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EUとインド太平洋:より安定した、豊かな世界のためのパートナー

2022年4月、ニューデリーにて、EU・インド貿易技術協議会の設立を発表するEUのウルズラ・フォンデアライエン委員長とインドのナレンドラ・モディ首相。(EC)
2022年4月、ニューデリーにて、EU・インド貿易技術協議会の設立を発表するEUのウルズラ・フォンデアライエン委員長とインドのナレンドラ・モディ首相。(EC)
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01 Feb 2024 12:02:23 GMT9
01 Feb 2024 12:02:23 GMT9

2024年が幕を開けた。欧州の人々は当然ながら、現在進行中のロシアによるウクライナ侵略戦争、および中東で再び勃発した紛争に深い懸念を抱いているが、もっと広い視野で世界情勢を捉えることも忘れていない。世界経済の重心は、世界の国内総生産(GDP)の50%近くと人口の60%を占めるインド太平洋地域に移っている。この地域の平和と安定は、欧州、そして世界にとって極めて重要である。

近年、EUこの地域との協力関係の改善に着実に取り組んできた。具体的には、2020年に東南アジア諸国連合(ASEAN)の戦略的パートナーとなり、2021年にはインド太平洋戦略を立ち上げ、2022年にはEU・ASEAN首脳会議を成功させ、2023年には太平洋諸国とのサモア協定を採択した。2024年にはこの道のりを加速させるだろう。

EUとインド太平洋地域の経済的つながりは、40年前には想像もできなかった素晴らしいレベルに達している。この地域の海路は世界の動脈となっており、毎日2000隻の船舶がインド洋と南シナ海を超えて、欧州との間で物資を輸送している。しかし、安全保障環境は悪化している。南シナ海から台湾海峡、朝鮮半島、紅海にかけて大きな緊張が蔓延しており、主要なグローバル、および地域プレイヤー間の信頼が減少し、国際法や多国間協定への尊重が低下し、武力や威圧が台頭している。私たちは、「力こそ正義」という世界に逆戻りする危険性に直面している。

EUはこの流れに対抗するつもりだ。多国間解決策と地域的アプローチは私たちのDNAであり、国連海洋法条約や核不拡散体制を含む国際法を常に擁護する。ルールに基づく世界秩序を守るため、私たちはインド太平洋地域における多国間主義にコミットしているパートナーとの協力をさらに緊密にしたいと考えている。

EUは、中国、日本、インド、オーストラリア、韓国、その他の国々と安全保障・防衛に関する定期的な対話を続けている。しかし、私たちの協力は、対話のみにとどまらず、具体的かつ作戦的な活動へと拡大しつつある。

ASEANとの戦略的パートナーシップの下で、安全保障協力もますます重要な要素となってきている。私たちはASEAN加盟国とともに地域の海軍演習に参加している。また、アジアのパートナー国の海軍は、アフリカの角付近におけるアタランタ作戦で私たちと協力している。これらは、私たちがともに行うことができることについての、良い例である。

さらに進んで、私たちはEU加盟国 の高度な能力を活用して「スマートセキュリティー・イネーブラー」となり、海洋安全保障、サイバーセキュリティー、テロ対策、外国の情報操作や干渉に関する地域のパートナーの能力構築を支援することを提案する。

この世界を安定させるために、私たちは互いに支え合う必要がある。私たちが直面している課題を解決するには、紛争を回避し、国際法の尊重を確保するために、緊密に協力する以外に道はない。航行の自由を守るため、EU加盟国はすでにEUとインド太平洋間の配備を拡大している。この地域は、信頼できるパートナーとして、私たちを頼りにしているのだ。

経済面では、ロシアによるウクライナへの侵攻は、EUがロシアのガスに過度に依存していることの代償の大きさをさらけ出した。したがって私たちは、こうした過度な依存を減らすことによって、EUの経済的安全保障を向上させることに注力している。しかし、これは国境を閉鎖することを意味するものではない。私たちは逆に、EU経済のリスクを軽減し、サプライチェーンを多様化するために、インド太平洋地域の多くの国々との経済関係を発展させるべきなのだ。

この観点から、EUは最近、ニュージーランドと自由貿易協定を締結し、インド、インドネシア、タイとも交渉を進めている。また、デジタル技術の分野における安定的かつ多様なサプライチェーンを確保するため、日本、韓国、シンガポール、インドとも関与しており、グリーンおよびデジタルへの移行に必要な重要原材料の持続可能な抽出と加工について協力するよう、インド太平洋地域のパートナーに提案している。

EUは、グリーンで持続可能な未来に向けて、インド太平洋諸国とより積極的に協力したいと考えている。

ジョセップ・ボレル

EUはまた、グリーンで持続可能な未来に向けて、インド太平洋諸国とより積極的に協力したいと考えている。太平洋諸島との「グリーン・ブルー・アライアンス」は、太平洋諸島の気候変動に対する回復力の強化に貢献している。また、G7のパートナーとともに、私たちは南アフリカ、インドネシア、ベトナムとも「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」に合意しており、欧州投資銀行(EIB)はすでに5億ユーロ(約5億4,200万ドル)を投じて、ベトナムのグリーン転換を加速させ、人々と地球の双方に恩恵をもたらしている。

つまり、私たちは、EUとインド太平洋地域とのかかわりが極めて重要であることを十分に認識している。私たちは、2月1日に欧州議会で「太平洋デー」を開催し、太平洋の島々のパートナーとの急成長する協力関係を強調することで、それを実証する。その翌日には、第3回「インド太平洋閣僚会合」が開催され、同地域とEUの外相が一堂に会する。その後、私たちは2年に1度のEU-ASEAN外相会議を行う予定である。

地政学的な激動と大国間の対立が渦巻く世界において、これら3つのハイレベル会合は、EUとインド太平洋諸国が、その安全保障、繁栄、回復力を強化するために、より緊密に協力することへ、共通の強い関心を抱いていることを示している。

  • ジョゼップ・ボレル氏は、欧州連合(EU)の外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長である。
    X: @JosepBorrellF
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