
イラク、サマーワ:イラクの野生動物保護区に生息するガゼルが餓死しており、気候変動が長年にわたる戦争の苦難を悪化させている同国で、最新の犠牲者となっている。
1か月余りで、イラク南部に位置するサワ保護区のスレンダーホーンガゼルの生息数が148頭から87頭に激減した。
同国では干ばつのため湖が干上がり、作物の収穫量が減少し、資金が足りず雨量も不足しているため、ガゼルの餌が枯渇している。
バルハム・サーレハ大統領は、気候変動は「今後の世代にとって存亡の危機となるため、その取り組みはイラクの国家的優先事項とすべきである」と警鐘を鳴らした。
この優雅な動物はリムガゼルとも呼ばれ、緩やかなカーブを描く角と砂色の毛が特徴である。
国際自然保護連合はこの動物をレッドリストに加え、絶滅危惧種に分類している。
イラクの保護区を除くと、多くがリビア、エジプト、アルジェリアの砂漠に生息しているが、レッドリストによると、そこに生息するのは「数百頭」に満たないと考えられる。
サワ保護区の管理者であるトルキ・アル・ジャヤシ氏によると、5月末までのわずか1か月間でそこに生息するガゼルの数は約40%減少した。
「政府から必要な資金を受け取っていないため、飼料を供給できない」とアル・ジャヤシ氏は語った。
農業やその他のインフラのアップグレードを必要とする非常に貧しい国で戦争が数十年間に続いたため、イラクの財政は逼迫している。
イラクでは汚職、財政危機、政治的膠着状態に取り組んでいるものの、10月の選挙から数か月が経っても新政権が誕生しないままである。
砂漠地帯で飼料が不足しているように、「ガゼルは気候の影響を強く受けている」と、アル・ジャヤシ氏は付け加えた。
さらに北にあるイラクの他の3つの保護区では、リムガゼルの数が過去3年間で25%減少して224頭になったと、農業省職員(匿名希望)は語った。
同職員は、バグダッド近郊のアル・マダインや、ディヤラ、キルクークにある保護区での生息数減少は、「公的資金の不足」が原因と語った。
南部の都市サマーワの近郊に2007年に設立されたサワ保護区では、動物たちが灼熱の太陽の下で喘いでいる。
褐色の不毛な大地は回復不可能なほどに乾ききってしまい、わずかな栄養を与えてくれるやせた低木は乾いて固くなっている。
ガゼルは、角が生えていない若い個体を含め、平地に敷き詰められた干し草をかじっている。
他にも、金属製の屋根の下に避難し、桶の水を飲んでいるガゼルがいる。
まだ夏は始まっていないものの、同国の一部地域ではすでに気温が摂氏50度を超えている。
トルコやイランの上流や支流にあるダムにより、水位が急激に低下している河川もあるなど、干ばつによる影響はさらに深刻化している。
同国の大統領は、砂漠化がイラクの土地の39%に影響を与えている、と警告している。
「水不足はすべての地域に悪い影響を与える。塩害によって農地の肥沃度が低下してしまうだろう」とサーレハ大統領は語った。
大統領はサワ保護区のリムガゼルを救うために1億ディナール(68,000ドル超)を送金したとアル・ジャヤジ氏は語った。
しかし、その資金では間に合わなかったガゼルもいた。
さらに5頭の命が尽き、その死骸は寄り添うように褐色の土の上に横たわっていた。
AFP