
ダウド・クタブ
アンマン(ヨルダン)―イランの主力核施設であるンナタンズ核研究プラントが11日、イスラエルのサイバー攻撃とされる破壊行為により機能停止に陥った。
今回の攻撃は、イランが同国中央部エスファハーン州の砂漠地帯で、新たな最先端のウラン濃縮遠心分離施設を稼働させた1日後に行われた。
プラントは、壊滅的な電源喪失の被害を受けた。イランの核担当トップのアリー・アクバル・サーレヒー氏は、今回の攻撃を“核テロ”であるとしている。
同氏は今回の攻撃について、「我が国の産業的、政治的進展に敵対する勢力が、繁栄を続ける核関連産業の発展を阻止しようとして実行した」と述べた。
イラン高官は、攻撃によるけが人はなく、放射性物質の漏洩も起きなかったと述べた。
イスラエルの報道機関は、今回の攻撃は諜報機関のモサドによるもので、損害はイラン当局が認めた規模よりも大きかったと述べた。
ナタンズのプラントは、昨年7月の火災でも打撃を受けた。イランはこの火災について、同国の核プログラムを破壊しようとする試みだと述べていた。
2010年にナタンズがサイバー攻撃された際には、米国とイスラエルが開発したと広く信じられているコンピューターウイルスのスタクスネットが使用され、実際に攻撃後に発見されている。
イランは、昨年に核科学者のモフセン・ファフリザデ氏が殺害された事件についても、イスラエルの仕業であると非難している。西側の諜報機関は、ファフリザデ氏が、イランが秘密裡に行っている核兵器プログラムの首謀者だったと確信している。
米国のドナルド・トランプ前大統領は3年前、イランと世界の主要国が2015年に結んだ核合意から離脱し、イランに対する経済制裁を再開した。今回のナタンズへの新たな攻撃は、イラン、米国の両政府による核合意の復活に向けた努力が続けられている中で起こったものだ。
米国のロイド・オースティン国防長官は11日、この核合意である包括的共同行動計画(JCPOA)の復活をめぐるイスラエルの不安を鎮める試みとして、イスラエルを訪問。イスラエル高官は長きにわたり、外交努力が失敗したとみなした場合、イランに対して軍事行動を起こすと威嚇してきている。
アナリストはアラブニュースに対し、この訪問が、米国のJCPOAへの復帰を促すためのものであると述べた。「ジョー・バイデン米大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、イラン核合意への最終的な復帰を妨害する目的の下、ペルシア湾岸地域での状況悪化を加速させたいと思っているのではないかと懸念している」と、アンマンのアナリストであるラミス・アンドーニ氏は述べた。
ヨルダンの元空軍将校であるマーモン・アブ・ナウワー氏は、次のように述べた。「イスラエルを最初に訪問するバイデン政権の高官は、軍人だった。これは、オースティン長官がイスラエルとイランの間の危険な状況が加速する可能性に対処することをバイデン政権が期待しているという明確なサインだ」。
米国のニュースサイト、Axiosのバラク・ラビッド氏は、次のように述べた。「オースティン氏は、イランに関しては“何の驚きもない”政策が存在するということを確認しようとしている。彼はイスラエルに対し、核協議について安心させようとするだろう。バイデン政権は、湾岸地域の緊張関係が、核協議を台無しにするような形で悪化しないことを確認するよう望んでいる」
*協力・AP