Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

シリア女性たちは、地震後の支援活動を主導し社会的タブーを打ち破っている

人道団体「Space of Peace」は避難民の女性向けにサービスを提供している。(提供写真)
人道団体「Space of Peace」は避難民の女性向けにサービスを提供している。(提供写真)
Short Url:
12 Jul 2023 02:07:56 GMT9
12 Jul 2023 02:07:56 GMT9
  • シリア北西部への人道援助を提供する上で重要な役割を果たしているにもかかわらず、女性たちは依然として社会的苦境に立たされている
  • シリアの女性人道支援活動家たちは、和平プロセスや会議における代表権の欠如を非難する

アナン・テロ

ロンドン:シリア北西部の女性たちは、10年以上におよぶ戦争で荒廃し、今年2月には致命的な地震で壊滅的な被害を受けた地域で、しばしば自らの安全を脅かされながらも、従来の役割の枠を超えて人道援助を行っている。

英国に本拠を置く慈善団体「Action for Humanity」が近頃発表した報告書によると、これら女性たちの活動はここ数か月で注目を集めており、その過程で人道活動への女性たちの参画に対する社会的態度が変化しているという。

国連のデータによると、2月6日にシリア北部とトルコ南部の大部分を壊滅させた2度の地震により、6,000人のシリア人が死亡し、約500万人が家を失った。また、そこはシリアの長期にわたる内戦で、すでに大規模な破壊に見舞われた地域でもある。

Space of Peaceは、子ども向けの教育サービスを提供している。(提供写真)

「地震が発生したとき、人々はキャンプや野外に避難したため、私たちはキャンプに急いで向かいました」と、女性が設立し、シリア北西部イドリブ県に拠点を置く慈善団体「Souryana Organization」のダイアナ・アル・アリ代表は語った。

この団体は、障害のある人向けの失禁予防製品、さらには生理用品が入った女性向けの「尊厳バスケット」など、地震の被害を受けたコミュニティーにさまざまな種類の援助物資を届けてきた。

Action for Humanityで活動するウム・イッサムさんは、非常時のメンタルヘルスケアを含む幅広い援助の提供を手伝ってきたという。

「乳児や子どもたちにミルク、おむつ、水、衣類などの必需品を提供し、一時避難所での暖房手段も提供しました」と彼女はアラブニュースに語った。

Action for Humanityによれば、このような女性たちは、地震で最も大きな被害を受けた地域に近かったことから、「救助活動、人道支援、疎外されたコミュニティーの特定ニーズへの対応など、重要な役割を果たしてきた」という。

「Recognizing Resilience: Women’s Leadership in Northwest Syria’s Earthquake Response and Beyond(立ち直る力の認識:シリア北西部の地震対応とその後における女性のリーダーシップ)」と題されたこの慈善団体の報告書は、6月14日と15日に開催された、シリアに対する今年のEUの取り組みを約束する主要イベント「第7回ブリュッセル会合」を控えた6月7日に発表された。

近年、女性の参画が進み、女性の全体的な地位が著しく向上しているにもかかわらず、内戦で荒廃したシリア北西部は依然として女性や少女にとって厳しい状況にあり、今でも多くが数多くの障害にさらされている。援助に携わる者は身をもってこのことを体験している。

「一部の男性(コミュニティーのメンバー)は、女性は家事労働だけをしなければならないと言い、私たちの活動であったり、家族や男性の中に私たちが存在することに異議を唱えました。しかし、私もチームも決して引き下がりませんでした」とアル・アリさんは語った。

シリアとトルコで活動する人道団体「Space of Peace」が運営するリーダー研修プログラム。(提供写真)

ウム・イッサムさんは、彼女のコミュニティーの一部のグループは「女性の積極的な役割を否定」し、女性たちの努力を過小評価し、さらには援助分配メカニズムの管理を女性たちから奪おうとしていると語った。そのようなグループによる、女性の活動の妨害を目的とした身体的暴力事件も発生している。

「援助物資の配布中に(男たちに)襲われました」と地元の人道支援活動家サラさんはいう。彼女の安全を守るために名前は仮名となっている。

「男たちは、私たちがそこで何をしているのか、なぜそこに立っているのか、援助物資の配布でどのような事業を行っているのか、なぜその仕事を男性がやらないのかと尋ねました。」

「しかし、しばらくすると、その人たちは私たちに敬意を払い始め、手助けしてくれるようになりました。」

アル・アリさんは、チームが活動する地域では「女性が尊重されておらず」、「女性の参画が非常に少ない」ことを嘆いた。しかし、一見乗り越えられないような困難や障害にも落胆するどころか、彼女とその同僚はさらに「前に進み続ける決意」を強めたと彼女は語った。

