
アラブニュース
ロンドン/ニューヨーク:新たな調査によって、シリア政府が10年前にダラヤという町で市民に対して行った虐殺の全容が暴露された。ガーディアン紙が25日、報じた。
この残虐行為に対する初めての詳細な調査で、運動団体「シリア・ブリティッシュ・コンソーシアム(SBC)」が支援したシリア発のチームは、2012年8月24日から26日にかけてアサド政権支持者がこの町に押し寄せたときに、少なくとも700人が殺害されたことを明らかにした。
兵士らは一軒ずつ訪問し、男性や女性、子供を殺害または拘束した。危害を受けなかった人はほとんどいなかった。おびえた家族は地下室に隠れ、兵士らは罪のない市民を射殺した。
そのシリアの調査チームとSBCは生存者と目撃者を見つけ出した。彼らの多くはシリアから逃げていたが、彼らの証言を記録することができた。調査チームは現在、国連や裁判支援団体が責任者を起訴する気になることを期待している。
「この調査は、目撃者や犠牲者の証言に基づき、ダラヤで行われた残虐行為を記録している。そうすることによって彼らの証言を忘れないようにして、後世に記録を残す」と報告書には書かれていた。
「この調査はまた、10年が経ち、重要な証拠が集まったにもかかわらず、依然としてダラヤの人々に対する説明責任が果たされず、正義が実現してないことを示している」
「国際的な制度に失望しながらも、目撃者は証言した。自国の政府がダラヤで行った凶悪犯罪について詳しく語った。彼らの話、彼らの真実は、記録する価値があるだけでなく、いつの日か正義と説明責任をもたらすのに役立つかもしれないという信念に基づいていた」
2012年の虐殺は当時、シリア内戦で最悪の残虐行為と見なされていた。バッシャール・アサド大統領政権はこの虐殺は対テロ作戦だと発表した。
調査チームは、制服や身分を示す記章を根拠に、ダラヤ襲撃時に政府軍とイラン、ヒズボラの民兵がいて、関与していたことを示す証拠を集めた。専門家らは、使われた武器や装備から、いくつかの組織を特定することもできた。調査チームは数人の責任者を特定できた。
しかし、衝撃的な事件であるにもかかわらず、この虐殺は、アサド政権が戦争犯罪を行っていると結論づけた、シリアに関する2013年の国連の報告書で少し触れられたことを除けば、国際的に大きな注目を集めることはなかった。
国際法と残虐行為防止の専門家であるヤスミン・ナフラウィ氏はガーディアン紙に対し「我々がこの虐殺の調査をすると決めたのは、ダラヤの事件が解明されるきっかけになるからだ」と語った。
「政府軍は過去にも小競り合いをしていた。ダラヤに入り、デモ隊に発砲していた。しかしこの虐殺は、ダラヤを標的にした作戦・さらなる虐殺・包囲・砲撃の連鎖につながる最初の大事件だった」
調査員のヤファ・オマル氏は、ダラヤがダマスカスから砲撃された音を聞いたことを思い返し、同紙にこう語った。「シリアでこうした犯罪が起こることを許せば、それが常態化し、他の場所でも起こるだろう」
「シリア人がこういう調査をすれば、他国の被害者が同じ方法を使って正義を追求する道が開かれる」
アサド政権とその同盟国がその地上攻撃の数日前にダラヤに激しい砲撃を行ったことが、今回の調査で明らかになった。
目撃者はこう話した。「政府がダラヤ市に対する軍事行動を激化し始めたのは、イードの1日目か2日目(8月19日もしくは20日)だった。砲撃が通常より激しかった」
「迫撃砲による砲撃や、より激しい砲撃があった。我々が知らない武器が使われていて、聞いたことのない音を立てていた」
別の目撃者は「迫撃砲が止まるのを見て、我々の地域の番が来たことがわかった」と話した。別の目撃者は「攻撃の後、地元の病院は恐ろしい状況で、この世の終わりみたいだった」と話した。
政府軍の兵士を起訴し裁判にかけるのが難しいことはわかっているが、最近ドイツで行われた裁判では、シリアの将校が人道に対する罪で有罪判決を受けた。
この成功があったにもかかわらず、国連安全保障理事会によるアサド政権を国際刑事裁判所に付託しようとする試みに対し、ロシアと中国は拒否権を行使した。
国連のステファン・ドゥジャリク報道官はアラブニュースにこう語った。「シリアであろうと他の紛争であろうと、説明責任を果たすべき時が来るだろう。市民に対して行われた犯罪に対する説明責任が必要になるだろう」
「シリアに関する情報を集めている組織がいくつかある。目立っているのは、人権理事会が設置した第三者委員会などだ。いつか実際にいくらかの説明責任が果たされるよう、皆がそうした組織を支援することが非常に重要だ」
2017年に国連事務総長に就任した際、アントニオ・グテーレス氏はシリア内戦の解決を最優先事項にすると約束した。ドゥジャリク氏は、12年に及ぶシリア内戦が現在、グテーレス事務総長の優先事項リストのどこに位置するか尋ねられると、同氏はアラブニュースに「引き続き重要視している」と答えた。
ドゥジャリク氏が特に指摘したのは、グテーレス事務総長が、命を救う越境支援システムを刷新し、飢餓の脅威に直面している、シリア北西部に住む400万人のシリア人に引き続き支援を届けられるようにする必要がある、と声高に主張しているということだった。
「どの事務総長にも優先順位がある」とドゥジャリク氏は述べた。「我々と同じように、世界にも優先順位がある。これはたびたび取り上げられる疑問だ。ひいきにしている危機があるはずがない。そうだろう?」
「アントニオ・グテーレス氏は真の人道主義者で、我々の助けを必要としている全ての人を助けようとしているのだと思う」
ゲイル・ペダーセン国連シリア担当特使の「政治トラックを進める」努力は継続中だ、とドゥジャリク氏は付け加えた。ペダーセン氏は25日にモスクワを訪れ、セルゲイ・ラブロフ外相と会談した。
ニューヨーク:エファレム・ コッセイフィ寄稿