
ベイルート:レバノンの暫定首相ナジーブ・ミカティ氏が火曜日、新首相に指名され、組閣の要請を受けたが、壊滅的な経済危機が続く中で、組閣についての合意を得るには、政治的に難しい舵取りを迫られそうだ。
スンニ派イスラム教徒で、大富豪でもあるミカティ氏は、議会の議員128名の内54名(イランが支援するイスラム教シーア派政党ヒズボラを含む)の支持を確保して、ミシェル・アウン大統領の招集による審議会で自身4度目となる首相職に指名された。
だが、レバノンの指導者層の亀裂は深く、IMFとの間で援助を受ける条件として合意された経済改革を後退させかねない政治的停滞を打破して組閣を進める作業は困難をきわめるだろうという観測が専らである。
すでに3年目に突入した金融危機により、レバノンの通貨は90%以上の下落を見せており、貧困が拡大し、金融システムは麻痺し、預金者は凍結された口座から資金を引き出すことができない。これは1975年から90年の内戦以来の危機的状況である。
過去に3度首相を務めているミカティ氏は、新政府の発足までは暫定首相の地位にとどまるが、各派閥の間で閣僚その他の役職を分配しなければならず、通常これには数か月を要する。
専門家や政治家は、この組閣の作業は、任期が今年10月31日で切れる、ヒズボラ寄りでキリスト教マロン派に属するアウン大統領の後継をめぐって起きるだろう争いにより、さらに複雑化すると予測している。
新大統領を選出する議会は、先月行われた総選挙の結果、多様な顔ぶれにより構成されることになった。武装集団ヒズボラとその同調者は多数派の地位を失った一方で、改革派の新勢力が存在感を示し、キリスト教レバノン軍団党も議席を増やした。
新たな政治状況を反映して、北部の都市トリポリ出身のミカティ氏は、9月に3度目に首相として指名された時よりも20ほど支持票を減らしている。
46名の議員は特定の候補を支持しておらず、25名は元レバノン国連大使で現在国際司法裁判所の判事であるナワフ・サラム氏に投票した。
ミカティ内閣は4月に、IMFから30億ドル規模の資金援助案を取り付けたが、これはレバノン上層部の各派閥が長年阻んできた改革の実現が条件となっている。
IMF案は経済危機緩和の第一歩になると見られているが、金融システムに生じた推定700億ドルの損失をどう分担するかなど、詳細については政治・経済の指導者たちの間でも意見が分かれている。
ロイター