
バサム・ザアザア
ベイルート:レバノン人男性は病気の妻の治療費のために腎臓を売ろうとしたことで臓器売買の罪で収監されても構わないと話す。
35歳の失業中の夫、ハリール・アドナン・アル・ドグハイリ氏は、妻であるサラ・アル・フセイン氏の毎月400ドルの医療費を切実に必要としている。彼女は娘の出産後まもなく、クローン病との診断を受けた。
「仕事もお金もない状態で、私はドルを手に入れてサラ(妻)の治療費を支払うために、自分の腎臓、または他のどんな臓器でも売りに出すしかないのです」とアル・ドグハイリ氏は土曜日、アラブニュースに語った。
前妻との間に二人の子供を持つアル・ドグハイリ氏は、シリア人の現在の妻と2017年に結婚した。
4月に娘が生まれた後すぐに、彼はひどい腹痛と収縮を訴えていた妻をレバノン南部の町シドンにあるアル・ライ病院に入院させた。
検査の結果、彼女はクローン病と診断された。これは腸の病気で、消化管に慢性の炎症が起き、腹痛やひどい下痢、疲労感、体重の減少、栄養失調などが引き起こされる。
「こうして話している今、もう5週間以上入院していることになります。病気の間妻に付き添わなければならなかったため、仕事は首になりました。入院や治療の費用を払うことはできません。でも9月までの間、どうしても毎月400ドルが必要なのです」と彼はアラブニュースに説明した。
臓器売買は犯罪だと知ってはいたものの、アル・ドグハイリ氏はSNSを使い、Facebookに動画を投稿して窮状を訴え、自分の腎臓を売りに出した。
「最大で懲役5年の刑になる可能性があることは分かっています。それでもこのお金が必要で、病気の妻のために何もせず座して待つわけにはいきません。刑務所に入らなければならないなら、そうするまでです」と彼は言う。
差し迫った医療費の支払いについてさらに説明した上で、アル・ドグハイリ氏は妻が10月ごろには腹腔鏡検査を受けなければならないと話した。
「腹腔鏡検査の結果、妻が治療に反応しているということになれば、私たちはこれから毎月その金額を、生涯にわたって払わなければなりません。反応がなければ、月々注射2本のために3千ドルを、この先ずっと支払うことになるのです」と彼は言う。
アル・ドグハイリ氏は新型コロナウイルス感染症の拡大以前には、飲食業界で働いていたが、それ以後は医療関連の清掃会社に転職していた。
レバノンの対ドル為替相場は危機的状況にあり、闇レートでは1ドル=2万8千レバノンポンド以上に達している。これにより患者たちは治療や入院の費用を払えなくなっている。
赤十字および民間防衛組織のボランティアは、資金や備品の不足により、適切な医薬品を入手できないため、患者たちが環境の劣悪な病院へ移送されていることを報告している。
売ることのできる不動産はないのかと尋ねられて、アル・ドグハイリ氏は説明する。「何もありません…完全な破産状態です。家族と私は、ハレト・サイダにある家賃120万レバノンポンド(土曜日時点で42ドル)の賃貸住宅に住んでいますが、家賃、食費、そしてサラの治療費の心配もしなければなりません」
アル・ドグハイリ氏は「同情した人たちの寄付や、いくつかのNGOのおかげで5か月分の医療費を払うことができる」と明かした。
また、妻がシリア人であるため、最大で医療費の80%が国連から支払われるとも付け加えた。
レバノン当局や政治家に助けを求めたかという問いに対しては、彼は「彼らは皆役立たずです。助けてなどくれません。誰も気に留めないのです。もううんざりです。そういうわけで、2022年5月の選挙でも、どの政治家にも投票しませんでした」と答えている。
アル・ドグハイリ氏はまた、腎臓の売却は不可避だという前提で、「売却してもどの程度の代金が得られるか」については、期待はしていないとも付け加えた。
「実際、これはリスクですが、妻が苦しんでいるのを何もせずに見ているわけにはいきません。臓器の一つより、もっと多くを差し出しても構いません…家族、特に生まれたばかりの娘が彼女を必要としているのですから、妻の命を助けたいのです」と彼は言う。