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レバノン、大多数の裁判官の勤務拒否で司法機能の麻痺に直面

裁判所では、業務に必要なあらゆるものが不足している。裁判官たちは、電気や水の不足、動かないエレベーター、ペンや紙、インクといった基本的な事務用品の欠乏に不満を募らせている。(ファイル写真:ロイター)
裁判所では、業務に必要なあらゆるものが不足している。裁判官たちは、電気や水の不足、動かないエレベーター、ペンや紙、インクといった基本的な事務用品の欠乏に不満を募らせている。(ファイル写真:ロイター)
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24 Aug 2022 08:08:28 GMT9
24 Aug 2022 08:08:28 GMT9
  • 政権上層部との話し合いも、裁判官側が最低限必要としていた要求実現の確約には至らなかった

ナジャ・フーサリ

ベイルート:レバノンの裁判官の待遇改善を検討する会議が結論に達しなかったため、裁判官たちは23日も抗議行動を継続した。

550人の裁判官のうち約400人は先週、政権上層部との話し合いで最低限のラインとしていた要求実現の確約が得られなかったため、業務を停止した。

約400名の裁判官には、レバノン最高司法評議会の議長、評議員、また大審院および上訴裁判所、検察庁、裁判所、司法省の司法職にある者たちが含まれている。

裁判官たちは23日、ベイルートの最高裁判所で非公開の総会を開き、会談の結果について話し合った。

会計検査院と国家諮問評議会を除き、さまざまな階級や地位の司法関係者がストライキを行っている。

最高司法評議会は、「司法の良好な機能、尊厳、独立」を確保し、裁判官の権利の確保に注力していると述べた。

同評議会は、解決策が実行されるまでの抗議行動を含め、裁判官たちの要求をすべて採用したとしている。

また、同評議会は「司法をめぐる状況の悪化は、司法独立法を採択しなかったことに主な原因があるる」と指摘した。

元総検事のハテム・マディ判事は、アラブニュースの取材に対し次のように述べた。「司法関係者たちの業務停止は、レバノン国内のすべての検察庁の機能が麻痺し、すべての司法審査が停止していることを意味します」

「最高司法評議会が中立の立場に留まらず、抗議の中心となったことは以前にもありました」

「私の給与は現在わずか300ドル(約4万円)相当で、司法界で比較的高い地位にある私がそうなのですから、給与が75ドル(約1万円)にも満たない下級裁判官(の生活の苦しさは)は言うまでもありません。レバノンの司法がこれほど混乱したことはこれまでになく、今起きていることには、国そのものの崩壊が反映しているのです」

「戦争中も私たちは働いていましたし、給与も十分でした。ところが今日、政権の座にある人々は私たちの預金を盗み、収入の激減に貢献しただけでなく、新たな税金を課したのです」

ある司法関係者によると、裁判官たちは「支配階級の欲望に従わされ、彼らに対して資料を捏造しようとする」試みに不満を抱いているという。

その司法関係者は、次のように続けた。「レバノンの裁判官は皆レベルの高い有資格者ですが、政治家階級は自分たちの利益のために権力を使って裁判官を従わせています。その主な例として、ベイルート港の爆発事故のファイルの扱いや、タレク・ビタール判事が政治家の過失を非難したという理由だけで解任されたことなどがあります」

裁判官たちは、彼らの給与増額要求に対し思い切った解決策を取るよう要求している。裁判官の給与は、闇市場の為替レートでは現在221ドル(約3万円)相当となっている。3年前にレバノンの経済危機が起こる前は5,000ドル(約68万円)相当だった。

現在裁判所では、業務に必要なあらゆるものが不足している。裁判官たちは、電気や水の不足、動かないエレベーター、ペンや紙、インクといった基本的な事務用品の欠乏に不満を募らせている。

ベイルートの最高裁判所の主任登録官は、アラブニュースの取材に対し次のように語った。「コスト削減のため、紙の表裏両方を使うようになりました。このような財政状態のため、すべての裁判所の登記業務に必要な備品が不足しており、時として、業務停止を余儀なくされることもあります」

先月、レバノン中央銀行は一度だけ、裁判官の給与を1米ドル=8000レバノン・ポンドのレートで支払った。ある裁判官が法務省に要請し、法務省から照会を受けた中央銀行がその要請を承認して行ったものだった。

この措置は、中央銀行総裁による裁判官への贈賄と見なされ、特に同総裁が金融犯罪関連で起訴されていることから、司法当局内に緊張をもたらした。

また、この措置は公務員たちを激怒させ、彼らをなだめるために生活費補助や、援助金、生産的な報酬が割り当てられた。

レバノン大学の教授たちは、裁判官と同じ待遇を受けることを要求し、公開ストライキを続けている。

レバノン・ポンドの暴落は、公務員の給与に大きな影響を与え、彼らは購買力の約95%を失い、6月以来仕事を中断しストライキに追い込まれた。

国家諮問評議会は、裁判官の置かれている状況について訴えている。

「現在の状況の影響により、この重要な部門での業務が確実に継続していけるような方法での、裁判官の業務の正常な遂行に支障をきたす可能性があります」と同諮問評議会は警告する。

「多くの当事者たち、すなわち国家機関の機能を規定する法律と規則を遵守することになっている、国家の責任ある地位を占める人々の一部によって行われている、諮問評議会の裁判官たちを標的とした権利侵害と捏造」についても、評議会は説明している。

さらに、「事態は耐えがたいところまで来ています。行政や立法に対する司法の独立は、レバノン社会の民主主義と法の支配を象徴するものであり、今こそ実現されなければなりません」と諮問評議会は述べている。

また、諮問評議会は「裁判官の給与を、裁判官の地位にふさわしい公正なものとし、求められる重要な職務、負担、日常生活の要件にふさわしいものとすることで、裁判官の給与のバランスを取り戻す」ことを求めている。

中央統計局によると、2022年7月のレバノンの消費者物価指数は、2021年7月と比較して168.45%の上昇を記録したという。

また、今年の最初の7ヶ月間の消費者物価インフレ率は50%に達している。

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