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サウジアラビアを始めとする湾岸諸国が慈善活動で戦略的アプローチをとる理由

結合体双生児のユーセフとヤシーンは、サルマン国王人道援助救援センターの援助による15時間の手術で無事に分離された。(提供)
結合体双生児のユーセフとヤシーンは、サルマン国王人道援助救援センターの援助による15時間の手術で無事に分離された。(提供)
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05 Jun 2022 12:06:19 GMT9
05 Jun 2022 12:06:19 GMT9

カリーン・マレック

  • ケンブリッジ大学の研究で、サウジアラビアは戦略的慈善活動を効果的に実践している国家であることが判明
  • 慈善団体や非営利組織が政府の取り組みを補完し、長期的かつ持続可能な変化を生み出している

ドバイ:英国のケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクールの戦略的慈善活動研究所が新たに公表した研究結果のなかで、「戦略的慈善活動」の特筆すべき実践例として、サウジアラビアの慈善寄付文化が取り上げられた。

「発展に向けた慈善活動の制度的変化:国際的な成長市場の研究枠組み」と題したこの研究報告は、寄付活動を最適化するには、現地化をより進め、新たな金融手段を活用するよう慈善団体に推奨している。

サウジアラビアは、国際支援を提供する「サルマン国王人道援助救援センター(KSrelief)」、社会や経済の発展に取り組む「キング・ハーリド財団」、女性の公民権意識向上を目指す「マワッダ女性慈善協会」など、様々な国有の慈善組織があることで知られている。

今回の報告書の執筆者であるショナリ・バナジー氏は、サウジアラビアは地域開発目標の実現に向けて国家と慈善活動リソースとを多々組み合わせており、「戦略的慈善活動」と呼ぶものを効果的に実践している国であると特定している。

「サウジアラビアでの我々の研究のなかで、同国で起きている慈善活動の変化について、非常に興味深い知見が得られました。そしてそれはサウジアラビアだけでなく、広く湾岸諸国でも起きていることです」とバナジー氏はアラブニュースに語った。

 

2021年のイベントに参加したアルワリード・フィランソロピーズの一団。(提供)

「湾岸地域特で特に得られる主要な洞察の一つは、慈善活動、寄付、寛大さなどが、これまで長年、何世代にもわたり湾岸諸国やサウジアラビア社会の大きな部分を成してきたという事実は誰もが知るところですが、しかしそれが最近、我々が研究所で『戦略的慈善活動』と呼んでいるものへと大きく変化を遂げていることです」

近年、公共セクターでも民間セクターでもない、いわゆる第三セクターに属する財団、慈善団体、非営利組織が急増し、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に沿った開発課題に構造的に関与している。

この流れのなかで、これらの組織の機能がより戦略的な性質を帯びるようになり、慈善団体や非営利組織が行政セクターと連携して取り組むことによって、長期的かつ持続可能な変化を生み出すようになった。バナジー氏によると、こうしたセクター横断型の協力モデルが、公共、民間、第三という従来のセクター間の分断を取り払い、互いの利益につながるのだという。

「今回の研究で明確になったのは、従来は縦割りであった地域や国内のセクター間を横断するような、地域ネットワーク、地域協力、地域提携関係を構築する必要があるということです」と彼女は述べた。

慈善活動は適切に活用することで、これらのセクターが共通の目標に向けて力を合わせて取り組む触媒になり得るとバナジー氏は考える。

「我々の研究で多くの場合に示されるのは、民間セクターがあれば、企業の社会的責任があるということです」と彼女は述べた。

ヨルダンの難民キャンプで行われたサルマン国王人道援助救援センターのボランティア企画。(提供)

「多くの場合、企業は自社だけで活動し、地元行政との協力関係の構築を常に考えているわけではありません。企業の慈善活動が大きくなるに連れ、ここに大きな機会が生じてきます。これは、特にサウジアラビアにおいて非常に一般的になりつつあります」

まさしく、経済多様化と社会改革を目指すサウジアラビアのビジョン2030計画は、セクター横断型の協力には理想的な環境を生み出してきた。

「そこには、企業セクターで成功を収めた慈善活動家たちが、実際に非営利団体と行政とを結びつけ、橋渡し的な役割を果たすこともできるという可能性が秘められています」とバナジー氏は述べた。

アラブの慈善活動は、地域の弱小国家や破綻国家で提供される公的サービスの隔たりを埋める上で、潜在的に重要な役割を果たすことになる。しかしそこには、本来ならばセクター横断型アプローチのほうが適切であるという状況において、第三セクターが過度に国家的機能を担うことになりかねないという危険性を潜んでいる。

1990年代のカンボジアがそうした発展途上国の一例であり、当時のカンボジアでは第三セクターが公的サービスを提供する上で顕著な役割を果たし、疑似政府ともいえる程の「過度な」働きを担っていた。

