
アラブニュース
テヘラン:テヘランのエビン刑務所で、囚人と看守の間で「トラブル」が発生し、火事が起きたが、状況は「収拾」しているとイラン国営メディアが土曜日に伝えた。
イランの首都で政治犯や反政府活動家を収容する悪名高い刑務所で、大きな炎が燃え上がった。
全土に拡大した抗議デモが5週目に入る中、ネット上に投稿された動画や地元メディアの報道では銃声も確認されている。
イラン国営メディアIRNAが治安当局高官の話を引用して伝えたところによると、1つの監房の囚人たちと看守の間で衝突が起きた。
この高官によると、囚人たちは囚人服で満杯の倉庫に火を放ったため、火事が発生した。
高官は「暴徒たち」は暴動の拡大を防ぐため、他の囚人から隔離されたと話した。
これを受けて、アメリカ国務省は土曜日、エビン刑務所に収容されているアメリカ人の安全については、イラン政府に責任があると警告した。
「不当に拘留されているアメリカ市民の安全に関しては、イラン政府に全面的な責任があり、彼らは即時に解放されるべきである」とアメリカ国務省のネッド・プライス報道官はツイッターに投稿し、アメリカ政府は「緊張感を持って」事態を注視していると付け加えた。
エビン刑務所の囚人は大半が保安犯罪のために収容されており、以前から西側の人権団体の批判を浴びている。同刑務所は2018年には、アメリカ政府の「深刻な人権侵害」に関するブラックリスト入りしている。
#DEVELOPING: Gunshots and alarms heard, loud blasts and flames seen coming from the notorious #EvinPrison #Iran #IranProtests2022 https://t.co/d9cyunBLdP pic.twitter.com/26uvjViGuX
— Arab News (@arabnews) October 15, 2022
ヒューマン・ライツ・ウォッチはエビン刑務所当局が長時間の取り調べや囚人に医療サービスを受けさせないことに加えて、拷問や無期限の拘留などを威圧の材料に使っているとして批判してきた。
今回の火事騒ぎは、イラン中で騒乱と暴力、抗議デモが広がる最中に起きた。抗議デモはここ数十年でもっとも激しいもので、火事と同じ土曜日に再開した。
発端は先月、22歳のクルド系イラン人、マフサ・アミニさんが道徳警察に拘束された後に亡くなったことであった。
進行中のデモに参加して逮捕された数百人はエビン刑務所内に拘留されていると伝えられる。
イラン政府関係者は「事態は完全に収束」しており、消防が消火活動に当たったと語った。
その後、テヘランのアリ・サレーヒ検事は「平和」が刑務所に戻り、この騒動は4週間の間国中を席巻している抗議活動とは無関係だと主張した。
インターネット上には火事の様子を捉えた動画が出回っている。動画では、警報が鳴り響く中、煙が空に立ち昇り、銃声が聞こえる。
そのすぐ後、街では抗議デモが始まり、インターネットに流れる動画では、大勢が「独裁者に死を!」と繰り返しながらタイヤに火をつけている。独裁者とは、アヤトラ・アリー・ハメネイ最高指導者のことである。
目撃者によると、警察がエビン刑務所に通じる道路と幹線道路を封鎖し、周辺地域からは少なくとも3回、爆発音が聞こえたという。
首都北部にある刑務所付近の主要な高速道路は混雑しており、多くの人がデモ参加者への連帯を示すためにクラクションを鳴らした。
機動隊員の乗ったバイクや救急車、消防のはしご車が刑務所の方向へ向かうのが目撃されている。
この地域では、インターネットが遮断されているという報告もある。
アメリカに拠点を置くイラン人権センターは刑務所内で「武力衝突」が起きたとしている。
同センターによると、最初に刑務所の第7監房で銃声が聞こえた。この証言の裏付けはすぐには取れていない。
刑務所での火事は、同じ土曜日に、イラン中の複数の都市の大通りや大学で反政府デモが激化する中で起きた。
人権団体によると、抗議デモ開始以来の4週目末の時点で、子供を含む数百人が死亡した。
デモ参加者はまた、イラン北西部アルダビールの通りでも「打倒独裁者」と叫んだ。ソーシャルメディアに投稿された動画では、ケルマーンシャー、ラシュト、テヘランの大学の周りで学生たちが集会を開いた。北部クルディスタン地域にある、デモの一大中心であるサナンダジュでは、女子生徒たちが「女性、生命、自由のために」と繰り返しながら中心街の通りを歩いた。
抗議デモは、22歳のマフサ・アミニさんが警察の拘留中に死亡したことへの人々の怒りから始まった。アミニさんはテヘランでイランの道徳警察によって、イスラム共和国(イラン)の厳格な服装規定を守らなかったとして逮捕された。
イラン政府は警察による勾留中、アミニさんの取り扱いに問題はなかったと主張しているが、遺族はアミニさんの遺体にはあざやその他の殴打の痕跡があったと話している。
アメリカを拠点とする人権団体HRANAによると、9月17日に全土でデモが始まって以来、少なくとも233人のデモ参加者が殺された。
HRANAは、死者の内32人は18歳以下だったとしている。それより前、オスロに本部を置くイラン・ヒューマン・ライツは死者数を201人と推定していた。
イラン当局は抗議活動を西側の陰謀だとしているが、その根拠は示していない。
人々の怒りはアミニさんの死をめぐって高まり、少女と女性たちは連帯の印として、頭部を覆うよう着用を義務付けられているスカーフを外している。
抗議運動は石油産業の労働者も加わるなど、社会の他の部分にも広がっており、少なくとも19の都市に拡大して、2009年の「緑の運動」以来、イランの神権政治への最大の挑戦の1つとなっている。
各地の刑務所でも暴動が起き、最近では北部ギーラーン州のラカン刑務所で囚人と看守の衝突があったと伝えられている。
二重国籍者を含む、保安関連の罪に問われた囚人を収容するエビン刑務所は、人権団体から受刑者を虐待しているとして告発されている。
エビン刑務所は、政治犯および西側とのつながりを持つ人物で、イラン政府が国際的取引の材料として利用するために拘留している人々の収容先として知られている。
イラン系アメリカ人のシアマク・ナマジ氏は、国際的批判を浴びたスパイ容疑により10年の刑で収監中に一時帰宅を許されていたが、最近になって再びエビン刑務所に戻された。氏の85歳の父親、バケル・ナマジ氏は釈放され、国外に出ることを許された。
2018年、アメリカはエビン刑務所に制裁を課した。「エビン刑務所の囚人は刑務所当局により、性的暴行、身体的暴力、電気ショックなどの残虐行為を受けている」とアメリカ財務省は2018年、制裁を発表した後の声明で指摘した。
土曜日、アミニさんの故郷サッゲズやデモが始まったブーカーンとサナンダジュを含め、クルド人地域の主要都市では、商業ストライキが再開した。
イラン政府は運動を厳しく弾圧し、活動家やデモを組織した人物を逮捕し、運動を支持する声を上げた有名人を非難してパスポートを没収することまでした。また、逃げ出す群衆に対して実弾や催涙ガス、スタングレネードを使用しており、その結果として死者が出ている。
土曜日に広く流通した動画には、イラン北部のゴハルダシュトで、デモ中に民兵組織バスィージの私服メンバーが女性を車に押し込んだり、空中に向けて銃を発射したりする様子が収められている。
広範なインターネット障害もまた、デモ参加者が外部の世界と接続することを困難にしている。さらにイラン当局は騒動が始まって以来、少なくとも40人のジャーナリストを拘束したとジャーナリスト保護委員会が明らかにした。
(AP,AFPとの共同)