• サラメ総裁は欧州で進行中の捜査に関係してフランス検察に出頭を求められていたが応じず、オー・ブリジ判事がパリで逮捕状を出した。
• サラメ総裁（72）は30年にわたってレバノン中銀のトップを務めてきた人物で、嫌疑を全て否定していると伝えられる。

ナジャ・フーサリ

ベイルート：フランスの予審判事は16日、レバノン中央銀行のリアド・サラメ総裁に対し逮捕状を出し、国際手配した。サラメ総裁は汚職の容疑で取り調べを受ける予定だったが出頭に応じなかった。

サラメ総裁は欧州で進行中の捜査に関係してフランス検察に出頭を求められていたが応じず、オー・ブリジ予審判事がパリで逮捕状を出した。

サラメ総裁に対しては、レバノン中銀や商業銀行、監査法人の関係者多数とともに金融犯罪に関与した容疑が持たれており、フランス、ドイツ、ルクセンブルクの3カ国からなる司法チームが汚職事件として捜査を行ってきた。容疑の中には3億3000万ドル相当の不正蓄財や資金洗浄（マネーロンダリング）も含まれる。

サラメ総裁は72歳で、過去30年間にわたって中銀総裁を務めてきた。これまで全ての容疑を繰り返し否定している。自らの資産については、メリルリンチの投資銀行部門で働いていた時の蓄えや相続資産、そして運用益だと主張している。

レバノンの司法当局はフランスの司法当局に対し5日前、サラメ総裁に対して16日にパリの法廷に出頭するよう3回にわたって通知しようとしたが、それ以降、総裁が中銀のオフィスにいることを確認できないとフランス司法当局に連絡した。

欧州の司法チームは過去3回にわたってベイルートを訪れ、サラメ総裁に事情聴取を行った。司法チームは他にも、ユースフ・ハリール財務相や中銀の副総裁経験者たち、レバノンの民間銀行の頭取たち、中銀の職員、中銀の口座の監査にあたった人々にも事情聴取を行った。

サラメ総裁は声明で、「ブリジ判事の決定に異議申し立てを行う」意向だと述べるとともに、「判事の決定は明らかな法律違反であり、提出された明快な文書にまったく価値を認めず先入観に基づいて行われた」と主張した。

サラメ総裁はまた、決定は最も基本的な法律のあからさまな違反だと主張した。判事はフランスの法律で定められた法的期限を守っていないというのが総裁の言い分だが、総裁に出頭の期日は伝えられていたしそれを把握していたはずだ。

サラメ総裁はこうも述べた。「（判事は）2003年の国連条約および、同条約を支え国際的に認められた手続きに、とりわけ国際的な司法共助の文脈において違反している」

またサラメ総裁は、報道機関が機密文書を何の制限もなしに入手し、捜査関係者や判事の意図を事前に知っていたことは最近の報道から明らかだとして、フランス当局は捜査に関する守秘義務に関する基本原則を破ったとも述べた。

サラメ総裁はこうも述べた。「フランスの捜査当局に関係した事象は、そのやり方からして推定無罪の法則に反しており、法の条文の選択的な適用だ」

彼はまた、レバノン政府のためにフランスの弁護士を指名するプロセスにもブリジ判事が介入していると非難した。

サラメ総裁はフランス側の決定を「ダブルスタンダードの上に築かれた正義」と表現した。

サラメ総裁はこれ以前に、「事実をでっち上げる市民、ジャーナリスト、政治家」のグループを非難するとともに、2年以上前から彼を告発する動きがあるのを感じていたと述べた。

サラメは1993年から中銀総裁の座にあり、任期は今年7月に終わる。

レバノン当局は18日に、サラメ総裁と弟のラジャ氏、それにかつて補佐官を務めたマリアンヌ・ホエイク氏の出頭を求めている。

サラメ総裁はレバノン当局から、横領やマネーロンダリング、文書偽造、偽造文書の使用、義務違反、脱税の容疑でも告発されている。

レバノンのカタイブ党は「政府はサラメ総裁をフランス司法当局の出頭命令から救い、政府自身の犯した罪から逃れさせようとしている」と非難した。

またカタイブ党は「サラメ総裁を司法の場で追及できれば、総裁職に留まることは受け入れられないことになり、必然的に辞職を伴う。追及できないとなれば、レバノン国民に対するさらなる侮辱だ。影響力のある人々と共謀・連帯して彼が犯した金融犯罪の最大の犠牲者こそ国民だ」と主張した。