• レバノンポンドが過去最安値を記録したことを受けた銀行の閉鎖が怒りに火をつけた

ナジャ・フーサリ

ベイルート：レバノンの首都で16日、デモ隊が銀行に火を放ち、窓ガラスを割り、道路を封鎖した。同国では通貨がドルに対して過去最安値を記録し、経済悪化に対する国民の怒りが高まっている。

レバノン銀行協会が全ての支店の閉鎖を決定したことで、既に預金引き出し制限に直面している市民や預金者の怒りはさらに高まった。この決定は、レバノンポンドが過去最安値の1ドル8万ポンドを記録したことを受けたものだった。

預金者やデモ隊はベイルートのバダロ地区にある銀行6行（バンク・アウディ、フランサバンク、クレジット・バンク、ビブロス・バンク、バンク・オブ・ベイルート、BBAC）を襲撃した。

彼らはその後、ベイルート東部郊外のシン・エル・フィルにある建物の前で座り込みを実施してから、銀行協会トップのサリム・スフェイル氏の自宅に突入しようと試みた。

デモ隊は各銀行のガラスファサードを割り、装甲ドアの前で車のタイヤに火を放った（2019年10月のデモの後、ほとんどの施設が装甲ドアを設置した）。

各銀行は先頃、従業員の大半に対し自宅待機を指示したうえで、全ての支店で顧客の立ち入りを禁止するとしていた。

火は消防隊によって速やかに消し止められた。一部の銀行の外には機動隊が出動し、近隣道路はレバノン軍によって再開された。

デモ隊はベイルートのラフィク・ハリーリ国際空港道路と、イクリム・アル・カルーブ地区に通じる沿岸幹線道路も封鎖した。

ヒズボラおよびアマル運動の支配下にあるシドン、マルジュアイユーン、ティールの主要道路でもタイヤが燃やされた。

ヒズボラおよびアマル運動に忠実なベッカー高原のバドナイェル・カスルナバ地区や、レバノン北部のトリポリ・ベッダウィ幹線道路においてもデモが行われた。

エコノミストのヴィオレット・バラア氏は今回のデモについて、「でっち上げの騒乱であり、政争の結果だ」と述べた。

さらに次のように続けた。「今日銀行に火を放った者たちは預金者でも何でもない。預金者はタイヤの燃やし方なんか知らないしどこに行けばいいかも分からないだろう。レバノン経済とそれへの信頼に対する攻撃だ」

「今起こっていることには政治的目的がある。今起こっていることから利益を得ている者たちがいるのだ。ドル投機家などは特にそうだ。もっとも、国は違法両替商を40人逮捕したが」

一方、ムタヒドゥーン（統一）同盟は次のように述べた。「預金者たちは憤慨している。預金を取り戻すことを主張しており、これ以上の遅れを認めない」

「今回の動きの目的は最終的かつ決定的な警告を送ることだ。銀行家と銀行協会の恣意的行為と非妥協的態度を止めることが必要なのだ。銀行協会は一昨日、司法妨害の罪に問われ『悪党協会』と呼ばれた。預金者が預金を取り戻せるように、銀行よりも預金者に有利な司法判断を下すことも重要だ」

アミン・サラム暫定経済相は16日の記者会見で、「特定のプラットフォームの為替レートに頼ることはできないため、闇市場為替レートを採用しつつ、スーパーマーケットの商品価格をドルで付けられるようにする」措置を講じたと述べた。

一方、軍トップのジョセフ・アウン大将は次のように述べた。「軍の決意がなければ、我が国は相次ぐ事件や危機によってずっと困難な状況に陥っていただろう。軍はこれからもレバノンの安全の保証者であり続ける」

レバノン軍は、ベッカー高原の町ホル・タアラを急襲した際に指名手配中の麻薬密売人らとの武装衝突が発生し兵士3人が死亡したと発表した。

軍司令部によると、軍部隊と情報パトロール隊が敷地内に押し入った際に指名手配犯3人も死亡した。