
バスラ:アル・シラジ・モスクは3世紀の間、その風化したレンガのミナレットや青い陶器のタイルがはめ込まれたピナクルによって、イラク南部の都市バスラを特徴づける建築物となっていた。
近年は、石油資源が豊富だが顧みられていないこの都市の数少ない観光地の一つだった。ただ、このモスクのミナレットが道路に張り出して交通の妨げになっているという苦情が地元住民から上がっていた。
14日早朝、高さ11メートル(33フィート)のこのミナレットは、バスラ県知事の立ち会いのもとで取り壊された。これに対し、イラクの文化遺産の保全を支持する人々がソーシャルメディア上で一斉に反発した。
6000年以上前から複数の文明が興亡してきたイラクにある文化遺産は、2003年の米国による侵略の前後数十年間にわたる紛争中の略奪や損害によって大きな打撃を受けてきた。なかでも最も悪名高いのは、過激派組織ダーイシュがイラク北部でイスラム教の聖廟を含む多数の古代遺跡を破壊したことだ。これに対してはイラク国内外から怒りの声が上がった。
近年になって情勢が比較的平穏になったイラクでは考古学が復活している。盗まれていた遺物が多数返還されたほか、モスルのアル・ヌーリ・モスクなどダーイシュによって破壊されていた文化遺産も、国が国際的な資金支援を訴えたことによって修復が実現した。
「しかし今回は、我々の遺産が政府当局による行動で破壊された」と、イラクのアル・カーディシーヤ大学のジャファール・ジョテリ助教(地質考古学)は言う。
シラジ・モスクはミナレットと共に1727年に建造された。今回、モスク自体は取り壊しの対象とならなかった。
バスラ県のアサード・アル・エイダニ知事は公式声明の中で、地元当局はイラクのスンニ派基金事務所からミナレット取り壊しの許可を得ていたと述べた。また、モスク全体を現代的でより良いデザインのものに建て替える計画を発表した。
同知事は、バスラ県広報室の公式フェイスブックページに投稿された動画の中で次のように語った。「歴史的な建築だと言う人もいるかもしれないが、道路の真ん中に張り出していたため、公共の利益のために道路を拡張するべく取り壊した」
県知事室はコメントの要請に応じなかった。
AP