
フランスのエマニュエル・マクロン大統領がほんの数週間でベイルートを2回訪れたが、レバノンの状況を説明することはたいへんな苦痛を伴う。銀行システムの崩壊によって、レバノンのほとんどの世帯は破綻して貧困が蔓延し、汚職は広範囲に及んでいる。
ベイルート港で8月4日に発生した大規模な爆発によって、首都の公共インフラの多くが破壊され、ほとんどの公共サービスが機能不全に陥り、この災難に拍車をかけた。国民は悲劇の終末的な絶望感を抱えている。このような状況は、内戦時代と比較しても、レバノンの歴史において前例のないものとなっている。
絶望的な状況では現実がなかなか伝わらないが、主に3つのポイントに要約することができる:
私たちはレバノン人の絶望、さらにはその多くが、レバノンには自力で対処する手段がないと考えていることを理解している。しかし、悲観に暮れるのではなく、プロジェクトを立案・実践すれば、成功する可能性は十分にあると私は考えている。そのプロジェクトには、主に3つの要素を含める必要がある:
このようなプロジェクトは非現実的であると見なされるかもしれない。おそらく現状では、関係する政治勢力が協力して、この道を進むことができるという希望はほとんどないであろう。むしろ悲しいかな、人々は国がある種「ソマリア化」に向けて緩やかに進んでいると考えており、そうなると外国から支援された新たな内戦への序曲となる可能性がある。
それでも、前述の3つの未知の変数を駆使して、この恐ろしい図式に立ち向かわない限り、レバノンに将来的な可能性はない。1つは経済と金融、もう1つは政治と制度、そして最後は安全保障である。レバノンはおそらく自国のみでそれを行うことはできず、それが課題となる。
我が国(フランス)のジャン=イヴ・ル・ドリアン外相が、レバノン国民に向けて「私たちが皆さんのことを助ける手助けをしてください」と言ったのは間違いではなかった。しかし現在、この危機からの回復は、国際社会の助けを借りてのみ成就できる状況となっている。レバノンには、「信頼できる第三国」と表現できる国外パートナーの政治的ならびに友好的な支援が必要である。言い換えれば、信頼できる第三国にレバノンが正しい決定をする手助けを任せるということである。
今も昔も、レバノンはフランスの支援を頼りにすることができる。私たちは、大胆かつ勇敢なフランスのイニシアチブを歓迎すべきである
エルヴェ・ド・シャレット
これには二重の構造が必要となる。まず、主要大国は提案されたアプローチを奨励およびサポートし、次に地域の国々がプロジェクトの開発に関与する必要があるが、そうするには必然的に、彼らの多様な懸念を考慮する必要がある。
それは、レバノンを信託統治下に置くことではなく、仮にそうしたところで適切な解決策にはならない。むしろ、それはレバノン国外で仲介された、レバノン人が主体となった調停である。そうすることで、国内の政治勢力がレバノンの新しい形での再開を可能にする正しい妥協点を見つける手助けとなり、そしてこれは地域の主要国によって認識、さらには保証される必要がある。
今も昔も、レバノンはフランスの支援を頼りにすることができる。私たちは、マクロン大統領がすでに講じた大胆かつ勇敢なイニシアチブを歓迎すべきである。ゆえに我が国は、私が提案する国際調停を担う最適な立場にある。先例として、1996年にフランスは、非常に困難な状況下にあったレバノンで、イニシアチブに取り組む能力を示している。2020年もそうすべきではないのか?
エルヴェ・ド・シャレットは、1986-1988年、1993-1995年、1995-1997年と、フランスの外務大臣を3度務めた。1989年から2014年まではサン=フロラン=ル=ヴィエイユの市長を務め、1988年から2012年まではメーヌ=エ=ロワールでMPを務めた。