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消費者行動がデータ悪用防止に重要な役割を果たす

データ漏洩とは、手っ取り早い儲けのために、電話番号が盗まれ、共有され、販売され、さらには取引されることである。(ロイター)
データ漏洩とは、手っ取り早い儲けのために、電話番号が盗まれ、共有され、販売され、さらには取引されることである。(ロイター)
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08 Jan 2024 01:01:01 GMT9
08 Jan 2024 01:01:01 GMT9

迷惑な電話営業を避けられる人はほとんどいない。固定電話の場合は発信者番号通知をうまく使ってかわせたとしても、非通知の携帯電話に出てしまうと、不動産取引への関心の度合いを尋ねられたり、さらに運が悪ければ、最近はびこるオンライン株取引の茶番劇のひとつを宣伝されたりするかもしれない。

このような迷惑体験の背後にあるのは、組織的なデータ漏洩であり、手っ取り早く儲けるために、電話番号が盗まれ、共有され、販売され、さらには取引までされている。これはおそらく、データの価値の最悪の現れであり、その悪用の最も明白な例だ。

幸いなことに、データの利用は我々の生活に深く有益な効果をもたらすこともある。例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの最中に、不確実性が重く漂い、個人や企業が前例のない困難に直面したとき、データ主導の回転軸によって状況が一変した。

データを使って感染率を追跡し、地理的なホットスポットを特定することで、より効果的な政府ガイドラインとそれに準拠した消費者行動へとつながった。これは、データ主導の意思決定が、逆境に直面したときに流れを変えるために役立つことを思い出させる事例だ。

この両極端なデータ利用の間に、平均的なデータ消費者やエンドユーザーが経験する多くのことがある。企業は「ビッグデータ」と呼ぶにふさわしい、大量・高速・多様な情報資産を中心にビジネスを展開している。

「Big Data Means Big Business(ビッグデータはビッグビジネスを意味する)」と題されたガートナーの報告書は、ここ数十年で起こった変革を「30年前の一流企業は、利用可能な物理的資産を最大限に活用する企業であったが、現在の一流企業は、利用可能な情報資産を最大限に活用する企業である」と要約している。

一方、人工知能の開発が近年急速に進んでいることは、企業が自社や他者のデータを活用して業務を強化する上で、時に大きな課題に直面していることを意味する。デジタル・プラットフォームやデータ・プラットフォームなどの限られた技術インフラでは、まだその課題を解決することができないという者もいる。

しかし、ほとんどの場合、実証済みの優れたAI活用法があまりにも多くあるため、組織はどのオプションに重点を置くべきかを決めかねている。適切な対応を策定しようとしても、選択肢が多すぎるという問題と、常に流動的な状態に直面している。

データの重要な役割とその将来の利用に関しては、いくつかの方法で説明されている。IPSOSの報告書は、データを 「技術的冷戦の通貨」と表現している。最近、世界中ではデータ保護の取り組みが盛んになり、消費者がどのように追跡されるかについての透明性は高まり、選択肢も増えたが、その実態はまだ不完全であると述べている。

「クッキーのない世界に近づくにつれ、マーケティング担当者とデータ企業は、通常どおりの業務を維持するために、自社のサービスを位置づけ、進化させるだろう」と同報告書は付け足している。

簡単に言えば、消費者データとは、消費者がオンライン世界を移動する際に残すデジタルの足跡である。つまり、消費者のプライバシーを守ることは、データの悪用やプライバシーの侵害から個人を守るための規制上の義務であることを意味する。しかし、だからといってオンライン活動における消費者の行動や倫理的配慮に対する責任が免除されるわけではない。

急速な変化の中で、消費者は自分自身を単なるデータに還元してしまわないような対策を取ることが有益であろう。

エテシャム・シャヒード

世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2023』は、より高度で広範なデータセット分析が、「合法的な法的メカニズムを通じて個人情報の悪用を可能にし、たとえ十分に規制された民主的な体制であっても、個人のデジタル主権とプライバシー権を弱める」ということを認めている。

そのため、消費者自身には、デジタル世界において生成・共有するデータに対する認識をはじめ、多くの責任が課される。

良き消費者は、ブラウジング、ソーシャル・メディア上でのやりとり、オンラインでの購入など、自分のオンライン上の行動がデジタルの足跡を残すことを理解している。そして、どのようなタイプのデータを誰と共有するのかを意識する必要がある。

このような現実を認識することで、我々はより責任ある消費者となることができる。これは、利用するオンラインプラットフォームやサービスのプライバシー設定を見直し、調整する時間を取るべきことを意味する。また、これらの設定が自分のデータ露出にどのような影響を与えるかを理解し、個人情報を保護するための適切な措置を取るよう努めるべきである。

あるレベルでは、この問題は、データを共有する際の十分な情報に基づいた意思決定に関することである。これには、例えば、情報の共有に同意する前に、プライバシーポリシー、利用規約、同意書を読んで理解することが含まれる。

責任ある消費者としての行動には、データの最小化も含まれる。言い換えるならばば、特定の取引やサービスに厳密に必要な情報のみを共有し、個人情報の過剰な共有を避けるということだ。

現代において良き消費者となるためには、ある程度のレベルのデジタルリテラシーが必要である。消費者は、よくあるオンライン詐欺やフィッシングを見分け、それらから身を守る方法を知っておく必要がある。

プライバシーの問題にとどまらず、責任ある消費者は、倫理的なデータの取り扱いや持続可能性を優先する企業やプラットフォームを支援するなど、オンライン活動における倫理的側面も考慮すべきかもしれない。

ビッグデータがあるところで、人工知能が大きく遅れをとる可能性はあるのだろうか。AI技術は、データ消費に様々な形で大きな影響を与えている。AIは、データの消費方法を決定し、データ消費のパターンに影響を及ぼす。

AIアルゴリズムは現在、ユーザーの行動や嗜好を含む大量のデータを分析し、コンテンツやおすすめをパーソナライズすることができる。この技術はデジタル広告においてユーザーデータを分析し、ターゲットを絞った広告を配信するために使用されており、またAI搭載のツールは組織が大規模なデータセットをより効率的に分析するのに役立っている。さらに、AIを活用した予測モデルは、過去のデータを利用して将来の消費者行動やトレンドを予測することができる。

AIが進歩し続けるにつれて、データ消費パターンへの影響力は増大し、個人と組織のデータとの関わり方や活用の方法をさらに形作っていくだろう。このような急速な変化の中で、消費者は自らを単なるデータに還元してしまわないような対策を取ることが有益であろう。

  • エテシャム・シャヒード氏はアラブ首長国連邦を拠点とするインド人編集者・研究者である。X(旧Twitter):@ e2sham
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