
マドリード:トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は、スウェーデンとフィンランドが、NATO加盟に際してトルコと結んだ新たな合意を実行しない場合、加盟を阻止する可能性がまだあると述べた。
エルドアン氏が単刀直入に警告を発したのは、北欧の2国が30カ国からなる米国主導の同盟であるNATOへの加盟を正式に要請したNATO首脳会議が終わったときだった。
この2国は軍事的非同盟の方針を転換し、NATOに加盟する計画を表明した。これは、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた動きだ。
エルドアン氏が5月に懸念を口にするまでは、この2国の加盟申請は速やかに承認へと進んでいた。
同氏は、この2国が非合法武装組織であるクルド労働者党(PKK)に隠れ場所を提供し、「テロ」を助長させていると非難した。
エルドアン氏はまた、この2国が、2019年のトルコによるシリアへの軍事侵攻に対応して課している武器禁輸を解除することを要求した。
この3国は28日、NATO首脳会議に合わせて、10項目からなる覚書に署名した。その覚書は、エルドアンの懸念の多くに対処しているように見えた。
エルドアン氏は反対を取り下げ、バイデン米大統領と和やかな会談を行い、米国がトルコに新たに戦闘機を売却するという約束を取り付けた。
しかしエルドアン氏は、首脳会談終了後に開かれた緊急記者会見で記者団に対し、この覚書はトルコが自動的にこの2国の加盟を承認するというものではないと述べた。
国が新たに加盟を申請するには、全加盟国による承認と、各国議会による批准が必要だ。
エルドアン氏は、スウェーデンとフィンランドの今後の行動によって、この2国の加盟申請がトルコ議会で審議されるかどうかが決まるとけん制した。
「2国が義務を果たせば、我々は議会で審議するだろう。果たさないなら問題外だ」と同氏は述べた。
ワシントンにいるトルコの上級外交官は、批准手続きに入るのは早くて9月下旬で、議会が1日から休会となるため2023年になる可能性もあると述べた。
NATO首脳会議の会場の廊下にいた西側の外交筋は、エルドアン氏が「脅迫」に関与していると非難した。
エルドアン氏がメッセージを伝えたのは、トルコがフィンランドから12人、スウェーデンから21人、容疑者の引き渡しを求めると発表した日の翌日だった。
その33人は全員、PKKか、2016年のクーデター未遂事件でトルコに非難されている在米イスラム教指導者の勢力のメンバーであるとして告発されている。
しかし、エルドアン氏は30日、スウェーデンがトルコに「テロリスト73人」の引き渡しを「約束」したと言っており、要求をつり上げているようだった。
同氏は、スウェーデンがいつその約束をしたのか説明せず、その他の詳細も明らかにしなかった。
スウェーデン政府高官は「エルドアン氏の言及は理解できない」と述べ、「スウェーデンは法の支配を厳密に遵守している」と強調した。
「スウェーデンでは、スウェーデンの法律は独立した裁判所によって適用される」とモルガン・ヨハンソン法相はAFP通信に書面で回答した。
「スウェーデン国民が引き渡されることはない。スウェーデン国民でない者が他国の要請を受けて引き渡される可能性はあるが、スウェーデンの法律や欧州の条約に適合する場合に限られる」とヨハンソン氏は説明した。
フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領は29日、エルドアン氏は当局や裁判所によってすでに処理された事件に言及しているようだと述べた。
「これらの事件は全てフィンランドで解決されたと思っている。決定は下されており、一部はフィンランドの裁判所によって下されている」とニーニスト氏はマドリードで記者団に語った。
「事件を再び取り上げる理由はない」
トルコの要求や過去の交渉の多くは、スウェーデンが関与するものだった。スウェーデンとクルド人移住者との関係がより強固だからだ。
スウェーデンは民族に関する公式な統計はとっていないが、人口1000万人の国に10万人のクルド人が住んでいると言われている。
米ブルッキングス研究所は、トルコは「テロリスト」という言葉を「曖昧に、しばしば攻撃的に使っている」ため、今後数カ月のうちに問題が生じる可能性があると警告した。
「複雑になっている原因は、トルコの法律におけるテロの定義だ。トルコの法律は暴力行為への参加を違法とするだけでなく、基本的な言論の自由を侵害している」と同研究所は報告した。
AFP