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英国は和平プロセス行き詰まりの打破を先導するのか

2024年2月3日。イスラエルとハマスの紛争が続くガザで、廃墟と化した建物が立ち並ぶ。(ロイター)
2024年2月3日。イスラエルとハマスの紛争が続くガザで、廃墟と化した建物が立ち並ぶ。(ロイター)
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04 Feb 2024 08:02:53 GMT9
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選挙で選ばれる必要性から解放され、さらには次の総選挙で保守党政権が誕生する可能性は低いと英国のデイビッド・キャメロン外相が認識したことは、彼によるイスラエルとパレスチナの間の紛争に対するアプローチにおいて大いに良い結果をもたらしたのかもしれない。

戦争が拡大する可能性に直面している中東の危険な不安定さを考えれば、この地域が英国の外交政策における優先事項の上位に来ること自体は予想されていた。しかし、キャメロン氏は外相として新たな政治的役割を担う中で、イスラエルとパレスチナの紛争解決に向けた大胆な取り組みを主導する用意があるようだ。同様に重要なこととして、少なくとも現時点では、それは米国の立場とは一線を画する姿勢を見せている。

まず、キャメロン氏はイスラエルとパレスチナを頻繁に訪問するようになり、この地域における英国のプレゼンスを高めている。それだけではない。彼は、二国家解決への一般的で抽象的な支持という常套手段から逸脱した画期的な演説を行い、注目を集めた。さらに彼は、パレスチナの人々が実際にこの解決策を達成するためには、「不可逆的な進展」を示す必要があると述べた。

より重要なことに、彼はこう語った。「その際、我々は同盟国と共に、国連を含めたパレスチナ国家の承認の問題を検討することになる」

彼は言及した同盟国のひとつにアメリカ合衆国を含めていたのだろうか? 外交的な観点から言えば、この演説はまさに爆弾発言であった。当然ながら、キャメロン氏は、英国の中東政策に留まらず、ほかの国々も政策転換を迫られることになるであろう「大きな変化」の反応を伺うために、親英的で理解のある保守派中東評議会(CMEC)を演説の場として選んだのだ。

米国の内政・外交政策の中心的な問題において――特に選挙期間中は――英国が米国と異なる立場をとることは稀である、という事実を踏まえれば、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とその極右連立政権に苛立つバイデン政権が、イスラエルとパレスチナの和平合意達成の大きな障害のひとつを取り除く可能性のある政策を英国が進めることに対して、少なくとも黙認していることを示唆しているのかもしれない。

一方、もしこの政策に対する米国の支持がないのだとしたら――その可能性はある――、それは、英国と欧州の同盟国の一部が、中東地域における自国の利益を損ない、自国の社会に広範囲に及ぶ社会的・政治的影響を引き起こしているこの終わりの見えない紛争に終止符を打つことが、自国にとって最善の利益であると認識していることを意味するかもしれない。

近年、英国は中東に関する包括的な戦略を策定することを怠ってきた。最近まで、現政権がこの地域を重視していなかったことは、インド太平洋への傾倒によって示されていた。彼らはイスラエル・パレスチナ紛争を含む、中東の不安定化する政治的潮流を無視し、主に貿易に集中していた。

例えば、英国は中東地域の紛争予防のための予算を9000万ポンド削減した。中東の多くの国は、英国軍が提供する訓練をいまだに高く評価しているにもかかわらず、この地域の大半は、英国の外交的影響力は弱体化しているとみている。

政治的・経済関係と社会政治的影響を区別しようとする試みは、最初から明らかに人為的なものであった。

デイビッド・キャメロン氏は外相として新たな政治的役割を担う中で、イスラエルとパレスチナの紛争解決に向けた大胆な取り組みを主導する用意があるようだ。

ヨシ・メケルバーグ

英国は中国とインドの合計よりも中東への輸出が多いこと、湾岸諸国は英国製品にとって第6位の市場であること、そして海外投資の数字を良好な状態に保つためには中東地域から英国への投資が不可欠であることを考えると、同地域との政治的発展は英国にとって単に無視できないほど重要である。

しかし、経済的な側面は、英国における中東の重要性の一面にすぎない。その近接性と人口動態は、過激主義を抑制し、エネルギー供給を守り、イランの冒険主義を封じ込める努力など、政治的・安全保障上の考慮事項にも大きく影響する。

大国である英国が中東・北アフリカ地域の優先順位を縮小または格下げするなどという考えはそもそも無責任であり、10月7日以降の出来事は現実を突きつけたと言えるだろう。

確かに、理解しがたい理由ではあるが、英国は植民地主義の歴史を持ち、イスラエル・パレスチナ紛争を含む中東の根深い問題に責任を負っているにもかかわらず、米国よりも健全で公平なアプローチを取っているという評価を受けている。これは、英国が中東地域の複雑な事情をよりよく理解していることを反映している。

最も、英国が世界における影響力を減退させている原因の一部は、自国の政策によるものだという事実を否定することはできない。まず、歴代の英国政府は「冷戦終結後の利益」を過大評価し、国家の軍事力に大幅な削減を行った。その結果、英国の軍事力は、必要な資源を欠いたまま、国の世界的なコミットメントを果たそうとして過度に負担がかかっている。

第二に、不適切なブレグジットは引き続き世界の舞台における英国の影響力を損なっている。EUからの離脱と軍事力の削減は、英国が他国との関連性を維持しようとする試みにおいて米国の軍事力と外交力に過度に依存することにつながり、これは諸刃の剣であることが証明された。

パレスチナ国家承認の先駆けとなることは、イスラエル・パレスチナ和平プロセスを前進させる上で画期的な役割を果たし、ひいては地域の安定にも貢献する可能性がある。和平交渉開始前にパレスチナを国家として承認することの重要性は、国際的に承認された国家であるイスラエルと、パレスチナ人民の非国家代表であるパレスチナ解放機構(PLO)との間の協議における異常性と非対称性の問題を是正するという事実にある。

国際社会が純粋に二国家解決を支持するのであれば、ヨルダン川西岸地区とガザ地区のパレスチナ国家を承認することは、正しい方向への一歩となるだろう。そうすれば、国境、エルサレム、難民、入植地といった具体的な取り決めをめぐる交渉が展開できるようになり、「パレスチナ国家の承認」という議題が和平合意のあり方についてイスラエルの一方的な決定の交渉カードとなることはなくなるだろう。

同時に、パレスチナの交渉担当者は、イスラエルが妥協できる範囲とできない範囲について、現実的かつ実務的な見方を持つ必要がある。

キャメロン氏の大胆な声明が、公式の英国政策となった場合(その保証はないが)、それはイスラエル・パレスチナ紛争の解決に向けた英国の貴重な貢献であることが証明されるだけでなく、世界政治における最も複雑でこれまで難航してきた問題のひとつに取り組む努力において主導的な役割を果たすことになり、ひいては英国政策が世界政治の中心に戻ることを宣言することになるだろう。

選挙イヤーを迎えた米国が英国の動きに追随するか、あるいは英国にパレスチナを独立国家として承認するよう促し、新たな和平機運を醸成するかどうかは、見守る必要がある。

  • ヨシ・メケルバーグ氏は国際関係学の教授であり、チャタムハウスの中東・北アフリカプログラムでアソシエイトフェローを務めている。
    X:YMekelberg
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