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中東繁栄の新時代は可能

サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外務大臣と握手する、イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相(右)。2023年6月17日(AFP)
サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外務大臣と握手する、イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相(右)。2023年6月17日(AFP)
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18 Aug 2023 08:08:25 GMT9
18 Aug 2023 08:08:25 GMT9

米国とイランの間の囚人交換に関する先週の進展を受け、これは核外交における新ラウンドの始まりではないかとの疑問が再燃している。

イラン政府が60億ドルの凍結資金にアクセスできるようになり、アメリカに収監中のイラン人数名が解放されるのと引き換えに、5人のアメリカ市民が間もなくイランを出られるはずだ。アメリカ国内では、これは脅迫に屈したもので、人質外交を招くと共和党によって評価されたが、バイデン政権に言わせれば外交的成功だった。現実はおそらくその中間にある。だが、誰もがひそひそと話しているのは、これは実は核取引の一部である、という点だ。

中東情勢の変化は興味深い。8年前、イランの核合意は同地域の主要ニュースだったが、2015年の核合意の結果は、地域の安定に寄与するものとはならなかった。多くの人は、アラブ諸国が合意に反対だったわけではないことを知らないが、彼らは、包括的共同行動計画の実施中に米政府がアラブ諸国を冷遇した理由を理解していなかった。逆に、イラン政府は合意の実行を、この地域で好きなように振舞ってよいというメッセージと理解したかもしれない。今日、人質交換と核合意への回帰の可能性は、ある種「どうでもよい」瞬間である。なぜ、どうして?と多くの人は疑問に思うかもしれない。

理由は単純だ。数か月前、アラブ諸国とイランの和解が、同地域の関心を集めるニュースとなった。そして今週、イランのマシュハドにあるサウジアラビア領事館の屋上にサウジアラビア国旗が高く掲げられたことや、アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・アル・フサイニ財務大臣とレザ・アメリ大使との会談で、イランとの協力関係を強化する取り組みが話し合われたことに注目が集まっている。以前と違うのは、アラブ諸国が待たず、冷遇されず、実際、先手を打っていることだ。自国の利益を追求し、イランとの宥和に率先した。イラン政府がこの新たな局面を受け入れたことも重要だ。

今回、アラブ諸国は冷遇されず、実際、先手を打っている

ハーリド・アブー・ザフル

そういうわけで、驚くようなことは何もない。今回の米国とイランの囚人交換は、アラブ諸国とイランが対立している状況で行われたわけではないのだ。もちろん、当事者すべてにとって、なお脆弱で、発見のひとつという状況なのは間違いないし、この安定が長続きしない可能性もある。とはいえ、これほど真剣な関与は、ムハンマド・ハタミ大統領の時代にも見られなかったことだ。

この関係バランスの中で、中国が今や重要なステークホルダーになっていることも明らかである。中国政府はイランに対して(理論的には)アメリカ以上の影響力を持っているとさえ言えるかもしれない。湾岸協力会議およびイランの両方と強い関係を持つ中国はさらに、核取引が進行する間、この安定をサポートあるいは保証することもできる。

バイデン政権の声明の行間を読めば、米国はイラン政府が出した条件に沿って前進しており、2015年のJCPOAのタイムラインに固執しているのだとわかる。ワシントンのあるシンクタンクは、JCPOAと国連安全保障理事会決議2231のもと、2031年までイランのウラン濃縮純度レベルに上限はなく、濃縮ウラン備蓄量にも上限はなく、フォルドー燃料濃縮工場での濃縮は許可され、新たな濃縮工場も許可され、プルトニウム再処理の禁止は解除され、重水炉は許可され、重水生産や国内備蓄にも上限はないと指摘している。

GCC諸国とアラブ諸国が繰り返してきた要求はただひとつ、「良き隣人関係」である

ハーリド・アブー・ザフル

たとえ予測の半分しか当たらないとしても、あと数年でイランが核を保有することは明白だ。さらに、アラブ諸国がこの事態に備え、工作能力を強化していることもまた明らかである。事実を言えば、今回のプロセスで米国政府は主として、最も近い同盟国であるイスラエルを傷つけている。そういうわけで、期待される米国の傘による保護に加え、新たな核合意の影響を緩和しようとしてイスラエルが中国と取引するとしても私は驚かない。非核化地域のほうが望ましいとはいえ、中国とアメリカ、パキスタンとインドの間に存在するようなパワーバランスが生じる可能性のほうが高いだろう。

アラブ諸国とトルコの関係強化は、イランとイスラエル双方をこの歴史の新たなページに加える助けになり得るので、心強い。その実現に向け、GCC諸国とアラブ諸国が繰り返してきた要求はただひとつ、「良き隣人関係」である。これはすなわち、内政干渉をしないことと、他民族、他宗教へのヘイトスピーチに関する青少年に対する厳格な管理をやめることだ。これらはすべて、アラブ諸国によってすでに達成されている。

これがこの地域のすべての基盤であり、スタートだ。この基盤の上に、強力な経済統合と生活を変える地域インフラを構築し、中東全域の人々にかつてない繁栄を提供できるようになるのだ。私はイランとイスラエルの宥和が不可能だとは思わない。トルコとアラブ諸国は、その実現に向けた役割を果たせると思う。こうしたステップを踏むことで、パレスチナ人の生活を向上させ、この地域のすべての紛争を解決することもできる。米国にはなお、この新たな枠組みで重要な役割を果たす可能性と責任があるが、今回は、同盟国との間で透明性を確保する必要がある。

  • ハーリド・アブー・ザフル氏は、宇宙に焦点を当てた投資シンジケーション・プラットフォームBarbicaneの創設者である。彼はまた、EurabiaMediaのCEOであり、Al-Watan Al-Arabiの編集者でもある。
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