「人々を助けたいと思ったのは、彼らが私たちを必要としていたからであり、INGO(国際的な非政府組織)は私たちを信頼していたので、私たちとコミュニケーションをとってくれました。そして、私たちは彼らを大いに助けました」と彼女は付け加えた。

「キャンプで私たちができることを証明し、目に見える成果が得られると、男性たちは私たちの手伝いやサポートをし始めました。」

報告によると、地震後の数か月間、自殺率とジェンダーに基づく暴力事件が増加した。サラさんは、避難民キャンプの内外で家を失った女性や少女の自殺が蔓延していると述べた。避難民キャンプは過密状態で、数家族が狭く限られた空間で同居を余儀なくされ、すでに悲惨な経済的・人道的状況をさらに悪化させている。

人道団体「Space of Peace」で働くダイアナさんは、キャンプで援助を行っている。(提供写真)

シリアとトルコで活動する人道団体「Space of Peace」で働くメイスーンさんによると、早婚は震災後のジェンダーに基づく暴力の「最も顕著な」形態となっているという。

早婚の増加は、地震で家や公的書類を失い、学校を中退する若者が増えたことが部分的に影響していると、彼女はアラブニュースに語った。

6月13日に開催されたAction for Humanityの仮想ラウンドテーブル会議で講演したメイスーンさんは、地震後の援助はイドリブ県アリハ地区にしか届かなかったと話した。この地区は彼女の拠点であり、現地の女性たちの手助けのおかげであった。さらに、人道活動への女性の関与が増えているため、ジェンダーに基づく暴力に対処する目的で設計された教育プログラムが、より受け入れられるようになった、あるいは少なくとも容認されるようになったと付け加えた。

「5月に私たちのチームが早婚のリスクと影響について実施したキャンペーンには、少年少女を含む男女277人の参加者が集まりました。社会はいま、リソースを引き付ける女性の能力を認めています」と彼女は語った。

Action for Humanityの調査によると、シリア北西部で指導的役割への女性の進出を妨げている主な障害には、経済的制約、不十分なインフラ、社会的保護政策の全般的な崩壊などが挙げられる。これら要素は、シリア和平プロセスへの女性の参画をも妨げている。

シリアのイドリブ市北部サルマダ地区にある、トルコ赤新月社が運営する避難民キャンプ。(AFP / ファイル)

ヨルダン、シリア、英国で難民や国内避難民を支援する女性主導の慈善団体「Souriyat Across Borders」の共同創設者で最高運営責任者(CEO)を務めるサマラ・アタッシさんは、女性は和平交渉において重要な役割を担っており、その「声に耳を傾ける必要がある」と語った。

そして、「女性は平和構築の取り組みに独自の視点と経験を反映させるので、その参画はより包括的で持続可能な成果につながる可能性があります」と付け加えた。

「女性が和平交渉に参加すると、得られる合意は疎外されたグループを含む、社会のすべてのメンバーのニーズに応える可能性が高くなることが研究からわかっています。」

「平和構築への女性の参画は、紛争を防ぐとともに、紛争後の社会における社会的結束の促進を手助けする可能性もあります。」

Action for Humanityで活動するウム・イッサムさんは、自国の将来について話し合う国際会議において、シリア人女性が「少なくとも50パーセントの代表を占める」ことを求めた。

一方、ActionAid Arab Regionでディレクターを務めるラチャ・ナスレディンさんは、国際社会に対し「シリア北西部の現地の女性主導団体に資金が確実に届くように」と望んでいる。

彼女は、「人道的対応およびプログラムの設計と実施への女性参画」の促進、ならびに「地域および国際レベルでの参加型意思決定プロセス」の確保を唱道している。

人道団体「Space of Peace」はシリアとトルコで活動している。(提供写真)

さらに、国際社会は「女性のリーダーシップ開発に投資し、能力構築の支援を提供する」プログラムに焦点を当てる必要があると、彼女はアラブニュースに語った。

「もう一つの重要な側面は、経済的制約、家族の世話をする責任、ジェンダーに基づく暴力、健康問題など、女性の全面的な参加を妨げる障壁に対処するために利用できる資金を増やし、これらの問題の解決が確実に優先されるようにすることです」 とナスレディンさんは話した。

今月、第7回ブリュッセル会合で支援国が行った約束についてコメントした彼女は、国際社会は「責任を回避し、シリアが危機から回復へ移行する助けとなる資金提供を約束しなかった」と述べた。

さらに、次のように付け加えた。「過去12年間にわたり、ジェンダーに基づく暴力やその他の不平等は、悲しいことにシリア全土の女性と少女の特徴を決定し続けてきました。史上最悪の生活費危機により、女性と少女がさらに大きなリスクにさらされるなか、状況は今後数か月から数年でさらに悪化するだけでしょう。」

「それにも関わらず、女性と少女のことはどの約束にもほとんど取り上げられていません。」

特に人気
オススメ

return to top