「彼らは主要な政策決定こそ行いませんが、初期教育の大半を提供し、多くの病院を建設し、貧困緩和に取り組み、大量のソーラー発電を提供するなどしていると思います」とバナジー氏は述べた。

「こうしたことは大いに必要ではありますが、残念ながら、持続可能なモデルとはいえないことが分かりました。基本的に、2つの行政が並行する形で一緒に機能するというモデルを構築するわけにはいかないからです」

アブドゥル・ラティフ・ジャミール貧困対策研究所の本部があるマサチューセッツ工科大学の学生たち。(提供)

そうではなく、両セクターの目的と責任を調和させるべきなのだとバナジー氏は言う。どれほど裕福な慈善活動団体であろうと、組織的な問題を自分たちで解決することは不可能だからだ。

「我々の観点からすると、政府が目的を実現させ、多くのシステムを機能させるための最も戦略的かつ持続可能な方法は、公益セクターを挑戦者、もしくはある種の緊張関係を生む存在として見るのではなく、彼らと一緒に取り組んでいくことが大切です」と彼女は述べた。

慈善活動における戦略的なアプローチとは、資金の配分や使い方に賢明になることを意味し、さらには、資金を効率的に配分するためにエビデンスに基づく査定をするという姿勢を示すことでもある。

「これはつまり、『アブドゥル・ラティフ・ジャミール貧困対策研究所(J-PAL)』のような組織を支持することを意味します。J-PALは、貧困緩和への介入に際して厳格な査定を行っており、中でも、そうした査定から得られたエビデンスを確実に政策や方針決定に活かすべく慈善団体などと取り組んでいます」とウズマ・スライマン氏はアラブニュースに語った。スライマン氏は、科学、データ、技術に基づくアプローチで世界的な問題や課題に取り組む国際組織「コミュニティ・ジャミール」でパートナーシップ担当副部長を務めている。

「これは特に、慈善活動団体が活動資金をどこへ向ければ最も効果的であるかを理解するのに重要となります。アラブ世界ではJ-PALが、2020年にコミュニティ・ジャミールの支援でアメリカン大学カイロ校内に立ち上げた中東・北アフリカ支所を通して、この地域全体の活動を行っています」

サウジアラビアで他にも特筆すべき慈善活動組織の一つが、女性の地位向上、貧困緩和、公共インフラ・サービス提供の強化などに取り組む企業や学術機関を支援する、「アルワリード・フィランソロピーズ」だ。

サウジアラビアの公益セクターは、寄付手法の変化に関連して伸びてきた。同国のデジタル変革が、「エフサン」、「シェファア」、「KSリリーフ」、サウジ・データAI庁の開発・監督による「国立寄付プラットフォーム」といった新規規制サービスの創設を通して、公益セクターにまで拡大してきたのだ。

2021年創設のプラットフォームであるエフサンでは、社会および経済問題、健康、教育、環境など、慈善活動や寄付をする人が自分の意図するものに近い慈善目的を選ぶことができる。

個人の価値観や特定の社会問題に焦点を当てることで、一般大衆や民間企業に社会的責任感の向上を促し、それと同時に、慈善寄付にまつわる透明性文化を促進させることを目的としているのだ。

昨年、サルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン皇太子がエフサンを通して複数の寄付を行い、それがこのプラットフォームの創設以来集めた合計金額を14億リヤル(3億7300万ドル)余りにまで押し上げた。そしてその金額はこれまでに4300万人以上の受益者に振り分けられてきた。

このようなセクター横断型コラボレーションを奨励しているのは、湾岸諸国ではサウジアラビアだけではない。昨年9月、ニューヨーク大学アブダビ校(NYUAD)が、地域初の学術的かつコミュニティ基盤のプラットフォームとなる「戦略的慈善活動イニシアチブ」を立ち上げた。このプラットフォームは、NYUADとアブダビ首長国の実業家で社会起業家のバドル・ジャファル氏との間の複数年の枠組み協定を通して創設された。

サルマン国王人道援助救援センターのボランティアが調理用油を配っている。(提供)

このような取り組みは、この地域の開発アジェンダの一環として慈善活動の役割が高まっていること、新たな金融メカニズムの採用、そしておそらくは、海外の慈善活動団体からその役割を地域の団体が引き継ぐという意味での「支援活動の非植民地化」を反映しているといえる。

公益セクターの動向を分析する英国のパブリッシャー「アライアンス」の2021年世界調査によると、回答者の89%が、中東を含むアフリカ・アジア諸国の公益セクターは今後25年で最大の成長を遂げると思うと回答した。

このような状況を見ると、サウジアラビアや広く湾岸地域における慈善活動の進化は、今後数十年でより明白になるであろう世代交代を反映しているようだ。

「このような次世代やミレニアル世代の慈善活動に関する研究は、これまでにもありましたが、そのほとんどは欧米に焦点を当てたものでした」とバナジー氏は述べた。

「中東や湾岸諸国で起きているこの巨大な変化に対して、その真只中にいる我々は非常に大きな関心を寄せています」

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