
カーミシュリー: 2014年以来、この地域の広大な範囲に恐怖をもたらしていた過激派組織のダーイシュが、シリア東部バグーズに保持していた最後の領土でついに敗北した2019年3月、世界は一斉に安堵のため息をついた。
ダーイシュの最後の砦をめぐる戦いは、同組織のいわゆるカリフ制の終わりを示した。最盛期には、カリフ制はシリアとイラクにまたがる、イギリスの面積に相当する地域を支配していた。
けれども、ダーイシュに対抗して犠牲の大きな地上作戦を率いた人々、シリア民主軍(SDF)にとって、戦いが終わりに程遠いことはすぐに明らかになった。
何千人もの外国人ダーイシュ戦闘員とその家族が、バグーズでの最後の戦闘中に捕らえられた。そして彼らは、シリア政府の力の及ばない、北部及び東部シリア自治行政区(AANES)にある刑務所に運ばれた。
これらのダーイシュ戦闘員は、何年もの間、法的に曖昧な状態にある。彼らの外国人としての地位と、AANES自体が非国家主体と見なされているという事実が、彼らの処遇についての正確な判断を困難にしたのである。
6月10日、AANES当局者は、拘束されている最大3,000人の外国人ダーイシュ関係者を裁くための法廷を設立し、独自の法的正義の道を追求すると発表した。
「この地域における(ダーイシュ)の危険性の高まりと成長の結果、これらの拘留者が裁判なしのまま長期間存在することは、地域と世界にとって負担と危険を意味するようになっています」とAANES外交部の弁護士で行政機関の一員であるハーリド・イブラヒム氏はアラブニュースに語った。
何年もの間、AANESは、ダーイシュとつながりのある個人の出身国への送還を進めることを公式方針としてきた。しかし、これらの国のいくつかは、国家安全保障上の懸念を理由にあげて自国民の引き取りに消極的である。
実際に、送還数は減少している。昨年、13か国がシリア北東部から515人の外国人を送還した。2023年の最初の半年間で、約105人の女性と子供が送還されている。
現地で紛争を監視しているロジャバ情報センターによると、2019年以来、ダーイシュ構成員と疑われた2,774人ほどの外国人が送還されている。それは、シリア北東部の刑務所と収容施設に今も約13,000人の外国人男性、女性、子供がいることを考えれば、ごく少数にすぎない。
ダーイシュの脅威については、AANESが何年にもわたり警告してきた。それをよそに、このテロリスト集団はシリア北東部ハサカにあるグワイラン刑務所で大規模な暴動を起こし、その脅威が依然として強大であることを明らかにした。
2022年1月、刑務所の門で自動車爆弾が連続的に爆発し、刑務所の塀の外ではダーイシュ工作員が看守に向けて発砲した。
2015年のダーイシュからの解放以来、この街で起こった最も激しい戦闘が1週間以上続いた後、およそ159人のSDFと4人の民間人、そして少なくとも345人の囚人が死亡した。囚人の多くは脱走した。
「刑務所には、最も残忍なダーイシュ戦闘員数千人が収容されています。これ以上彼らを留めておくことはできません。地域にとって、安全保障上の問題を引き起こすからです」と、AANES外交部のベドラン・チヤ・クルド共同議長は6月15日の記者会見で述べた。
SDFとグローバル連合は、2022年だけでも113件の対テロ作戦を実施しており、シリア北東部では260人のダーイシュ関係者逮捕につながっている、とクルド共同議長は述べた。
SDFメディアセンターによると、SDFは今年5月、12件の反ダーイシュ作戦を単独で行った。4件は、グローバル連合およびイラクのクルディスタンに拠点を置く対テロ集団と協力して実施し、結果としてテロリスト容疑者1人が死亡、21人が逮捕された。
「これは、ダーイシュが復活を目指し、より強くなって活動を再開しようとしている証拠です。私たちがそれを防がなければ、彼らが再び活発に動き始め、地域全体を脅かすようになるのは時間の問題です」とクルド共同議長は述べた。
予定されている裁判の目的は、ダーイシュの戦闘員を罰することや、彼らが脱走して戦場に再び加わる可能性を減らすことだけではない。
「それは犠牲者の権利のために、被害を受けた人々の権利のために、そして重い代償を払った人々の権利のために、重要なことです」とクルド共同議長は語った。
「この戦いで13,000人以上の殉教者を出すことになり、何千人もが負傷し、障害を負って退役軍人になりました。そうした人々のために正義を求めるのは重要なことです」
しかしクルド共同議長は、この正義の追求が、国際基準の遵守というAANESの望みを妨げるものではないと付け加えた。
「人々が拘留されて、5年近くが経とうとしています。裁判なしの拘留は違法であり、国際基準に準拠する行為ではありません」と彼は述べた。
