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レバノン議会選挙の候補者ら、現金贈賄で「権力への道を購入」

レバノン首都北部のズーク・モスベー地区を通る高速道路の両側には議会選挙のキャンペーン看板が並ぶ。(AFP)
レバノン首都北部のズーク・モスベー地区を通る高速道路の両側には議会選挙のキャンペーン看板が並ぶ。(AFP)
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12 May 2022 10:05:18 GMT9
12 May 2022 10:05:18 GMT9
  • ベイルート第2選挙区のシーア派有権者のひとりはアラブニュースに対して「とある実業家への自分と家族の投票の見返りとして300ドルの提供を打診された」と語った

ナジャ・フーサリ

ベイルート:レバノンの将来を左右するとされる今週日曜日の議会選挙は接戦が予想されているが、そのさなか候補者や政党支持者の一部がまだ誰に投票するか決めていない有権者に対して現金の贈賄を行なっているとの疑惑が持ち上がっている。

ベイルート第2選挙区のシーア派有権者のひとりはアラブニュースに対して「とある実業家への自分と家族の投票の見返りとして300ドルの提供を打診された」と語った。

ムハンマドという呼び名のみしか明かさないことを求めるこの男性はこう述べた。「彼らの政党の選挙活動に参加する支持者たちが毎日電話をかけてきて、誰に投票するかを尋ねてくる。彼らが私の電話番号をどのようにして手に入れたのかは全くわからない。彼らに投票するか、もしくは投票のボイコットや白票を投じる見返りとして配給カードの提供を打診してくる人もいれば、現金の提供を打診する人もいる」

アマル運動やヒズボラとは全く関わり合いがないムハンマド氏は、おそらく投票はしないだろう、と語った。「権力を保持してきた全ての政党はこれまでその公約を履行する機会があったにもかかわらず、悲惨な状況に陥ったままの国民を放っておいた。それらの政党に再選はさせない」のだという。

選挙における賄賂はレバノンで長年問題となってきた。そうした行為を禁ずる法律はあるが、自国通貨の崩壊や生活水準の低下で問題はさらに深刻化し、そして表面化している。

闇の両替市場に流れる噂を信じるのであれば、これから多くの政党が米国通貨を用いて得票を購入するため、投票前に為替レートは下がることだろう。

名前を明かすことを拒んだ両替商のひとりは「政党らが直接的な賄賂によってより多くの得票の購入を試みるため、向こう数日間選挙支出が増えるとみられている」とアラブニュースに対して語った。

両替商たちは通りがかりの人にドルの交換を持ちかけている、というベイルートの人々の声が聞かれる。

現時点で投票する候補者が未定の人々、もしくはお金が本当に必要で最も高額をくれる政党に投票するであろう人々が選挙結果を握っている、と考える人は多い。

レバノンの選挙法は「選挙活動中にはサービスの提供もしくは候補者の債務および費用を含む全ての資金の提供を禁ずる」と定めている。

レバノン選挙管理委員長のナディム・アブデルマラク氏は最近「選挙関連の賄賂に関する訴えを選挙管理委員会は受けていない」と語った。

ところがレバノン民主的選挙協会(Lebanese Association for Democratic Elections、LADE)によると、特に同国の経済危機によって総人口の8割が貧困に直面するなか生活水準が急速に悪化していることを受けて、賄賂の横行がより顕著になっているという。

自国通貨の記録的暴落を受けて失業率も40%近くまで上がっており、また預金引き出しの凍結や預金者資金の差し止めなどによって家計も逼迫されている。

タクシー運転手でベイルート第二選挙区の有権者であるイハブ氏は「候補者リストに載る誰からでも援助を受け入れる」と語った。

候補者の多くはガソリン引換券や食料引換券を提供している。「発電料金の支払いについてですら打診があり、今ではドルの提供と引き換えに有権者を投票所へ運ぶために私の車を借りるという打診もあるが、私は誰にも投票しない」とイハブ氏は述べた。

LADEによると、レバノン北部において候補者が粉ミルクの配布をし、通りを照らすための太陽光パネルを寄付したものもいる、という証拠を掴んでいるという。

ザーレ地区の有権者サメール氏は「この地域における選挙戦が過熱するにつれて賄賂も倍増しており、これは投票日に大きな影響となって現れるだろう。午前中に投票する人々は午後に投票する人と比べるとそれほど贈賄を受けないだろう」と語った。

ベイルート第一・第二各選挙区やザーレ・ケセルワン・ジュベイル・バトルーン・クーラ・ブシャリ・ズガルタ・チューフ=アレイといった白熱している選挙区ほど賄賂がより公然とみられるように見受けられる。

一方でヒズボラならびにアマル運動が支配する地域において選挙戦はそれほど過熱していないようだ。

バールベック=ヘルメル地区から来たメイッサ氏は「ヒズボラの団体がベイルート近郊南部にある私たちの家を訪れ、一家にいる有権者数を尋ねた。ベイルートから選挙区までの移動手段は保証すると語った。それ以外に何も打診は受けなかった」と語った。

燃料価格が壊滅的に高騰しているなか、ほとんどの政党は辺境地域の有権者に対して投票所までの運賃をカバーする燃料引換券を提供すると呼びかけている。

車1台を満タンに給油するためのコストは50万レバノン・ポンド(約300ドル)を超えることも少なくなく、孤立集落に住む有権者にとってそれは投票するために往復で最大600ドルかかることを意味する。

ベイルートのホテルで働くサラーム氏はこう述べた。「ヒズボラは選挙に勝利すると確信している。だから彼らは私たちに強く投票を求めていない。でも私はもう誰も信用していないので投票に乗り気ではない」

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