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イスラエル右翼新政権のパレスチナ人への影響 専門家が強く懸念

今週ロンドンで講演した専門家たちによると、イスラエル政府はパレスチナ人の民族としての集団的アイデンティティーを抑圧し、彼らの合法的な政治的表現を禁止する措置を取っているという。(ファイル写真:ロイター)
今週ロンドンで講演した専門家たちによると、イスラエル政府はパレスチナ人の民族としての集団的アイデンティティーを抑圧し、彼らの合法的な政治的表現を禁止する措置を取っているという。(ファイル写真:ロイター)
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09 Feb 2023 09:02:04 GMT9
09 Feb 2023 09:02:04 GMT9
  • パレスチナ人への抑圧的政策は国際社会から注目されていない、と専門家は指摘
  • パレスチナ人はイスラエル国内の人口の20パーセントを占めている

タマラ・トゥルキ

ロンドン:イスラエル政府が、パレスチナ人の民族としての集団的アイデンティティーを抑圧し、彼らの合法的な政治的表現を禁止する措置を取っていると、専門家たちが今週開催された討論会で強い懸念を表明した。

専門家の一人であるイスラエルのアラブ系政治家、サミ・アブ・シェハデ氏(元イスラエル国会議員)は、最近イスラエルで選出された右派政権は、同国内の人口の20%を占めるパレスチナ人市民に特に影響を与えるだろうと指摘した。

シェハデ氏の発言は、8日に行われたガリラヤ財団のパネルディスカッションでのものである。この討論会では、パレスチナ人とその平等を求める闘いにイスラエル政府が与える影響について話し合われた。

アブ・シェハデ氏はまた、今後の動向を占う上で最も危険な兆候の1つとして、イタマル・ベングビール国家治安相による司法改革を挙げた。改革には、イスラエル警察に命じての、イスラエル国内および占領地におけるパレスチナの旗の撤去が含まれている。

「イスラエルの国家体制は、(パレスチナ)民族としての要素を、私たちのアイデンティティの一部として認めようとしない」とアブ・ジェハデ氏は語っている。

「彼らは私たちを国家や宗教によるアイデンティティーを持たない少数派として捉え続けており、それが政府の政策にも現れているのだ」

昨年12のイスラエルにおける過激派右翼政党の地滑り的勝利は、イスラエルの国全体、また歴史的に同国と関係の深い西側の同盟国に警鐘を鳴らすものだった、とアブ・ジェハデ氏は指摘した。

アブ・シェハデ氏はまた、新政府の姿勢の結果として、パレスチナ人は教育分野で差別されることが予想されるとしている。

同氏はさらに、「世界のほとんどの人々は、イスラエルの教育制度が、その社会の他の部分と同様に、人種的分離の上に成り立っていることに気づいていない」とも訴えた。

イスラエル国内には、パレスチナ人向け、世俗派のユダヤ人向け、宗教的信仰を持つユダヤ人向けの3種類の異なる公式教育制度がある。

いずれの学校制度においてもシオニスト的現代史の授業はあるが、パレスチナ人が自国の歴史を学ぶことは禁じられている。イスラエルのウィファット・シャシャ・ビトン教育相はかつて、パレスチナ史の教育を、イスラエル政府や軍隊に対する「危険な扇動」であると述べたことがある。

パネルディスカッションに登壇した専門家たちは、イスラエルの連立新政権の基本政策はパレスチナ人をターゲットにしたものであるのにかかわらず、国際社会からの注目はなく、国内でも公の議論がなされていないと主張した。

代わりに、新政権による司法改革計画が、イスラエルの民主主義そのものを脅かすものとして注目の的になってしまっている、と専門家たちは指摘した。

「法改正は重大な問題だが、イスラエルの極端な人々はこれらの法律の成立を待つこともしないだろう」とアブ・シェハデ氏は見ている。

ハイファにあるMada Al-Carmel Arab Center for Applied Social Research(マダ・アル・カルメル・アラブ応用社会調査センター)のジェンダー研究プログラムディレクター、アリーン・ハワリ博士は、以下のように自らの考えを述べた。

「イスラエルは、南アフリカ、ニュージーランドやオーストラリアと同じように、他民族の土地であったところにやって来た入植者たちが打ち立てた植民地国家という性格を持つ」と博士は指摘した。

「このような植民地国家、特に第二次世界大戦後の1948年に成立したイスラエルは、その存在の基盤として西側社会に属することを強く必要としている」

「西側諸国の一員であるためには、少なくとも手続き上は民主的であることを示さなければならない」

「イスラエルの左派が新政権の改革に反対するのはそのためだ。西側の支持を失えば、イスラエルという国の存在基盤そのものが危うくなるからだ」

しかし、ハワリ博士は、新政権は(イスラエルの歴代政権の中で)初めて、欧米が自分たちをどう思うかについて「単純に、意に介していない」と見ている。

この大胆な態度は、占領地の支配継続の成功、最近のアラブ諸国数カ国との関係正常化、トランプ政権時に得られた利益、そして長引くEUの沈黙を要因としたものだとハワリ博士は論じている。

パレスチナの人権弁護士であるハッサン・ジャバリーン博士は、新しい司法改革に反対してテルアビブで抗議している数千人のイスラエル人のうち、極めて少数ではあるが同国のパレスチナ人に対する扱いを批判する人々がいたという事実に注意を促した。

ハッサン・ジャバリーン博士。(提供写真:ガリラヤ財団)

しかし、その一方で、ジャバリーン博士は次のようにも語っている。「私たちはイスラエルを民主主義国家として見ていないのに、イスラエルの民主主義を救うためのテルアビブでの抗議に同調することはできない。まさにその法制度が自分たちに犠牲を強いていると、私たちは感じているのだから」

「だから、パレスチナ人が抗議活動に参加するのは非常に難しい。しかし、イスラエルの新政府の主な犠牲者は、実は私たちなのだという点については、抗議運動の一部の指導者と同じ意見だ」

イスラエルの過激派の脅威が高まる中、アブ・シェハデ氏はアラブニュースの取材に対し、パレスチナ人、特に世界中に定住しているパレスチナ人は、解放のための戦略の立て方を見直す必要があるという見方を示した。

「私たちの課題の一つは、私たちパレスチナ人が、自分たち自身や私たちと似たような人たちに向かってしか語りかけていないことだ」とアブ・シェハデ氏は言う。

「私たち活動家は、(パレスチナで)起こっていることはすべて知っていて当然と思っているが、世界の多くの人には、最も基本的なことすら知らされていないのだ」

アブ・シェハデ氏は、活動家たちはパレスチナの大義、問いかけ、そして物語について知らない人たちを教育し続けなければならないと訴えている。

「虚像によって作られた、私たちが民主主義体制を敵視して闘っているという印象は間違いだと世界に知ってもらわなければならない。(イスラエルの現体制を)単にアパルトヘイトと呼ぶのは生ぬるい言い方であり、これは最も人種差別的な社会だ私は思っている」とアブ・シェハデ氏は語った。

「世界の人々に、私たちの闘いを支援するために、この真実を見てもらいたい。私たちは平和と正義、そしてパレスチナ人とユダヤ人両者を含めた、すべての人々の平等のために闘っているのだから」

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