裁判は「非常に透明で公正」なものになるが、詳細の多くは未発表のままである、とクルド共同議長は述べた。手続きを始める日程は決まっておらず、安全保障上の懸念から、裁判が行われる場所は公表されないことになっている。
拘留者の代理人を務める弁護士は、弁護のためにシリア北東部を訪問することが許される。しかし、この手続きの背後にあるロジスティクスはまだ説明されていない。また、弁護士のいない拘留者に対してAANESから弁護人が提供されるかどうかも不明だった。
さらに、戦闘任務に就いていなかった外国人女性たちが裁判にかけられるかどうかもはっきりしていない。ダーイシュ外国人拘留者の3分の2を女性と子供が占めている。それを考えると、手続きから女性を除外すれば、裁判にかけられる個人の数を大幅に減らすことになるだろう。
6月10日の発表直後に出された声明では、AANESは女性を起訴すると即座に明言はせず、代わりに彼女らを「犠牲者」とみなした。
しかし6月15日の記者会見では、クルド共同議長は、犯罪を犯したことを示唆する十分な証拠があれば一部の女性は裁判にかけられる可能性があると述べた。
一方で、AANESの憲法として機能する社会契約の下で違法であるため、死刑は検討されないということが明らかになった。
AANESには既に反テロ裁判制度があり、約8,000人のシリア国民を裁いている、とカーミシュリー人民防衛裁判所の検察官であるシパン・アーメド氏(安全上の理由により名前を変更)は2021年のインタビューでロジャバ情報センターに語った。
今後の裁判でどのような罰則が下されることになるのか、現在のところ正確に詳細は分かっていない。だがアーメド氏は、AANES法20-2014は特定の犯罪に刑罰を定めており、強姦には15年から20年、人身売買には10年から20年、殺人には15年から終身刑が下されると述べている。
ダーイシュへの加入に対する刑罰は現在、下層の役割を担っていた場合の1年から、指導者層に属していたり処刑命令を下していたりした場合の終身刑までさまざまである。
そのために、拘留者とAANES自体の状況が多くの法的課題を引き起こしている、と弁護士で国際法の専門家であるテミス・ツィマス氏はアラブニュースに語った。
「自治政府は国家ではなく、国際的に認められてもいません。不法に半離脱した主権国家の、事実上の一部を構成しているのです。そこには、事実上の支配領土での裁判の実施を正当化する、法的権限がありません」とツィマス氏は述べた。
AANESとシリア政府の間には正式な外交関係がない。そのため現在のところ、外国人拘留者をダマスカスに引き渡すための仕組みがないとクルド共同議長は述べた。
ツィマス氏は、そのような裁判が提起するさまざまな法的問題の解決策として、国際的な特別法廷が有効になりうると考えているが、クルド共同議長によれば、AANESは外国からも国際的な法的機関からも、援助の申し出を受けていないという。
大方の予想とは裏腹に、非国家主体がこのように独自に外国人を裁判にかけることは、国際法の歴史において前例がないわけではない。ロシアの支援を受けたドネツクとルハンスクの未承認共和国が実施した裁判は、そのような一例である。
国際公法の修士号を持つ法律専門家のカテリーナ・アシマコプロウ氏は、他のこのような事例がAANES法廷に前例を与えるかもしれず、その非公式な地位は、最初に懸念されたような障害ではないかもしれない、とアラブニュースに語った。
アシマコプロウ氏は、スウェーデンの裁判所が、シリア政権兵士の処刑に関与したことを示す動画が見つかった後、元シリア反政府戦闘員に国際法違反で有罪判決を下した2017年の事例に言及した。
オマル・ハイサン・サハン被告は、シリア兵士を裁き、判決を下したのは反対派の自由シリア軍(FSA)が設立した裁判所であるという抗弁を試みた。
裁判所は最終的にサハン氏を有罪としたが、同時に、非国家主体であるFSAに独自の裁判所の設置が許可されていたことも容認した。
アシマコプロウ氏によると、スリランカのタミル・イーラム解放のトラ、コンゴ民主共和国のコンゴ解放運動、エルサルバドルのファラブンド・マルティ民族解放戦線といった他の非国家武装集団も、すべて独自の裁判制度の下で裁判を実施しているという。
さらに彼女は、2018年、フランス政府がフランスのダーイシュ構成員を自国の法廷で裁くつもりはなく、代わりにAANESによる裁きを希望すると宣言したことを付け加えた。
「これは実際、非常に不明瞭な問題です」と彼女はアラブニュースに語った。「国家中心主義的な見方では、もちろん、非国家武装集団に裁判所を設立する法的権限はありません」
「しかし、国際的な慣行と法理学は、そのような裁判所が実際に設立された場合、公正な裁判のいわゆる基本的保証を提供したかどうかに応じてその決定が評価されることを示しています」