
エルサレム:国連で中東平和を担当する調整官は8日、占領下にあるヨルダン川西岸地区での暴力激化を止めるようイスラエルとパレスチナに呼びかけた。前日には、イスラエルの強制捜索で6人の死者が出た。
「私たちは暴力の連鎖の真っ只中にいるが、すぐに止めなくてはならない」。トル・ベネスランド調整官は声明でそう述べている。
「安全保障理事会は声をそろえ、当事者に冷静と自制を呼びかけている。挑発的な行動や刺激するような言動は慎まなければならない」
呼びかけの前日には西岸地区北部の街ジェニンをイスラエル軍が強制捜索し、6人のパレスチナ人が死亡した。その中には、先月イスラエルの入植者2人を殺害したとされるハマスのメンバーも含まれている。
調整官は暴力行為に「危機感」を覚えていると述べた。軍によると、激しい銃撃戦の中で肩に担いで発射するロケット砲も使用されたという。
パレスチナのマフムード・アッバース大統領の広報官を務めるナビル・アブルデイネ氏は、ジェニンの難民キャンプでのロケット砲の使用を「本格的な戦争行為」と表現したと通信社WAFAが報じている。
ここ最近、西岸地区での軍事行動で連続して死者が出ているが、ジェニンの事件はその直近の例となった。1967年の第三次中東戦争以降、西岸地区はイスラエルによって占領されている。
6人の死者の中にはアブデル・ファタハ・フセイン・コロウシャ氏(49歳)も含まれている。イスラエル軍は同氏が「テロ工作員」であるとし、2月26日にパレスチナの町ハワラで2人のイスラエル人入植者を殺害した容疑がかかっていたという。
2人の入植者の殺害事件の数時間には、イスラエルとパレスチナがヨルダンで「さらなる暴力を防ぐ」ことで合意したばかりだった。イスラエルの入植者は事件に激怒し、数百人がパレスチナ人の住居や車に火を放った。
「暴力行為が続いていることを深く憂慮している」とベネスランド氏は述べ、パレスチナ人に対するイスラエル入植者の暴力とイスラエル人に対するパレスチナの攻撃をともに非難した。
「占領しているイスラエル側は市民を確実に保護し、事件の犯人に責任を取らせなくてはならない」
イスラエル軍によると、ハマスが掌握しているガザ地区から夜間にロケット弾が発射されたが、射程が足りずに沿岸地帯に落ちたという。
ベネスランド氏は「前進する道を見つけなければならないのなら」、先月両者がヨルダンで合意した「事態の沈静化に向けて努力する」という約束を実行しなければならないと述べた。
「当事者は、さらなる暴力につながるような行為を慎まなくてはならない」
これとは別に、占領下の西岸地区において、イスラエル軍に殺害されたハマス戦闘員の葬儀の参列者がパレスチナ当局に抗議していたところに、パレスチナの治安部隊が催涙ガスを放射した。
ハマス戦闘員だったコロウシャ氏の葬儀では、数百人が西岸地区北部の街ナブルスを行進した。
ハマスの軍事部門カッサム旅団は彼を「英雄的な殉教者」と呼んでいる。
街中でコロウシャ氏の遺体を運ぶ葬列の参加者の中には、パレスチナの治安部隊や高官をイスラエルの「スパイ」と呼び、罵る者もいた。
AP