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湾岸諸国は医療革命をリードする

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04 Dec 2023 05:12:30 GMT9
04 Dec 2023 05:12:30 GMT9

中東諸国では、医療産業の再構築によって医療制度の整備が大きく進んだ国がある一方で、遅れをとっている国もある。これらの状況に対し、進歩や課題、潜在的な機会を検証することが重要なだけでなく、中東全域の医療制度の質をさらに向上させる方法を特定することもまた、重要である。

どの国でも、生活の質の中核的な尺度のひとつは医療制度の効率性である。医療制度は人々の幸福と健康を向上させる上で重要な役割を果たしている。

国の医療システムを評価するための、さまざまなパラメーターが存在する。例えば、患者本位であるかどうか、患者の価値観、ニーズ、優先順位、嗜好を考慮に入れているかどうか、患者の満足度はどうか、医療サービスがすべての人に利用しやすいかどうか、つまり、所得の低い人々や社会経済的に低い階層の人々でも質の高い医療を受けられるかどうか、などがある。

国によっては、都市部の人々は質の高い医療を受けられる一方、農村部や僻地に住む人々は医療施設へのアクセスが困難な場合がある。その他、医療サービスにかかる費用、薬へのアクセス、患者が治療を受けるまでの平均的な待ち時間、その国における医師と患者の比率、医療スタッフが適切な訓練を受けているかどうか、その国が堅牢な医療研究センターに投資し、最新の科学技術革新に適応し、活用しているかどうかなども考慮すべき要素である。

湾岸諸国、特にサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、バーレーンは、医療制度に関して大きな進歩を遂げている。

この進歩の結果、病院や初期医療センターの増加、医療へのアクセスの改善、平均寿命の延長、医療の質の向上、医療インフラの改善、伝染病の発生率の減少、乳幼児および母親の死亡率の低下、患者が緊急医療を受けるまでの待ち時間の短縮などの効果が得られた。

たとえばサウジアラビアでは、患者の90%以上が医療施設に到着してから4時間以内に救急および緊急医療を受けている。2020年に開始されたSEHAバーチャル病院は世界最大規模であり、130の病院と連携した医療施設をサポートするため、最新技術を駆使している。2019年、王国は国民皆保険制度を導入し、すべての国民に無料で医療を提供し始めた。

サウジアラビアはまた、2022年に保健セクター変革プログラムを開始し、国の医療制度を抜本的に見直した。これにより、公衆衛生が改善され、国民だけでなく居住者や訪問者の医療サービスへのアクセスが拡大した。プログラムの開始以来、王国の医療従事者数は65%増加し、病院やプライマリケアサービスの満足度も上昇している。

UAEの医療部門は世界でも最高レベルに位置づけられている。医師と患者の比率も良好であり、UAEの平均寿命は欧米並みの77.8歳まで伸び、妊産婦死亡率は出生10万人に3人まで低下した。

サウジアラビアは2022年に約360億ドルを医療と社会開発に投じたと報告されている。

マジッド・ラフィザデ博士

これらの国々が大きく前進した背景にはいくつかの重要な理由があり、それは同地域の他の国々が医療部門を改善する際に応用することができる。第一に、これらの国々はいずれも持続可能な開発のための大きなビジョン――『サウジアラビア:ビジョン2030』、『クウェート:ビジョン2035』、『バーレーン:ビジョン2030』、『UAE:ビジョン2030』――を採択しており、その中で国民の健康と生活の質の向上に大きな重点を置いている。

第二に、医療制度に多額の投資を行うことだ。これは、社会を守り、公平な未来を創造し、経済を活性化させるために不可欠である。医療制度は、消費という観点で見てはいけない。これらの国々で医療が進歩したのは、同分野への支出と資金が増加したおかげで、医療産業を再構築し、医療システムのインフラを強化し、高品質で利用しやすい医療セクターを提供することができたからである。

これらの国々は、医療制度の向上を優先課題としており、予算のかなりの部分を、価値に基づく医療制度の開発と強化に割り当てられている。例えば、サウジアラビアは2022年に約360億ドルを医療と社会開発に投じたと報告されており、これは国家予算の14.4%に相当する。

王国はまた、医療インフラのさらなる発展のために、650億ドル以上の投資を計画している。

これらの国々が進歩した第三の理由は、技術革新、民営化、研究・訓練、医療の進展に重点を置くようになったことだ。ジェッダ商工会議所の医療評議会議長、サメール・アブ・ガザレ氏は次のように指摘する。「規制機関と運営機関の両方の役割を担っていたサウジアラビア保健省は、『ビジョン2030』を通じて、単なる規制機関として、徐々に民間部門に運営を委ねるという大胆な一歩を踏み出した」

デジタル化が将来のヘルスケアの中核的な柱になることを指摘しておくことは重要だろう。だからこそ、医療分野におけるイノベーションを奨励し、ビッグデータや人工知能を含む新技術および新たに発生しつつある技術に投資することが重要なのだ。サウジ保健省が今月、新技術によるデジタルトランスフォーメーションを進めるため、医療技術大手の「ベクトン・ディッキンソン」(Becton Dickinson)と覚書を交わしたのは、その正しい方向への一歩だ。

要約すると、湾岸諸国、特にサウジアラビアとUAEは、その先見的な政策、医療分野への多額の投資、国民の健康と幸福の重視、新興技術とデジタル化の活用によって、医療制度において大きな進歩を遂げているのだ。

  • マジッド・ラフィザデ博士は、ハーバード大学で学んだイラン系アメリカ人の政治学者である。 X: @Dr_Rafizadeh
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