Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • トルコ大統領選を巡ってイラクとシリアのクルド人が分断

トルコ大統領選を巡ってイラクとシリアのクルド人が分断

イラク北部、エルビルの市場を通行する人々。シリアとイラクのクルド人はトルコ大統領選の行方を不安げに見つめている。(AFP)
イラク北部、エルビルの市場を通行する人々。シリアとイラクのクルド人はトルコ大統領選の行方を不安げに見つめている。(AFP)
Short Url:
22 May 2023 03:05:46 GMT9
22 May 2023 03:05:46 GMT9

エルビル:一部のクルド人に対する地域の軍事活動が激化するとの懸念と経済的利益が対立する中、シリアとイラクに住むクルド人にとってトルコ大統領選挙の行方は気がかりだ。

少数派のクルド人の過激派組織とトルコ政府との対立は長期化しており、死者も出ているが、その影響はイラクとシリアの国境を越えて広がっている。

だが、特にイラク北部のクルド人自治区にとって、トルコは主要な経済パートナーでもある。トルコ国内を走るパイプラインを通じて長年石油を輸出しており、数十億ドル規模の貿易を実施しているのだ。

イラクの政治学者ムハンマド・イッズッディーン氏は「経済面で相互に恩恵がある」と言う。

トルコの大統領を20年務めているレジェップ・タイイップ・エルドアン氏は、30年間権力の座にいるイラク・クルディスタン地域大統領のネチルバンバルザーニ氏と重要な戦略的関係を築いてきた。

1回目の投票において、まだ票が集計されている最中にバルザーニ氏はトルコの首領(トルコ語で「reis」)であるエルドアン大統領に電話し、挑戦者のケマル・クルチダルオール氏に勝てるとの「確信と楽観」を伝えた。

しかし、イラク国内や国境を越えたシリア側の一部のクルド人は、エルドアン氏の勝利は地域的な軍事活動の活発化につながるのではないかと懸念している。

トルコ政府軍とトルコのクルド労働者党(PKK)過激派との戦闘は、数十年にわたってイラク・クルディスタン地域に影響を及ぼしている。険しい山岳地帯の同地域には両陣営が軍事基地を置いており、市民もしばしば戦火に巻き込まれている。

シリア北部では、長きにわたる内戦の混乱の中で「人民防衛部隊(YPG)」が半自治政府を確立し、対テロ同盟の一部として米国の支援を受けている。

しかしながら、トルコ政府はYPG(トルコとその主な西側同盟国はテロ組織に指定している)はPKKの延長線上にあると見なしており、軍事作戦を繰り返し実施している。

イラク・クルディスタン地域は紛争の影響を被りながらも近隣地域の恩恵を受け、2022年時点で推定120億ドル規模の貿易を実施している。

地元の事業者の多くも現状維持を望んでいる。

「エルドアンの大統領就任後、私たちは満足しています」。エルビルの市場で店を経営しているアフメド・クランジさんはそう語る。

「トルコとはたくさんの取引があり、経済状況も好転しています」

国境の向こう側にいるクルド人との連帯を示す意見も聞かれた。

アリ・コードルさん(30代男性)は、エルドアン氏の勝利は「トルコのクルド人のためにはならない」と語る。

トルコのクルド系有力政党である国民民主党は、政府によるクルド少数派迫害を非難し、クルチダルオール氏を支援している。

しかし、現職が十分なリードを得た1回目の投票が終わった今、大統領の対抗馬にとって唯一の慰めは、エルドアン氏を初めて決選投票に追い込んだことだ。

過去20年間にわたり、エルビルの指導者たちはエルドアン大統領と緊密な関係を築いてきた。ネチルバン・バルザーニ氏やいとこのマスルール・バルザーニ首相はアンカラを定期的に訪問している。

「クルディスタン政府は常に、世界の他地域への窓口であるトルコと良好な関係を築こうとしてきた。そうした密接な関係は経済的な基盤の上に築かれている」とイッズッディーン氏は言う。

クルディスタンにとって、イラク連邦政府の正式な許可がない状態でのトルコへの直接の石油輸出は、長年の間、経済的な命綱だった。

AFP

特に人気
オススメ

return to top