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我々の知る世界は変わってしまい、これから長い間続くかもしれない

コロナウイルスでオーストリアが5人以上の集会を禁止した中、同国のウィーンのホーフブルク王宮の通路に立つ警察官。(AFP)
コロナウイルスでオーストリアが5人以上の集会を禁止した中、同国のウィーンのホーフブルク王宮の通路に立つ警察官。(AFP)
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17 Mar 2020 09:03:17 GMT9
17 Mar 2020 09:03:17 GMT9

今は非常時だ。コロナウイルスはかつて、中国やあるいは韓国などのはるか遠くの出来事だった。

中国は世界のサプライチェーンの非常に重要な部分なので、世界経済に大きな影響が出た。世界中の工場は、重要なスペアパーツなしでなんとかしなければならなくなった。中には、操業時間を削減せざるを得なくなったり、閉鎖を余儀なくされたりしたところもある。前者は、韓国のヒュンダイの工場がそうだ。

商品の配送が少なくなったことで、原油の消費量は落ち込むことになり、これは、断続的に下落している原油価格に反映されている。

このウイルスは東アジアのその他の国々にも拡散し、イランにもろに直撃した。それでも、ヨーロッパやアメリカからは非常に遠く、湾岸協力会議(GCC)の国々からさえも遠い。

サウジアラビアは1週間前に一部の隣国に対しその国境を封鎖し、今週後半には全ての国際線のフライトを停止させた。王国は、ハッジとウムラの巡礼で既にパンデミック対応手続きが取られていたため、恐らく最も準備が整っている国の1つだろう。

ウイルスは急速にヨーロッパに拡大し、イタリアはあっという間にCOVID-19の病気の新たなホットスポットになった。スペイン、フランス、ドイツ、オーストリア、スイスも悪影響が出た。一部の地域や国全土までが封鎖状態に陥っているところもある。

先週月曜日、ウイルスの影響は株式市場を直撃し始めた。暴落は、3月31日まで既に行われている210万バレルの減産に加えて、勧告されている日量150万バレル(bpd)の石油減産を行う合意をOPECがロシアと妥結できなかったことでも、拍車がかかった。

市場シェアをめぐる戦争は始まり、サウジアラビアは日量1230万バレルの供給を目指し、複数の国々に対して大幅な割引を発表している。

ダウ平均株価は、月曜日の取引開始時間から木曜日の最安値の間に15%値を下げ、アメリカのドナルド・トランプ大統領がヨーロッパ発着のフライトを禁止したことが事態を悪化させた。原油価格は自由落下状態になった。ブレントは一時的に30%下落し、市場最も激しい急落となった。トランプが緊急救済策を発表した後の木曜日の取引は驚きの展開となった。同指数は同日8.7%上昇し、2万3,186ドルで取引を終え、市場の盛り上がりは長くは続かなかった。

封鎖や国境閉鎖に陥る国々が増えるにつれ、一般市民や、また投資家も、これが普通の景気下降ではないことを理解し始めた。2008年の金融危機や9.11などとさえも比較はできない。比較するなら、戦時中の緊急事態だろう。

1つ確実なのは、当分の間、何も今までと同じようにはならないということだ。

コーネリア・メイヤー

先週末まで、多くの経済学者はV字回復を考えており、問題は最終的にどこまで落ち込むかということだった。

我々は今、サプライチェーンの崩壊による供給面のショックと、消費や旅行、外出ができないことによる需要面のショックの両方に直面している。新しいコンセンサスは、ホッケーのスティックのような右肩下がりではないにしても、谷の期間が長いU字型のカーブを描くことになるというものだ。

イングランド銀行とアメリカの連邦準備制度がこれまでの週に政策金利を0.5%引き下げたことには効果がなかった。都市や国、国境の封鎖を前にしては、何も役に立たないようだ。

