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誰も置き去りにせず、G20をラストワンマイルへと導く

2023年9月3日、ニューデリーにてG20インドサミットのロゴの近くで道路を清掃する市職員。(AFP)
2023年9月3日、ニューデリーにてG20インドサミットのロゴの近くで道路を清掃する市職員。(AFP)
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07 Sep 2023 05:09:41 GMT9
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「ヴァスダイヴァ・クトゥンバカム」。この2つの言葉には、深い哲学が込められている。この言葉は、「世界はひとつの家族」という意味を表している。これは私たちに、国境、言語、イデオロギーを超えて、ひとつの普遍的な家族として前進することを促す、包括的な考え方である。インドがG20の議長国となった今、これは「人間中心の進歩」の呼びかけに変わった。ひとつの地球として、私たちは地球を育むために集まっている。ひとつの家族として、私たちは成長の追求において互いに支え合うのだ。そして私たちは、共有する未来、すなわち「ひとつの未来」に向かって共に歩む。これは、この相互に結びついた時代における、紛れもない真実である。

パンデミック後の世界秩序は、それ以前の世界とは大きく異なっている。そこには、特に重要な3つの変化がある。

第一に、GDP中心の世界観から、人間中心の世界観への転換が必要だという認識が広がっている。

第二に、世界はグローバルサプライチェーンにおける回復力(レジリエンス)と信頼性の重要性を認識しつつある。

第三に、グローバルな制度改革を通じて、多国間主義を強化することが求められている。

私たちのG20議長国は、こうしたシフトの触媒の役割を果たしてきた。

インドネシアから議長国を引き継いだ2022年12月、私はG20によってマインドセットの転換を促す必要があると書いた。これは特に、開発途上国、グローバルサウス、そしてアフリカの、顧みられなかった願望を主流化しようという文脈において、必要とされたものである。

2023年1月に開催された「グローバルサウスの声」サミットには125カ国が参加したが、これは議長国としての私たちの、最も重要なイニシアティブのひとつであった。このサミットは、グローバルサウスからのインプットとアイデアを集めるための重要な運動であった。さらに、議長国として私たちは、アフリカ諸国から過去最大の参加を得ただけでなく、アフリカ連合をG20の常任理事国に加えるよう働きかけた。

世界が相互につながっているということはすなわち、領域横断的な課題がお互いにリンクしているということである。今年は2030アジェンダの中間年であると同時に、SDGsの進捗が軌道から外れていることを多くの人々が懸念している。SDGsの進捗加速に向けたG20の「SDGs アクションプラン 2023」は、SDGsの実施に向けたG20の未来の方向性を示唆するものである。

インドでは、古代から自然との調和の中で生きることが当然の常識とされており、近代においても私たちは気候行動への対策に貢献を続けてきた。

グローバルサウスの多くの国々は様々な発展段階にあり、気候変動対策はそれを補完するものでなければならない。気候変動対策への意欲は、そのための資金や技術移転に関する行動と一致させなければならない。

民主主義の母として、また多様性のモデルとして、私たちはこの経験の扉を世界に開いた。

ナレンドラ・モディ

私たちは、何をすべきでないかという、純粋に制限的な態度から、気候変動と闘うために何ができるかに焦点を当てた、より建設的な態度に移行する必要があると考えている。

グリーン水素イノベーションセンターとともに、クリーンでグリーンな水素のためのグローバルなエコシステムが、議長国としての私たちから生み出されるだろう。

2015年には、私たちは国際ソーラーアライアンスを発足させた。そして今、「グローバル・バイオ燃料アライアンス」を通じて、循環型経済の恩恵と調和したエネルギー転換を可能にするため、世界を支援していく考えだ。

気候変動対策を民主化することは、この運動に勢いを与える最善の方法である。これにより、個人が長期的な健康状態に基づいて日々の決断を下すように、地球の長期的な健康状態への影響に基づいてライフスタイルの決断を下すことができる。ヨガがウェルネスのための世界的な大衆運動となったように、私たちは持続可能な環境のための「LiFE(Lifestyle for the Environment/環境のためのライフスタイル運動)」においても、世界に変化を促している。

気候変動の影響により、食料と栄養の安全保障は極めて重要になる。雑穀(ミレット)、すなわちシュリー・アンナ(Shree Annaは、気候変動に配慮した農業を後押しすると同時に、これを支援することができる。「国際ミレット年」において、私たちは雑穀を世界の食卓に届けた。「食料安全保障と栄養に関するデカンハイレベル原則」もまた、この方向を後押しするものである。

テクノロジーは変革をもたらすが、それは同時に包括的なものでなければならない。過去において、技術進歩の恩恵は社会のすべてのセクションに平等にもたらされたわけではない。インドはここ数年、テクノロジーが不平等を拡大させるのではなく、むしろ不平等を縮小させるためにいかに活用できるかを示してきた。

例えば、銀行口座を持たない人々やデジタルIDを持たない人々が世界中に何十億人も存在するが、デジタル公共インフラ(DPI)を利用することで、彼らは金融サービスを受けられるようになる。DPIを活用して構築したソリューションは、今や世界的に認知されている。そして今私たちは、G20を通じて、発展途上国がDPIを適応、構築、そして拡大し、包括的な成長の力を解き放つのを支援する。

インドが最も急速に成長している経済大国であることは偶然ではない。私たちのシンプルでスケーラブルかつ持続可能なソリューションは、社会的弱者や社会から疎外された人々に力を与え、私たちの開発ストーリーをリードしてきた。宇宙からスポーツ、経済からスタートアップまで、インドの女性たちはさまざまな分野で主導権を握ってきた。彼女たちは、女性の発展から女性主導の発展へと物語をシフトさせてきた。私たちG20議長国は、ジェンダーデジタルデバイドの解消、労働力格差の是正、リーダーシップや意思決定における女性の役割の拡大に取り組んでいる。

インドにとって、G20議長国は単にハイレベルな外交努力以上のものである。民主主義の母として、また多様性のモデルとして、私たちはこの経験の扉を世界に開いた。

今日、物事を大規模に成し遂げることは、インドを象徴する資質である。これはG20議長国を務めることも例外ではない。G20は、人間主導のムーブメントとなっている。インド全土の60都市で200を超える会議が開催され、その任期終了までに125カ国から10万人近い代表団を迎えることになる。これほど広大で多様な地理的広がりを持つ議長国はかつてなかった。

インドの人口統計、民主主義、多様性、発展について他人から聞けることは、実態の一部でしかない。それらを直接体験することは全く違う。このことは、G20の代表団が保証してくれると確信している。

G20議長国として私たちは、溝を埋め、障壁を取り払い、不和よりも団結が勝り、運命の共有が孤立を凌駕するような世界を育む協力の種をまくことに取り組んでいる。G20議長国として私たちは、世界のテーブルをより大きなものにし、すべての声に耳を傾け、すべての国が貢献できるようにすることを誓った。私は、この誓約を、行動と成果によって実現できると確信している。

  • ナレンドラ・モディ氏はインドの首相である。Twitter: @ narendramodi
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