• 国連開発計画総裁はアラブニュースに対し、4800万ガロンの石油が入る船の購入は5500万ドルの「手痛い」出費になったと話した；残りの作業への資金提供を新たに呼びかけた
• 新しい船は定期メンテナンスを受けるために乾ドックに入っており、1カ月以内にイエメンに向けて出航する予定だ；石油を船から船に移し替える作業は、早ければ5月に始まる可能性がある

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク市：国連は9日、石油タンカー「セイファー」から100万バレル以上の石油を取り除くサルベージ作業に使う巨大タンカーを購入する契約を、ベルギーの運航会社ユーロナビと締結したと発表した。セイファーは、イエメン沖の紅海に係留されている、放置された貯蔵積み出し船だ。大規模環境災害を回避するのが目的だ。

47年前に建造されたセイファーは、イエメン内戦が2015年に始まってから、ほとんど、あるいは全くメンテナンスが行われておらず、専門家が浸水・爆発・発火する危険があると警告するレベルまで劣化が進んでいる。

セイファーには約4800万ガロンの石油が入っているため、石油が流出すれば、1989年にアラスカ沖で発生した「エクソン・バルディーズ号」の事故の4倍の規模の事故になると国連は警告している。

エクソン・バルディーズ号の事故は、環境被害の観点から、世界最悪の原油流出事故とみなされている。

国連開発計画のアヒム・シュタイナー総裁はアラブニュースに対し、国連が購入した船は5500万ドルの「手痛い」出費となったと話した。その前に同機関は、寄贈船やリース可能な船を探そうと無駄な努力をした。

「この市場は明らかに過熱しているため、誰かの気前のいい行為を待つよりも、船をチャーターするだけなく実際に購入するという決断を下すことが、我々にできる唯一の方法であると、最終的にそう結論せざるを得なかった」と同氏は述べた。

専門家の予測によると、セイファーから石油が大量に流出すれば、紅海の生態系に深刻なダメージを与える可能性がある、と国連は発表している。

イエメン人160万人を含む約3000万人が、紅海の生態系に依存して生活している。

例えば、イエメンの西海岸の漁業は壊滅的な打撃を受け、漁業コミュニティの生活は破壊されるだろう。

それらの多くはすでに、イエメン内戦のために、人道支援に依存して生き延びている。火災が発生すれば、840万人以上の人々が有毒な汚染物質にさらされる可能性がある。

石油の流出は紅海の商業海上輸送を混乱させる可能性もある。紅海は世界有数の貿易量を誇る水路であり、世界の総貿易量の1割を占めている。

石油の流出は、サウジアラビアやジブチ、エリトリアなどの沿岸国にも悪影響を及ぼす可能性がある。

国連が購入した、15年前に建造された船は、定期メンテナンスを受けるために乾ドックに入っており、来月中にイエメンに向けて出航する予定だとシュタイナー氏は述べた。石油を船から船に移し替える作業は、早ければ5月に始まる可能性がある。

国連開発計画は、国連が調整するイニシアチブの一環としてこの作業を行っている。国連開発計画は海洋サルベージ会社スミットと、安全に石油を取り除き、セイファーを環境に配慮した解体処理場に曳航する準備をする契約を結んだ。

このサルベージ作業は2段階に分かれている。石油は、新しい船に移された後、イエメンの政治状況によって売却や移動が可能になるまで、永久貯蔵施設に移される予定だ。

デービッド・グレスリー国連イエメン常駐調整官はアラブニュースに対し、当初の計画ではサルベージ船をリースする予定だったが、「ここ1年、状況がかなり落ち着いてきたとはいえ、いまだ内戦の真っ只中にある」地域に入る用意があるサプライヤーがいないと話した。「それが一番の理由だ。率直に言えば、船を買う以外に選択肢がなかった」

このサルベージ作業の推定費用は1億2900万ドル。これまでのところ、7500万ドルは確保されている。

グレスリー氏は資金提供者に、残りの資金の提供を緊急に募った。

「我々はほぼ全てのピースを揃えた」と同氏は述べた。「この船が最終的にもたらすかもしれない被害から数十万のコミュニティを救うために、最後に少しの資金を提供してください」