
バグダッド:イランで続く反政府デモを背景に行われたワールドカップの対米国戦で敗れたサッカーイラン代表は、帰国の際、控えめな歓迎を受けた。
米国の勝利を祝ったことで、イラン人の男性が1人射殺されている。
選手たちは1-0の敗戦から一夜明けた30日遅く、カタールから帰国した。
イランの反政府デモの参加者は、チームをイランの聖職指導者の象徴とみなしており、イランのいくつかの都市では、花火と歓声を上げて敗戦を祝っていた。
オスロに本拠を置く人権監視団体イラン・ヒューマンライツは1日、イラン北西部で、米国の勝利を支持して車のクラクションを鳴らしたとして、イラン治安部隊に1人の男性が射殺されたと報じた。
イランでは、ワールドカップ開幕戦でイスラム共和国の国歌斉唱を行わなかった選手たちへの処遇が吟味されることになりそうだ。
多くの人はこの動きを抗議活動への連帯を示すものだと捉えている。
しかし、チームはその後の試合では国歌斉唱を行った。
30日遅く、テヘランの国際空港では、数十人のファンが代表チームの帰還を出迎え、人々は歓声をあげ、イランの国旗を振っていた。
しかし、選手たちは反政府デモの参加者から、国の治安部隊がデモを暴力的に鎮圧していることについて声を大にして抗議しないことに痛烈な批判を受けている。
人権団体によると、弾圧によって400人以上のデモ参加者が死亡し、数千人が逮捕されたという。
大会へと出発する前にイブラヒム・ライシ大統領の前でお辞儀をする選手たちの画像は、ソーシャルメディア上で活動家から大きな批判を浴びた。
強硬派の聖職者であるライシ大統領はデモ参加者を「ハエ」にたとえ、何の証拠も示さずに、デモを外国の陰謀だと断じた。
29日の試合後、イラン北西部のバンダル・アンザリという街で、米国の勝利を支持して車のクラクションを鳴らしたメヘラン・サマクさん(27歳)が射殺された。
オスロに本拠を置くイラン・ヒューマンライツは、サマクさんが 「イスラム共和国の敗戦を祝うために外出した際、治安部隊によって頭部を撃たれた」と報じている。
サマクさんはイラン代表MFであるサイード・エザトラヒ選手の幼なじみでもあり、エザトラヒ選手は自身のソーシャルメディアで彼の死を悼んだ。
しかし、サマクさんが国の治安部隊に殺されたと明言しなかったことで、再び活動家から批判を受けた。
だが、イランの著名人の多くはデモ参加者のために発言したことを理由に政府の標的となり、逮捕などの措置を受けている。
イラン政府関係者は、米国の勝利を祝う国民の存在を認めながらも、その存在を軽視している。
革命防衛隊のホセイン・サラミ司令官は、敗戦を祝った人々は「敵のために」それを行ったとし、「我々にとっては重要ではない」と付け加えた。サラミ氏のコメントは、半公式通信社であるタスニム通信の記事に掲載された。
イランの最高指導者アヤトラ・アリー・ハネメイ師と親交のある元文化大臣でエテラート紙編集長のアッバス・サレヒ氏は、こうツイートした。
「イラン代表の対米戦での敗北はほろ苦いものでしたが、それ以上に苦く感じるのは、一部の人々がそれを喜んでいることです」
イランは、29日の米国戦での敗北により、カタールでの大会から敗退した。
この試合では、選手たちは試合終了間際にゴールを決めようと奮闘していた。
ストライカーのサルダム・アズムン選手は記者団に対し、最後の試合での自身のパフォーマンスに満足していないことを語った。
イランがワールドカップに出場するのは今回で6回目であった。
9月、首都テヘランで22歳のマフサ・アミニさんがイランの道徳警察によって拘束され死亡したことをきっかけに、反政府デモが勃発した。
この抗議活動は、1979年のイスラム革命でイランの神権政治が確立されて以来、最も深刻な問題へと急速に発展していった。