

ナジャ・フーサリ
ベイルート:レバノンを出発した不法移民船が地中海東部のシリア沖で沈没し、少なくとも77人が溺死した。
22日にシリアのタルトゥース沖で沈没した小型船は、レバノン人とシリア人を中心に約150人を乗せていた。
シリアのハッサン・ガバーシュ保健相はAFP通信に「77人が死亡した」と話した。
レバノンは密航者の出発拠点になっており、同国民に加え、シリアやパレスチナからの難民が自国を逃れるため集まっている。
違法な「死の船」はレバノンの北岸から毎日出航している。うまく目的地に到着する人たちもいれば、船が転覆し、その領海の国の沿岸警備隊に救助される人たちも少しいる。その他の人たちは海の藻くずとなっている。
トリポリの議員だったムスタファ・アルシュ氏はアラブニュースに対し、「人々はレバノンの状況が改善されるかもしれないという希望を完全に失っており、それを利用するマフィアがいる」と話した。
同氏によると、密航者の95%はうまく目的地に到着しており、欧州にたどり着いた人たちは親族や知人に密航するよう勧めているという。
同氏は次のように述べた。「レバノン当局は、どの請負業者が密航を手配しているか知っている。彼らは巨額の報酬を得ている。警備員は、密航を容易にするために買収されているか、見て見ぬふりをしている」
「この船はなぜシリアに向かったのか? レバノンの領海を巡回しているUNIFIL(国連レバノン暫定軍)から逃れるためではないだろうか?」
「麻薬の密売は違法だが、売人や販売業者に支払われている金額を考えると、相変わらず活発に行われている」
「人身売買や密入国も同じだ。金が払われている。特に、本来ならば国民を守らなければならない人たちに」
アリ・ハミーヤ暫定公共事業相は次のように述べた。「このタイプの船は、そういう旅をするために作られたものではないので、そんなに多くの人を乗せることはできない。その船は最近輸入され、2カ月前にレバノンに到着したということが分かっている」
乗客の多くはレバノン北部の住民だった。中にはナハル・アルバレド・キャンプから来たパレスチナ難民もいたが、大多数はイドリブやアレッポ、ラタキアから来たシリア人だった。
彼らシリア人がレバノンに不法入国したのは、レバノン北部を通って海路で脱出するためだ。
犠牲者の中には2人の少女がいた。彼女らはタルトゥースから車でレバノン北部アッカールに運ばれた後、埋葬された。
アッカールのカルタフ市の市長は、「2人の少女の母親と、彼女の息子2人は溺死した。父親はまだ生きているが、シリアの病院にいる」と述べた。
この船はレバノン北部ミニエ地方から出航した。乗客は子供3000ドル、大人一人7000ドルの渡航費を払っていた。
レバノンのアラブ社会主義政党であるバース党のアリ・ヒジャジ事務総長は、23日にタルトゥースを訪れ、「(その船は)20日朝、ミニエから出航したが、機器が正常に機能しなかった。22日朝、波で転覆した」と生存者から聞いたと述べた。
レバノン軍は密航業者とされる8人を逮捕したと発表した。この悲劇的事故と時を同じくして、レバノンの北岸からイタリアに向けて出航した別の船が、ギリシャとトルコの間で故障したことがソーシャルメディア上で発表された。その船の乗客は救助され、現在トルコにいる。