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サウジアラビアはグリーンエネルギーのリーダーとしていかにして台頭したか

サウジアラビアは、グリーンエネルギーへの地球規模の意欲の高まりに関して、フロントライナーになりつつある(AFP/NEOM)
サウジアラビアは、グリーンエネルギーへの地球規模の意欲の高まりに関して、フロントライナーになりつつある(AFP/NEOM)
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15 Sep 2023 11:09:47 GMT9
15 Sep 2023 11:09:47 GMT9

最新の動向を見ると、サウジアラビアがグリーンエネルギーや環境に優しい施策において世界的なリーダーとして台頭してきていることは明らかだ。これは、サウジアラビアの長期的かつ実践的なグリーンビジョンによるものであり、環境的に持続可能で環境に優しい明るい未来を目指して組み入れられたものである。

米国務省が発表したプレスリリースによるとサウジアラビアと米国は先週、サウジアラビア領内を通過する大陸間グリーン輸送回廊の建設に向けて相互に協力するため、了解覚書(MoU)を通じて二国間協定を正式に締結した。サウジアラビアはこの重要なプロジェクトの立ち上げに向けた交渉を促進し、支援する米国政府の役割を歓迎した。

サウジアラビアを経由し、ヨーロッパ大陸とアジア大陸を鉄道で結ぶ環境に優しい輸送網の整備を促進するという点で、この進展は重要である。言い換えれば、グリーン回廊輸送網プロトコルによって関連諸国の参加ははるかに容易になるだろう。この取り組みによって、再生可能電力とクリーン水素の国家間での共有が可能かつより容易になる。この重要な取り組みには、鉄道網の整備に加え、ケーブルの敷設やパイプラインの整備も含まれる。

その他の重要なメリットの一つとして、この協定の締結により経済の多様化が進むことが挙げられる。この二国間協定がクリーンエネルギーの促進に果たす役割に加え、鉄道網の建設や、船から鉄道へのインフラが整備されることで、国家間貿易の増加・強化につながる可能性が高い。光ファイバーケーブルはデータ転送を容易にするため、デジタル経済のさらなる拡大にも貢献するだろう。サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国が石油の採掘を開始して以来、経済の多様化を重要な目標としてきたことも注目に値する。

サウジアラビアでは再生可能エネルギーやグリーンエネルギーに関するプロジェクトや取り組みが増加

マジド・ラフィザデ博士

サウジアラビアがこの問題に関して先行しているのは明らかである。サウジアラビアでは、再生可能エネルギーやグリーンエネルギーに関するプロジェクトや取り組みが増加しており、例えば、再生可能エネルギーの比率を高めることを公約している。また、世界初となる道路のない都市「NEOM」の建設という実に野心的な計画も発表しており、これはより環境に優しい方向へ舵を切るというサウジアラビアの明確な意思表示である。

効果的なグリーンエネルギー・プログラムの一つに、サウジアラビアが2021年に立ち上げた「中東グリーン・イニシアティブ」がある。これは、同国が主導する地域的な取り組みであり、「気候変動が地域に与える影響を軽減し、地球規模の気候目標の達成に向けて協力する」ことを目的としている。 地域的な協力を強化し、排出量の削減と環境保護に求められるインフラを整備することで、(このイニシアティブは)、世界的な気候変動との戦いにおける影響を拡大できると同時に、同地域に広範な経済的機会を創出することができる。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下は昨年11月、「中東グリーン・イニシアティブ」の事務局を設置し、そのプロジェクトとガバナンスの支援に25億ドルを拠出すると発表した。

さらに、サウジアラビア・米国間の協力はエネルギー・プロセスにまつわる変動を抑えることから、米国をはじめ他の国々に大きな利益をもたらすことが考えられる。例えば、エネルギー部門の価格変動が最初に見られたのは新型コロナウイルスの世界的流行によるものだった。そのため、グリーンエネルギーの拡大や、国内におけるグリーン産業の知識ベースの発展は、歓迎すべき付加価値として捉えるのではなく、間違いなく経済的な急務となっている。

サウジアラビアは豊富な石油資源で知られるが、再生可能エネルギー資源にも恵まれている。

マジド・ラフィザデ博士

米国とサウジアラビア間の協定は、様々な分野、特にグリーンエネルギー、再生可能エネルギー、太陽光発電産業において、前向きなパートナーシップが見られることを示している。ジョー・バイデン大統領は環境保護への意欲をたびたび強調してきた。就任当初は大統領令に次々と署名したが、その中で気候変動に関するパリ協定への復帰は最も有名な決定の一つとなっている。グリーンエネルギーと気候変動問題を、特にリベラル志向の若い有権者の票を獲得するための重要な課題だと大統領が考えていることは明らかだ。

さらに、太陽光発電におけるこの2国間の協力は両国にとって極めて重要であり、明らかな共通基盤であるという認識を持つことが重要である。米国は世界第2位の太陽光発電生産国だが、サウジアラビアは中東への玄関口であり、再生可能エネルギー源としての太陽光発電の大量導入の候補地であることは明らかだ。加えて、サウジアラビアのような国はハイテク・イノベーション・ハブの開発に数十億ドルを投資しているか、投資を計画しており、そうした拠点は先進的なクリーン・テクノロジーの開発に関心を持つアメリカ企業にとっても魅力的なものになる可能性がある。

サウジアラビアは豊富な石油資源で知られるが、風力や太陽光といった再生可能エネルギー資源にも恵まれていることは注目に値する。(太陽日射の豊富な)いわゆるサンベルトの中心に位置するサウジアラビアは、太陽光発電の大きな可能性を秘めている。同国の三大都市、ジェッダ、リヤド、ダンマンは1日平均で1平方メートルあたり5.78Kwhの日射量を 誇るが、これは世界平均よりかなり多い。言い換えれば、グリーンエネルギーは米国とサウジアラビアが共に経済的・政治的に発展していくための当然の選択肢なのだ。

一言で言えば、地球規模でグリーンエネルギー、再生可能エネルギー、エコフレンドリーな取り組みへの意欲が高まっていることに関しては、サウジアラビアは間違いなくフロントライナーになりつつある。

  • マジド・ラフィザデ博士はハーバード大学出身のイラン系アメリカ人の政治学者。X: Dr_Rafizadeh
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