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アラブ人の大多数は経済に直接的な影響を受けているにもかかわらず、ウクライナ・ロシア戦争に無関心であることが判明

紛争の衝撃は、ロシアやウクライナから大量に輸入される基本食料品のコスト上昇に直面している何百万人ものアラブ人に影響を与えており、イラクなどの国々では抗議運動につながる可能性がある。(AFP通信)
紛争の衝撃は、ロシアやウクライナから大量に輸入される基本食料品のコスト上昇に直面している何百万人ものアラブ人に影響を与えており、イラクなどの国々では抗議運動につながる可能性がある。(AFP通信)
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31 May 2022 04:05:40 GMT9
31 May 2022 04:05:40 GMT9
  • 調査によると、回答者の66%が支持している国はないと回答し、18%がウクライナを、16%がロシアを支持していることが分かった。

ジョナサン・ゴーナル

アラブニュースとYouGovの独占調査によると、中東と北アフリカ地域に居住する大多数の人は、ウクライナで起きている紛争についてあまり関心を持っていないようだ。

しかし、この紛争に関心を持つべき理由は多いと専門家は指摘する。

カイロに拠点を置く国連世界食糧計画の北アフリカ中東地域事務局に所属する、アビール・エテファ上席広報官は、「あまりにも遠くの出来事だと感じている」と述べた。

ウクライナの首都キエフは、リヤドから3,000キロ以上離れている。

「しかし同時に、中東・北アフリカ地域の多くの層にとって、ウクライナ紛争の政治とダイナミクスはあまりにも複雑なのだ。」

この調査は、4月26日から5月4日にかけて、MENA地域の14カ国、7,835人を対象に実施された。

調査でロシア・ウクライナ紛争に関する立場を尋ねたところ、18パーセントがウクライナ側、16パーセントがロシア側を支持すると回答した。

しかし、この紛争に関して66%の回答者が「支持する国はない」と回答している。そのように回答した人が最も多いのは、ヨルダンとアルジェリア(74%)、サウジアラビア(71%)である。

ヨーロッパの歴史と政治の複雑さはさておき、ブリュッセルに本部を置く国際危機グループの国連担当部長リチャード・ゴーワン氏は、多くのアラブ人がウクライナで起きている紛争に対して無関心を示しているのには、別の理由があると考えている。

「この紛争に対するアメリカ人やヨーロッパ人の見方と、世界の他の地域の人の見方の間には、非常に大きなギャップがある」とゴーワン氏は言う。

「一つの重要な問題は、この紛争はNATOがロシアに対抗して投じたものだとアラブ地域の人々が考えていることだ。現実には、中東と北アフリカ地域が持つNATOと米国に対する疑念は、すぐに覆すことは不可能だろう。」

ウクライナでの戦闘や紛争が起きた理由について、確かにアラブ世界は為すすべがない。しかし、紛争の影響は基本食料品の価格上昇という形で、すでに何百万人ものアラブ人に及んでいるとエテファ氏は言う。

エテファ氏はまた、たとえ明日戦闘が停止すると仮定しても、「食糧安全保障の観点から見れば、世界が回復するのには半年から2年かかるだろう」と述べた。

彼女が言うには、紛争以前から「2月までに、中東地域の多くの国で食糧価格はすでに史上最高値に達していた」という。

「昨年、一家族が一ヶ月に最低限必要とする基本的な食料品のコストはレバノンで351%上昇し、この地域で最も高い上昇率となった。続いてシリアで97%、イエメンで81%上昇した。」

「そして今、ウクライナ危機がさらに食料価格を押し上げている。」

ウクライナからの輸入不足分はインド産小麦が補うと専門家は予想していたが、先週インド国内の農作物が熱波に見舞われたことで、一部の食品の価格が過去最高値まで上昇したため、インド政府は輸出を禁止した。

紛争以前から、WFP(国際連合世界食糧計画)はイエメン、レバノン、シリアなど、中東地域全体で数百万人に対して支援を行っていた。しかし今、ウクライナ紛争の影響でWFPが持つリソースへの需要が急増する一方で、食料と石油の価格が上昇し、WFPが負わなければならないコストが驚くほど上昇しているのだ。