多くの政府は中小企業の救済パッケージを発表してきた。航空会社は特に大きな被害を被っている。イギリスの格安航空会社Flybeは倒産した。わずかな利鞘で運航しているその他の格安航空会社もこれに続くかもしれない。ブリティッシュエアウェイズのアレックス・クルスCEOは、政府が多くの航空会社の救済に乗り出さない限り、業界はかつてない規模で倒産すると警告した。

この週末、中央銀行は対策を矢継ぎ早に発表した:アメリカの連邦準備制度は政策金利を1%引き下げ、0%とし、7000億ドル規模の景気刺激パッケージを発表した。ヨーロッパ中央銀行(ECB)、カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、スイス国立銀行などのその他5つの中央銀行とも取引を成立させ、金融市場が通常通り機能し続けるよう、通貨スワップに対する金利を引き下げた。

日本銀行は基準貸付利率を現状のまま維持する一方、ETF(上場投資信託)の買い入れを2倍に増やす予定だ。オーストラリア、ニュージーランド、韓国の中央銀行も金利を引き下げ、金融システムに資金を供給した。

木曜日、ECBは1200億ユーロの債券購入を発表した。ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁も加盟国に対し、必要な財政出動を行うよう促した。10年経たないうちに、我々はまた別のユーロ圏危機に直面することになった。

月曜午前中にFTSE100種総合株価指数が6.4%、ストックス欧州600指数が8.1%下落し、どのような対策も上手くいっていないようだ。このトレンドはアジアでも続いて大荒れの1日となり、日経平均株価と韓国総合株価指数がそれぞれ5.6%、5%下落した。

では、どのような教訓を引き出すことができるだろうか:我々は、世界中で未曾有の医療危機に瀕している。世界は前世紀初期のスペイン風邪以降、このような事態を経験していない。ほとんどの国が事態の収束をじっと待つだろう。これにより、さらなる需要と供給のショックにつながるかもしれない。

アメリカの連邦準備制度やイングランド銀行を除けば、各国の中央銀行は2008年の金融危機の余波で、金利の引き上げやバランスシートの圧縮を行うのがあまりにも遅かった。ECBやその他の中央銀行でさえも買い入れを続けている。今、中央銀行には、この危機に対処できる政策ツールがない。

より保守的な金融制度を抱える国々の方が、現在の状況と闘える資金があるので、ましかもしれない。

医療体制に投資し続けている国々は、緊縮やリバタリアン的アプローチが医療体制を破壊してきた国よりも恩恵を得られるだろう。例として思い浮かぶのは、イギリスやアメリカだ。

各国が事態の収束をじっと待ち、国境を封鎖する中、これはまた、EUやユーロ圏にとってまた新たな厳しい洗礼になるだろう。

石油価格は湾岸協力会議のほとんどの加盟国にとって問題になるだろう。アラムコは、生産確保のために、年間120億ドルから140億ドルを投資している。設備投資を25%削減しても、供給能力を危険に晒すことにはならないが、悲しいかな、同社が今後の生産への投資をこれほど削るのは、前例のないことだ。

王国の若者に雇用を提供する上で不可欠なサウジビジョン2030は棚上げにはならないだろうが、減速することになり、それは残念なことだ。1つだけ例を挙げよう:国際線フライトがなくなれば、外国人観光客は全く来なくなる。芽が生え始めたばかりの観光業界にとっては、本当に痛手だ。

もう1つある。効率性と株主価値を高めるために、企業は予備のパーツの在庫を最小限に留めるよう促されてきた。ジャストインタイム物流が最も重要だったのだ。我々はそこに立ち戻るべきかもしれない。そして、特に医薬品などの必需品に関しては、物事を変えなければならないのかもしれない。

1つ確実なのは、当分の間、何も今までと同じようにはならないということだ。

  • コーネリア・メイヤーは、経営コンサルタント、マクロ経済学者、エネルギーの専門家。ツイッター:@MeyerResources
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