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今こそ気候変動への適応に真剣に取り組むべきだ

エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されている第27回国連気候変動枠組条約締約国会議の文字看板の後ろに沈む夕日。(AP)
エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されている第27回国連気候変動枠組条約締約国会議の文字看板の後ろに沈む夕日。(AP)
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10 Nov 2022 04:11:30 GMT9
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長年にわたり、気候変動に関する警告は、「将来の破滅的な結末を防ぐために、今行動せよ」という似たようなものばかりであった。しかし、第27回国連気候変動枠組条約締約国会議がエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されている今、そのメッセージだけでは不十分である。今日の我々自身と地球を守る必要性にも注目しなければならない。

気候変動はもはや遠い未来の脅威ではない。今ここにあり、命や生活に影響を及ぼし、水循環やその他の生態学的な循環を破壊しているのだ。地球は産業革命前の水準より1.1℃温暖化し、気候や気象に関連した災害の件数は1990年代から約35%増加した。最近パキスタンやナイジェリアで発生し、何百人もの死者と何百万人もの避難民を出した壊滅的な洪水を考えてみてほしい。

我々は、温室効果ガス排出の削減と、食料、水、海洋のシステムの再生をし続けることによって、さらなる気温上昇を防ぐ必要がある一方で、今日の気候の現実に適応するためにも、皆で真剣に取り組まなければならない。気候変動への適応は、総体的な気候変動戦略の一環でなければならない。つまり、環境変化や気象現象に対する備えと対応力を高めるために、ビジネスや政策のアプローチを見直して調整し、技術的、財政的、その他のソリューションを展開する必要がある。

もっとも危険にさらされている人々を助けるために、もっと努力しなければならないことは明らかである。国連の気候変動に関する政府間パネルの最新の報告書によると、世界人口のほぼ半数にあたる33億人近くが、気候変動の影響を非常に受けやすい地域で生活している。そのような、もっとも危険にさらされている人々は、多くの場合、気候変動に対する責任がもっとも軽く、気候変動に対する備えがもっとも少ない人々でもある。たとえば、海面上昇による壊滅的な影響に直面している小さな島国の運命を考えてみてほしい。

しかし、適応が必要なのは、もっとも弱い立場にいる人々だけではない。発展途上国や先進国における最近の異常気象が示しているように、我々は皆、気候変動の影響にさらされているのだ。干ばつ、山火事、その他の自然災害は、頻度と強度が増しており、その結果、人命が失われ、インフラが損傷し、サプライチェーンが破壊されている。すべての政府、企業、そして個人が、備えをする必要がある。

適応への取り組みに注力するのが遅れれば遅れるほど、より多くの命が影響を受け、より困難で費用がかかるようになる。国連の試算によると、適応ニーズを満たすために必要な費用は現在700億ドルであり、2050年までに5,000億ドルに達する可能性がある。カーボン・ディスクロージャー・プロジェクトによると、水のリスクだけでも、何もしなければ、今行動したときと比べて5倍の費用がかかる。

では、適応への取り組みを加速させるために、何ができるだろうか。

これまで気候変動への適応は、おもに政府や多国籍機関や援助機関の責任と考えられてきた。一部の国は国連気候変動枠組条約に基づき国別適応計画を策定している。COP26では、開発途上国の適応力と回復力の向上を支援するための資金拠出を倍増することを求めるグラスゴー気候合意が採択され、極めて重要な場となった。

適応への取り組みに注力するのが遅れれば遅れるほど、より多くの命が影響を受け、より困難で費用がかかるようになる。

ネオ・ギム・フアイ

しかし、政府だけでそれを行うことはできない。たとえ昨年設定した目標を達成したとしても、適応への投資はまだ足りないだろう。

世界経済フォーラムがPwCと共同で発表した新しい論文で概説されているように、民間部門も積極的に取り組む必要があり、そのための明確なビジネスケースがある。

バリューチェーンに沿ってリスクを査定し、サプライヤーやコミュニティと協力してショックに耐えるために必要なスキルとリソースを特定することで、企業は業務に対するリスクをより適切に管理し、軽減して、深刻な経済的損失を回避することができる。また、効率性の向上やイノベーションや持続可能な成長の恩恵を受けることで、ステークホルダーの適応ニーズに対応した製品やサービスやビジネスモデルに投資する機会を活用して、利益を得ることもできる。気候変動適応グローバル委員会の2019年の報告書によると、世界全体で適応への取り組みに1兆8,000億ドル投資することで、2030年までに7兆1,000億ドルの総純利益が得られる可能性がある。

企業は、新しいテクノロジーとデータ駆動型の洞察における経験を、活用することができる。たとえば、エネルギー企業であるセンプラは、センサー技術や気象データを応用して、山火事が制御不能になる前に消火活動を行うことで、エネルギーインフラを破壊から守り、公共の安全の確保に貢献している。

また、各国が金融機関やその他のパートナーと協力して、脆弱な地域をより良く保護するための資金調達手段を模索することもできる。たとえば、クレディ・スイスはザ・ネイチャー・コンサーバンシーや米国の国際開発金融公社とともに、その金融・資本市場の専門知識を提供し、ベリーズのブルーボンド融資を実現させた。これは、海洋管理、サンゴ礁やマングローブの再生、沿岸の回復力の強化、持続可能な経済開発の強化への投資を目的としている。

さらに企業は、自然ベースのソリューションを通じて、インフラやコミュニティの気候耐性の強化を探求することができる。たとえば、専門サービス企業であるアラップは地方自治体と協力して、2017年に壊滅的な地滑りを起こしたシエラレオネのフリータウンを、自然ベースの洪水リスク管理戦略を適用して再建を支援するなど、グリーンビルディングの設計や災害に強いインフラの導入を行っている。

最終的に、企業は政府、開発機関、学界、その他の業界関係者と協力して政策を打ち出し、行動を変えることによって、適応に関するより広範な検討課題を具体化し、リーダーシップを発揮することができる。

COP27は、それを実現するための絶好の機会である。適応は常に地球規模の気候問題の検討課題となってきたが、今ようやく、緩和策やその他の問題と並んで優先されるようになった。

  • ネオ・ギム・フアイ氏は世界経済フォーラムのマネージングディレクターである。
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