
アラブニュース
ロンドン:イスラエル国防軍によるヨルダン川西岸地区の占領の異なる側面を描いた2本のドキュメンタリー作品に支払われた助成金が、イスラエル政府によって取り消される可能性が出てきた。
「H2: The Occupation Lab」と「Two Kids a Day」という作品では、ヘブロン市がイスラエルによって統制されている様子や、イスラエル軍によるパレスチナ人の子供の拘束、およびその後の処遇というテーマを扱っている。
イスラエルのミキ・ゾハール文化相(ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるリクード党に所属)は、これらの作品に投じられた助成金の返還を求めている。そして、「我々の敵のストーリーを宣伝し、イスラエル兵を殺人者として描くような」映画や文化活動への「資金を取り消し」、今後も制作者が「イスラエル国家や兵士」を傷付けないことを求めている。
右派の文化活動家シャイ・グリック氏率いるイスラエルの圧力団体「ベツァルモ」が作品の公開中止を求める運動を展開したことが、今回の措置につながった。
国家の助成金に大きく依存するイスラエルの映画産業が、パレスチナ人の処遇に関する表現や記録のために政府の圧力にさらされるのはこれが初めてではない。
2015年、当時のミリ・レジェブ文化相は国家への「忠誠」を映画助成金の条件にする法案を提出したが、国会で否決された。しかし、ユダヤ人入植者のマイナスイメージに対抗するために「Samaria Film Fund」を設立した。
イスラエル史上最も右寄りと言われている現政権は、国の司法制度を抜本的に改革し、国営放送局(ドキュメンタリー制作の主な資金源)を解体する法案を提出している。
「H2: The Occupation Lab」はヘブロンの歴史および、そこに住むパレスチナ人や兵士、イスラエル入植者の関係性を描き、かつて栄えた都市にそうした関係性が及ぼす影響を説明している。
同作品の共同監督を務めたノアム・シェイザフ氏は「イスラエルは文化をプロパガンダにすることを決めた」と語り、ヘブロンでのイスラエルの活動を「最もあからさまであけすけなユダヤ至上主義」と非難している。
「私たちの映画は、(パレスチナの)領土に限らず、イスラエルが『ヘブロン化』のプロセスを推し進めていることを訴えています。異常なのは、映画の中心テーマであるそのプロセスが作品自体に起こっていることです」
「今回のことは分水嶺的なタイミングで起きているように思えます。こうしたことがすべて実現してしまえば、一夜にしてまったく違った国になるでしょう」
「Two Kids a Day」は、国防軍の兵士に石を投げた罪に問われたアイーダ難民キャンプの4人の子供の姿を追っている。そのうちの1人は4年間拘束された。何百人もの子供がそうした行為で拘束されており、その多くは夜間に家から連れ去られている。
「Two Kids a Day」を監督したデビッド・ヴァクスマン氏はこう語る。「これらの2作品は嵐の真っ只中にあります。これは、イスラエルの表現の自由やすべての芸術家への攻撃です」