
パリ:フランスの検察当局は、レバノン中央銀行のリアド・サラメ総裁が巨額の公的資金を横領した疑いに関する越境捜査に関連して、同国の銀行家を正式な捜査対象に加えたと発表した。
国家財務検察庁パリ事務所の報道官が7日に発表したところによると、レバノンのAMバンクの頭取であるマルワン・ヘイレディン氏には、犯罪組織への関与と加重マネーロンダリングの容疑がかけられている。
フランスにいた3月24日に検察官から予備的告発を通知されたヘイレディン氏は拘束されなかったが、出国しないよう命じられパスポートを没収されたという。
ヘイレディン氏は電話にもテキストメッセージにも応じなかった。ロイターが聞いたところでは同氏の代理人であるという弁護士は、自分が同氏の弁護士であることを正式に認めることはできないとした。
30年にわたり中央銀行総裁を務めてきたサラメ氏は、数億ドルを横領しその収益の一部を国外でロンダリングした容疑で、レバノン、フランス、その他欧州の少なくとも4ヶ国で捜査対象になっている。
サラメ氏は、自分は2019年に発生したレバノンの金融危機のスケープゴートにされているとして容疑を否定している。
フランスとレバノンの捜査に詳しい関係者によると、ヘイレディン氏はサラメ氏がAMバンクを通して不正な資金移動を処理することを許可した疑いがある。
サラメ氏の弁護士であるピエール=オリヴィエ・スール氏は、ヘイレディン氏がサラメ氏と結託していたという容疑についてコメントを控えた。レバノン銀行はコメントを求めるメッセージに応じなかった。
ヘイレディン氏は1月、ベイルートを訪問した欧州検察から尋問を受け、サラメ氏の巨額の資金が入っているAMバンクの口座について質問されたと、この尋問に詳しい関係者は伝えている。
ロイターが銀行取引明細書を確認したところ、サラメ氏のAMバンクの口座残高が1993年の1500万ドルから2019年には1億5000万ドル以上にまで増えていたことが分かった。
レバノンの司法関係者が8日に語ったところによると、同国の検察当局は、定期的に現金が引き出されていたこの口座がマネーロンダリング活動を隠蔽するために使用されたと見ている。
サラメ氏は弁護士を通して、AMバンクの口座をマネーロンダリングに利用したことを否定し、残高の増加は預金で得た利益によるものだと説明した。
ヘイレディン氏は2011年から2013年までレバノンの国務大臣を務めた。2022年の国会議員選挙にはイランを後ろ盾とする有力政党・武装組織であるヒズボラが支援する候補者として出馬したが落選した。
サラメ氏の弁護士であるスール氏によると、フランスの検察当局はサラメ氏を正式には容疑者としていないが、5月16日にパリで開かれる審理に同氏を召喚したという。
ロイター