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ロシア経済は楽観視されるも、引き続き警戒が必要

ロシアのミハイル・ミシュスチン首相は、ロシア経済は現状の課題に適応し、非常に安定した成長を示していると語った。(AFP)
ロシアのミハイル・ミシュスチン首相は、ロシア経済は現状の課題に適応し、非常に安定した成長を示していると語った。(AFP)
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24 Aug 2023 11:08:53 GMT9
24 Aug 2023 11:08:53 GMT9

ロシアのミハイル・ミシュスチン首相は今月、ロシア経済は「現状の課題に適応し、非常に安定した成長を示している」と指摘した。今年上半期の同国経済は、すべての主要指標でプラスになったと同首相は強調した。ロシア経済開発貿易省によると、ロシアの国内総生産は2023年上半期に1.5%成長し、第2四半期には4.6%成長した。上半期の国内工業生産は2.5%増加したが、これは主に製造業が成長率6%を超えたことによるものである。

ロシアのプーチン大統領は7月末、今年のロシア経済の成長率は毎月上昇しており、2023年の成長率は昨年の落ち込みを完全にカバーするだろうと述べた。ロシア当局は年末までに2%以上の成長を期待している、とプーチン大統領は述べた。

ロシア中央銀行は先月、春の見通しで0.5~2%だったロシアのGDP成長率見通しを1.5~2.5%に引き上げた。この予測は、ベースラインシナリオにおける経済活動の動態に関する新たなデータを勘案して行われた。予測によると、GDP成長率は2024年には0.5~2.5%、2025年には1~2%となる。

この数字をたたき出すためにロシア経済で何が起きているのか、また、現在進行中の厳しい欧米の制裁に適応するために、ロシア政府はどのような措置を講じているのだろうか。

ミシュスチン首相は、主に経済の供給面を発展させることで、経済成長のペースの維持を目指している。

ディアナ・ガリーヴァ博士

世界銀行が2022年3月に発表した制裁の影響についての初期予測によると、同年末までにロシアのGDPは11%減少し、投資フローは最大17%減少し、インフレ率は22%に達し、輸出と輸入はそれぞれ最大31%と35%減少すると予想されていた。しかし、この数値は下方修正され、世界銀行はその後、2022年のGDPの落ち込みはわずか4.5%、インフレ率は最大13.9%と試算した。一方、国際通貨基金(IMF)は2022年の実質GDPを最大3.4%減と見積もっていたが、IMFはこの値をわずか2.1%減に修正した。その主な理由の一つが、制裁に対抗するためのクレムリンによるエネルギー兵器化政策である。

ロシア経済の見通しは、石油とガスの輸出がどうなるか、また、欧米のサプライチェーンへの依存度を下げつつ、新たな輸出市場や必要不可欠な輸入品の新たな供給国をどの程度見つけられるかに大きく依存している。アレクサンドル・ノヴァク副首相の声明に示されたように、石油・ガス産業からの歳入は2022年の時点で28%増加した。これは、世界市場での価格上昇だけでなく、ロシア国内の石油生産量が2%増加し、制裁が課されているにもかかわらず石油輸出が7%増加したためである。

最近の措置がエネルギー市場とロシア中央銀行との緊密な協調の両方に依存しているのは偶然ではない。ウクライナ戦争による経済的制約に取り組む上で不可欠な役割を果たした同行の経営陣は、予算ルールの有効性を維持する唯一の方法は、石油・ガス部門に対する税率を改正することであると考えている。これは、同行の監督当局が作成した2024年から2026年までの金融政策ガイドライン案に記載されている。

外国投資の誘致に関する目下の課題の一つは、投資の大部分が米ドルに固定されていることである。

ディアナ・ガリーヴァ博士

ロシア中央銀行によれば、中期的な予算政策を立案する際の重要な要素は、「国民福祉基金(NWF)の流動性部分を使い果たすリスクおよび現行の予算ルールの安定性」である。同行は、ルーブル安が緩やかに進んだ場合でも、石油・ガスによる収益が必要な歳入の基準値を下回る可能性を認めている。この点で、予算ルールを維持する唯一の方法は、規制当局が「石油・ガス部門における課税パラメーターの調整」と呼ぶものである。

『フィナンシャル・タイムズ』紙によると、先週、ロシア中央銀行は8月14日の緊急金利決定会合後、急激なルーブル売りを食い止めるため、主要政策金利を3.5%ポイント引き上げたと発表した。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「エコノミストたちは、今週の為替変動は金融危機の始まりではなく、むしろクレムリンの経済見通しの硬直化の表れと見ている」と伝えている。

ミシュスチン首相は、主に経済の供給面を発展させ、国内の商品やサービスに対する内需を確保することで、経済成長のペースの維持を目指している。こうした措置は、雇用の拡大、経済効率、投資活動の促進を意図したものである。

外国投資の誘致に関する目下の課題の一つは、潜在的な投資家が投資の大部分を米ドルに固定していることである。現状では、これは特にエネルギー資源の販売を米ドルで行っている中東のプレイヤーたちに影響する。ロシアが特に2014年以降、脱ドル化政策に取り組み、ドル支配からの解放に意欲的なパートナー国を求めているのは偶然の一致ではない。

経済発展に関するロシアの発表は概ねポジティブで、世界的な規制に直面したロシア経済の回復力を強調しているが、欧米の報道は、少なくとも制裁がロシア経済に一定の歯止めをかけていることを指摘している。欧米の圧力の結果は、前述のネガティブな予想には及ばないものの、全体的な様相は複雑であるため、さらなる観察が必要である。プラス成長が続いている背景には、慎重なジャンボ住宅ローン金利の上昇と、ルーブルの対ドル相場の憂慮すべき低水準がある。

  • ディアナ・ガリーヴァ博士はオックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジの元アカデミック・ビジター(2019-2022)。ツイッター: @ Dr_GaleevaDiana
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