「国際連合世界食糧計画にとって非常に難しい時期に、この紛争は起きた」とエテファ氏は言う。

「ウクライナ紛争のために、WFPの運営費は世界全体で毎月7100万ドルも増加した。世界がかつてない飢餓に直面しているこの年に、この地域で困窮している人々を支援する能力が低下してしまっている。」

「つまり、我々が一日に必要な食料を支援できる人数が、世界全体で400万人減少したのだ。」

中東・北アフリカ地域の多くの国々はロシアとウクライナからの食料輸入に大きく依存していたが、農業の中断、港の封鎖、制裁等の原因が重なったことが理由で、その輸入量は微々たるものとなった。

ロシアとウクライナは、ともに世界有数の農業国である。2021年には、ロシアかウクライナのどちらか、あるいは両方が、小麦、トウモロコシ、菜種、ヒマワリの種、ヒマワリ油の世界トップ3の輸出国にランクされている。

また、ロシアは窒素肥料をはじめとする肥料の世界最大の輸出国でもある。自国の農業が盛んな国にとっては、ロシアから輸入する肥料は農業の成功を左右する、なくてはならないものだ。

国連食糧農業機関は最近出した報告書で、ウクライナで農業と輸出が困難となっていることに加え、ロシアの輸出に対する制裁の影響により、「国際的な食糧・飼料価格をすでに上昇している基準値より8〜22%上昇させる可能性のあるグローバルな供給ギャップ」を生み出す恐れがあると警告している。

ロシアやウクライナからの輸出が長期的に減少すれば、経済的に弱い国々が真っ先にその影響を受けることになるだろう。そして、MENA地域の国々が直接その矢面に立たされている。

FAOは、「2022年から23年にかけて、世界の栄養不良人口は800万人から1300万人増加する可能性がある」と予測している。最も影響を受けるのはアジア太平洋地域、次いでサハラ以南のアフリカ、中東、北アフリカの順とされている。

「MENA地域は、小麦の42%、植物油の23%をロシアとウクライナから一括輸入している 」とエテファ氏は説明する。

「ウクライナ紛争が勃発した翌月の時点で、この地域の多くの家庭で主食とされている小麦粉の価格は、レバノンで47%、イエメンで11%、リビアで15%、パレスチナ地域で14%上昇した。」

ウクライナ危機が引き金となった食糧不足と食料価格高騰の影響を最も受けている国の一つがエジプトだ。エジプトは、この危機により二重の打撃を受けている。エジプトは小麦の85%をロシアとウクライナから調達しており、さらに同国の観光産業の大部分はこの2カ国からの観光客に依存している。

ロシアが侵攻を開始する直前の2月初旬、エジプトはすでに世界的な小麦価格の高騰に悩まされており、政府は高額な費用がかかるパン補助金制度の改革を検討していた。

2022年時点の価格で55億ドルも要するこの制度の下では、6000万人以上のエジプト国民が対象となり、1日5斤のパンを1ヶ月わずか0.5ドルで受け取ることができる。

また各国政府は、食料価格の高騰が「アラブの春」の反乱を引き起こしたことを強く意識している。今年3月には、ウクライナ戦争をきっかけにイラクで小麦粉の大幅値上げが行われたことに反対する、抗議デモが発生した。

ロンドン大学シティ校で国際関係学の講師、国際政治学部の名誉研究員を務めるバモ・ヌーリ博士は、「ロシアとウクライナの紛争が続く中、物価上昇に対する抗議の世界的な動きはイラクが発端となるかもしれない」と警告した。

これまで「中東諸国では、確かにロシア・ウクライナ紛争に対して特定の姿勢を示さず、関心が薄い傾向があった 」とヌーリ博士は強調した。

中東地域の多くの国では、「いかなる危機も解決する責任は政府にあり、日常生活に影響が及ばない限り、反応や議論は最小限に留める」ことが一つの理由であるとした。

またヌーリ博士は、「サウジアラビア、UAE、クウェートなど石油資源の豊富な湾岸諸国では、政府が外的危機の国内への影響を最小限に抑える手段やインフラを保有しているので、これは正当化されうる」と付け加えた。

一方、イラクやレバノンといった不安定な地域国家では、「大多数の国民が外部の出来事を注意深く観察し、その影響を意識して自ら計画を立て、状況を管理しようとする。政府がそのような能力を持ち合わせていないからだ。」

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