうち約1,910億ドルを節約できることです。多くの国はその事実に衝撃を受けました」
アル・マズルーイ氏は、サウジアラビアとUAEのエネルギー当局が先進諸国と協力してエネルギーミックスの多様化に取り組む一方で、他の国々に再生可能エネルギーの採用を奨励していると言い、「世界は、従来から確立しているエネルギー生産者である私たちの国々がこのようなことを進めるとは予期していませんでした」と付け加えた。
アブダビ・サステナビリティ週間サミットは1月15日から19日まで行われる。サステナビリティの問題を探求し、協力、情報交換、投資、イノベーションのためのグローバルなプラットフォームを提供する大規模なイベントだ。
再生可能エネルギーのイニシアチブを開始し、グリーン燃料を採用することに加え、サウジアラビアとUAEは、11月にグラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動会議)にも精力的に参加した。そこでは各国が排出量の削減を約束した。
その前月、サウジアラビアは「サウジ・グリーン」と「中東グリーン」のイニシアチブを立ち上げ、2060年までに温室効果ガスの排出量をネット・ゼロにし、今後数十年間で100億本の木を植え、800万ヘクタールの劣化した土地を修復し、新しい保護地域を設立することを約束した。
アブドルアジーズ王子はパネルセッションの中で「これらのイニシアチブは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子自身がまとめたアイデアです」と説明し、このイニシアチブは純粋な取り組みであって批判で指摘されているような単なる「グリーンウォッシュ」ではないと付け加えた。
「サウジアラビアを美化に誘導しようとしているわけではありません。むしろ、どの国にも確かな経済的根拠があるのですから、今述べてきたことをすべて実行しなければならないと確信しているのです」
また、サウジアラビア北西部の海岸線で建設が進む2つの巨大プロジェクトにも言及した。「紅海プロジェクトやNEOMのような場所をつくるにあたっては、環境への影響をどれだけ配慮しても足りないでしょう」
さらにアブドルアジーズ王子は言った。「私たちはずっと循環型炭素経済を提唱しており、(それを)実証することになります。循環型炭素経済とは、従来なら廃棄されていた資源の再利用を促すように設計された閉じられたループシステムです」
温室効果ガスを効率的に費用対効果の高い方法で削減しようとするこの地域の計画では、二酸化炭素の回収・利用・貯留手段を含め、テクノロジーが中核的な役割を担うことが期待されている。これらのテクノロジーを拡張していけば、多くのビジネスチャンスが生まれる。
「収益も生まれます。再利用とリサイクルの概念から言えば、炭素とガスは現金化できる材料になるからです」とアブドルアジーズ王子は言った。
アブドルアジーズ王子は、循環型経済で民間企業の設立とインセンティブ付与が可能になり、雇用が生まれる可能性に着目した。
「他国もそれを見て真似をし、追いついてきていて、良いムーブメントになっています」と王子は言った。「中東の2大経済大国である私たちがこうしたことを進めているのを見るたびに、他国も適応し、学びます。私たちもできる限り学んだことを広めています」
サウジアラビアは、さまざまな新産業で雇用創出を目指す多様化計画「ビジョン2030」のもと、経済・産業の抜本的な変革に取り組んでいる最中だ。同時に、急速に発展するエネルギー分野のキャリアを目指す若者が増えるように支援している。
「この中には、非常に困難で、今後も課題が続くと思われるテクノロジーもあります」とアブドルアジーズ王子は言った。「しかし、チャレンジ精神と創造性があれば、この産業にワクワクしながら入ってくる真剣な男女は増えるでしょう。経済的繁栄を手に入れ、風や太陽などの天然資源を収益化し、経済の多様性を推進したいという熱意を持つ人がその業界に入れば、自分たちが規範となるモデルのようになれるからです」
アブドルアジーズ王子は、サウジアラビアは、クウェート、バーレーン、カタール、オマーンを合わせた排出量にほぼ匹敵する2億7,800万トンの削減目標を必ず達成するだろうと述べた。
「私たちが誇りと意志を持ってそれを実現しなければ、どう示しがつくというのでしょうか」と王子は言う。
水素は、再生可能エネルギーの中でも画期的なエネルギー源として注目されている。UAEでは、市場シェア25%の獲得を目指して7つの水素プロジェクトを進めている。
「私たちは提携先に水素を輸出できると考えています。今日、炭化水素を供給している多くの国々とすでに議論を始めています」とアブドルアジーズ王子は言った。「ブルー水素とグリーン水素の両方に力を入れています。中東初のグリーン水素プラントを建設し、その活用について検証しているところです」
グリーン水素は太陽エネルギーを利用して製造するもので、サウジアラビアの巨大都市NEOMのエネルギー方程式の大きな特徴になっている。水素にもいくつもの課題があるが、研究開発はエネルギー転換の上で重要な一歩になるだろう。
「私たちは水素を一般に通用する手段にするために全力を注ぎます。両国は炭化水素大国なので、水素と水素の輸出でも大国になれると考えています」とアブドルアジーズ王子は述べた。
締めくくりの挨拶の中で、アブドルアジーズ王子は、すべての国が地球規模の温室効果ガス排出削減に寄与する必要性を強く訴えた。
「私たちはサウジアラビアに、私はUAEの友人たちに礼を言わなければなりません。排出量削減に向けた努力を見れば、私たちは分担以上のことをしているからです」
ツイッター:@CalineMalek