
ジャーナリストのアメール・マタル氏にとって、10年にわたる弟の捜索は彼を定義し、人生の軌道を変えることになった。現在彼は、シリアのダーイシュによる犯罪を調査・記録することに専念している。
弟のモハメド・ヌール・マタル氏は2013年、シリア北部の都市ラッカで消息を絶った。反政府武装集団の本部を襲った爆発事件を取材中であった。彼の焼けただれたカメラは爆発現場で発見され、家族はその後すぐに彼がダーイシュの刑務所にいるという知らせを受けた。しかし、それ以来、彼の痕跡は得られていない。
モハメド・ヌール氏は、2014年にシリアとイラクの大部分を制圧し、いわゆるカリフ制国家を確立し、何年にもわたって住民を残虐に扱った過激派組織、ダーイシュに拘束されたとされる数千人のうちの1人である。
ダーイシュがその領土を奪われてから3年が経過した今も、数千人が行方不明で、捕虜に関する説明責任も果たされていない。行方不明者の家族の多くは、前進した世界から見捨てられたと感じ、愛する者の運命を明らかにするために孤軍奮闘している。
ワシントンに本拠を置く「シリア正義と説明責任センター(SJAC)」は、木曜日に発表した報告書の中で、「これらの侵害は、人道に対する罪、戦争犯罪、場合によっては大量虐殺にさえなりかねない」と述べている。
「家族たちは、愛する人の運命について真実を知る権利がある」
同人権団体によると、ダーイシュがシリア北部と東部の大部分を支配していた2013年から2017年にかけて、このテロリスト集団は、今も行方不明のままの数千人を拘束した。その家族は、悲しみと不安の中で生き続けているという。
SJACは、『希望を掘り起こす:ダーイシュによる行方不明者の捜索』と題した報告書の中で次のように述べている。シリア北東部でダーイシュが掘った数十の集団墓地から約6000体の遺体が掘り起こされ、最終的にダーイシュを崩壊させた軍事作戦中に米主導連合の空爆で破壊した建物からも遺体は回収されたと述べている。
同団体によると、行方不明者数の推定はさまざまだが、これは北東部の行方不明者総数の約半分に相当する可能性があるという。
モハメド・ヌール・マタル氏は、シリアの内戦中に市民ジャーナリストとなり、しばしばカメラを持って紛争の様子を記録していた。
彼は2013年8月13日、ダーイシュの敵対勢力であるいくつかの反政府勢力の1つ、アフファド・アル・ラズール派の事務所の外で起きた爆発を取材中に行方不明になった。
当時21歳だった彼は、ラッカとその住民によるダーイシュへの反発を描いたドキュメンタリーを制作中だった。その4カ月後、ラッカはシリアで初めてダーイシュの完全支配下に置かれた州都となった。
2014年6月に同過激派がいわゆるカリフ制国家を宣言すると、この都市は彼らの事実上の首都となった。
ダーイシュはマタル氏の故郷であるラッカを恐怖で支配し、市内のさまざまな場所に多数の収容所を設置した。そして反対派を残虐に扱い、斬首刑に処した犠牲者の首を市内のナイム広場(アラビア語で「楽園」の意味)に置くことさえ行った。
この報告書の中で、SJACはダーイシュの失踪の中心的存在である収容所に関する広大なネットワークを初めて記録した。ダーイシュの治安組織のさまざまな部門が、誘拐した民間人や敵対する武装グループのメンバーを拘束するために、152の警察署、訓練所、秘密保安刑務所から構成される同ネットワークを組織的に利用した。拘束者は場合により死刑判決を受け、または即刻処刑された。
ラッカ市だけでも33の拘禁施設がリストアップされている。
SJACは、遺体の身元確認に必要な証拠を持っているかもしれない、加害者とされる人々が、米国が支援するクルド人主導のシリア民主軍の刑務所に「公正な司法手続きが見えないまま」滞留していると述べている。
他の元ダーイシュメンバーたちは、組織の敗北後に帰国した母国で暮らしているという。
「ダーイシュの永久的な敗北は、行方不明のままの人々を含む、同組織による犯罪の犠牲者のための正義なしには確保されない」と、同団体は述べている。
現在、両親や兄弟とベルリンに住むアメール・マタル氏は、モハメド・ヌール氏が市内の刑務所に収容されていると聞かされた時期があったと語った。そこで彼を見た元囚人からは、家族だけが知っている個人的な情報が提供された。
しかし、2014年の時点で、家族はモハメド・ヌール氏生存の確証は得られていない。
アメール・マタル氏は過去数年間、弟に関する情報を得ようと何度もシリアに足を運び、遺体が運び出される集団墓地にも訪れた。
国際行方不明者委員会は、行方不明者の家族からDNAサンプルの収集を開始した。しかしその動きは遅く、マタル氏の家族もまだサンプルを提供していないという。
ジャーナリストでもあるマタル氏は、数年前からダーイシュの文書や同組織の収容所の3D写真などを数千枚集め始めた。彼は現在、シリア、イラク、ドイツ、フランス、日本、米国の活動家と協力して、この過激派に関する仮想資料館を立ち上げている。
その目的について彼は次のように語る。「行方不明者の家族が愛する人についての情報を見つけることができるプラットフォームを持つことだ。そこでは刑務所の中をバーチャルに歩きまわり、拘束者の名前を見、文書を読み、シリアでもイラクでも、集団墓地の場所やそこに埋葬された人についての情報を確認できる」
家族に希望はあるかと聞かれたマタル氏はこう答えた。「最も難しい問題は、希望だ。時に希望を見失うこともある。論理的に考えると、もう希望はないからだ」
調査の中でモハメド・ヌール氏に関する証拠を見つけたかと聞かれたマタル氏は、「母も毎月か数週間おきにその質問をする。残念なことに、私の答えはいつも『何も見つからなかった』だ」
AP