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国政選挙での有権者棄権により大統領に対する辞任要求が発生、チュニジア政情不安に陥る

独立高等選挙管理委員会の委員が、国政選挙翌日にチュニスで投票用紙を数える様子。(AP)
独立高等選挙管理委員会の委員が、国政選挙翌日にチュニスで投票用紙を数える様子。(AP)
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20 Dec 2022 04:12:01 GMT9
20 Dec 2022 04:12:01 GMT9
  • 政治アナリストは、投票率の記録的な低さは、大統領が国民の信任を失っていることを示していると分析

チュニス:チュニジアでは現在議会の権限が大幅に制限されている。そのチュニジアで17日国政選挙があったが、圧倒的多数の有権者が棄権。主要な野党勢力がカイス・サイード大統領に「直ちに立ち去るよう」求めており、18日現在、チュニジアは政情不安に陥っている。

辞任要求は、サイード政権が低迷する同国の国家財政を安定させるため、国際通貨基金に対し、約20億ドルの融資交渉を行う最中に巻き起こった。

同国の選挙管理委員会は17日の選挙で投票したのは900 万人強の有権者のうち 8.8%であると発表した。これが「アラブの春」革命運動から生まれた唯一の民主政権と言われるサイード政権の現状である。

救国戦線同盟のアフメド・ネジブ・シェビ代表は、サイード大統領は「すべての法的正当性を失った」と述べた。

また、シェビ代表はAFPに対し、91%を超す棄権率は「カリス・サイード大統領のやり方を支持するチュニジア人がごく少数であることを示している」のであり、この選挙結果は、2019年に選出されたサイード大統領が昨年行政権を掌握して以降始まったプロセスを「大衆が拒絶」していることを示している、と語った。

サイード大統領は、政治的行き詰まりとコロナ禍によって悪化した経済危機が数ヶ月にわたって続いていた2021年7月、軍用車で議会を取り囲み、内閣を解任し、議会を閉鎖した。

サイード大統領は元法学者であるが、その後司法権を掌握し、また2022年7月には国民投票で大統領のほぼ絶対的な権限を強化する憲法を推し進めた。この国民投票についても多くの有権者がボイコットしている。

チュニジアでは独裁者ザイン・アル・アビディン・ベン・アリ氏が追放されてから10年がたつが、サイード大統領のこうした動きは、独裁政治への回帰につながるのでは、という不安を巻き起こしている。

政治アナリストのスラヘディン・ジュルチ氏は、17日の投票率は「衝撃的」なほど低く、サイード大統領は「さらにエリートや政党から孤立し、そして今や国民からも孤立する」状態となったとし、「今回の記録的な投票率の低迷は、人々が大統領を信任していないことを示している」と語った。

サイード大統領の宿敵である救国戦線(イスラム主義アンナダ党を含む)は、17日の選挙をチュニジアの民主主義体制に対する「反逆」の一環であるとして、ボイコットした。

シェビ代表は「これは危機的状況であり、近々行われる大統領選挙を監視する権限を持つ上級判事について合意を成立させる必要がある」と述べた。

政治学者のハマディ・レディッシ氏は今回の投票率について「サイード氏に対し個人的不信任を突きつけるもので、その結果大統領の正当性が疑われる事態となっているものの、反対勢力は脆弱で一致団結しておらず、また多くのチュニジア人は過去10年に渡るチュニジアの苦境について、アンナダ党に責任があると考えている」と述べた

またレディッシ氏は、新憲法のもとでは「大統領を罷免する法的機構がない」とも述べた。

反イスラム主義政党、自由デストウリアン党を率いるアビル・ムシ 党首は、同じく投票をボイコットし、18日のサイード大統領に対する辞任要求に加わった。

米国務省のネッド・プライス報道官は、「投票率の低さは、政治参加拡大の必要性を強く示すものである」と述べ、「包括的で透明性のある改革」を促した。

161議席を問う今回の国政選挙では、3週間に渡る選挙期間中、目立った選挙活動もなく、選挙ポスターも殆ど掲示されず、人々は日々の生活に追われて真剣な政治討論が行われることもなかった。

首都チュニスに住む現在失業中の37才の男性、ハマディ・ベルガセム氏は「人々は現在の経済状況と生活費の高騰に怒りを感じています」と語った。

ベルガセム氏は昨年のサイード大統領の動きを支持したが、その後ずっと幻滅が続いているとし、「サイード大統領は投資を国民に約束し、また汚職と戦うとも約束したのに、その約束を守りませんでした。彼は多くのことを約束したにも関わらず、それを果たしていません」と述べた。

サイード大統領の動きは当初、革命後導入された民主体制での汚職や機能不全にうんざりした一部のチュニジア人から支持されていた。

しかし、ほぼ1年半が経過した現在、チュニジアの経済的苦境はさらに悪化し、10%近いインフレ率は、17日の投票率よりも高い有様である。

アンナダ党が支配的な地位を占めていた以前の議会は、大統領制と議会制との混合体制において、革命後の憲法に明記された広範囲に及ぶ権限を持っていた。

しかし現在の議会は「極めて厳しい条件を満たさなければ、閣僚を任命したり罷免したりすることができず、その条件を満たすのはほぼ不可能だ」とレディッシ氏は述べた。

政党の力を中和することを指向する体制の中で、議会への立候補は個人としてすることが義務付けられた。

カーネギー中東センターのハムザ・メデブ研究員は、今回の選挙は「カイス・サイード大統領が強制する政治体制を完成させ、権力を彼の手に集中させるための形式的行為である」と述べた。

AFP

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