
フランク・ケイン
アラビア湾の2大経済機構であるサウジアラビアとUAEの金融当局は、コロナウイルスの流行による経済的打撃を回避するために、称賛に値する迅速な措置を講じた。
過去数日に渡り、サウジアラビア通貨当局とUAE中央銀行は、地域および世界の感染レベルの拡大から必然的に生じる経済的損害に対処するために、合計400億ドル相当の刺激策を発表した。
どちらの声明にも明確にされてはいないが、両当局は最近の原油価格の下落による経済的落ち込みにも目を向けなければならない。これらは両国の経済の変動性を増やすことになり、中央銀行の最優先事項である個人、企業、および国債に財政的影響を及ぼす。
サウジアラビアでは、中小企業(SME)を対象とした500億サウジアラビア・リヤルの刺激策が、銀行支払いや、その他の債権金融の一時的な繰延を許可することを目的としていた。SME部門は、石油依存から脱却し経済を多様化しようとするビジョン2030戦略の主な焦点の1つである。
SMEは王国において重要性を増してきているが、まだ比較的初期段階にあり、そのような保護が必要である。
アナリストは、SMEが、経済における非石油地域を強化するために不可欠であると考えている。
サウジアラビアとアラブ首長国連邦の銀行、金融システムは引き続き強固であり、現在は止められそうにない景気後退に耐えるのに十分な回復力を備えているはずだ。
フランク・ケイン
UAEはさらに一歩進んで、銀行に無利子融資を提供する500億UAEディルハムの刺激策と、自己資本比率にさらに500億UAEディルハム相当の余裕があり、これにより銀行は、今後数か月の間に財政難に直面する可能性のある小売業やおよび法人顧客に対し寛大な対応ができる。
コロナウイルスによってもたらされる脅威に対する世界的な反応の一部として、湾岸地域の活動には目を向ける価値がある。
米国の連邦準備制度理事会、欧州中央銀行、中国人民銀行はすべて、同様の措置を講じて、システムの流動化を図り、最近数週間で事業と財務の状況が混乱した企業の借入れ条件を緩和した。
これらのアクションは、日々増える脅威に対処するのに十分であろうか?欧米市場は先週の終わりに肯定的な反応を示したようで、主な株価指標は、疑いもなく悲惨な一週間の下落の後、刺激策が発表された時に上昇に転じた。週末明けに欧州と米国の市場が再開されたとき、我々はより判断しやすい状況にいるであろう。
湾岸地域では、おそらく石油収入の減少と政府支出への影響という付加的な問題により、日曜の反応は決定的ではなかった。タダウル、アブダビ証券市場指数、ドバイ金融市場はすべて下落した。
ドバイのベンチマークは3%を下回り最も大きな打撃を受けた。これはおそらく、フライトがキャンセルされ、訪問者数が制限され、観光名所が閉鎖され、地域における主要観光地および旅行の中心地としての首長国の地位を反映している。
アラブ首長国連邦は以前、国の旅行および小売部門に対処するために、手数料および課徴金の削減、関税および公共料金の削減などのさらに大きな措置を発表していた。
しかし、世界経済の縮小を避けられないように見える経済的低迷と、金融市場に反映される金融の影響には相違点がある。サウジアラビアとアラブ首長国連邦の銀行、金融システムは引き続き強固であり、現在は止められそうにない景気後退に耐えるのに十分な回復力を備えているはずだ。
地域および世界の金融市場は、今後数週間で張り詰める時期がいくつかあり、このような難局を克服するためにさらなる刺激策が必要になることは間違いなさそうだ。
政策立案者は順応性があり、地域経済で発生する避けられない試練と戦うために資源を蓄えておく必要がある。今回の景気刺激策は、金融当局がリスクを認識しており、リスクを回避するための手段と手腕を意のままに使えることを示している。